第26話文化祭 開幕

「さあ、皆準備はできてるかー!」

最近生徒会長になった上村 結菜うえむら ゆうなだ。黒く鋭い眼つきをしているがそれとは裏腹に弾けている。

見かけはクールだが性格はかなりふわふわとしている。らしい……

クラスが違うからよく知らないが。


「オー!!」

そんな生徒会長の掛け声に合わせて会場に一体感が生まれていく。


「3年は今日は受験勉強なんて忘れてしまえ!」


「ウェーイ!」


「2年はなにか知らないが楽しめ!!」


「オーウ!」

「なんじゃそりゃ!」

2年からは少しバラついた台詞が出てきた。


「1年は初めての文化祭、はっちゃけろー」


「ウース」

1年だけ掛け声怖い。

何というか太く低い声だ。


「それじゃあ!文化祭開幕だー!!」


「わー!!」

集まった人間の様子が場の盛り上がり方を顕著に示す。

高揚感が先生にも伝播していく様子が目には見えないがはっきりとわかる。


「タピオカいかがですかー?」


「たこ焼き美味しいよ!」

様々な声が文化祭が始まった校内に響き渡る。

人も様々な所に流れた。


「次はお前の番だ……」

地獄の底から聞こえるような低いうめき声で人を呼び込むのが俺のクラスだ。


「なぁ!あそこ行こうよ!」


「エー!私、怖いの苦手なんだけど」

そんな絵に描いたような二人が俺達の最初の客だった。

「お二人様御案内」

そんな声と共に扉が開く。

真っ暗な部屋に足音と不気味なBGMが流れ出す。



「ギャーー」


「怖がりすぎだよ!」

男の断末魔のような声が聞こえた。

続いて対象的な明るい笑い声が聞こえてくる。


「いて!!」

聞こえてきたのはクラスメイトの誰かの声だった。

脅かした衝撃で蹴られでもしたのだろうか?

俺も気を付けないと。


そんなこんなで最初のお客さんが愉しそうに教室を後にした。

それからひっきりなしにお客さんが続いた。

中には驚いた弾みで机に身体をぶつける人もいたが今のところ問題なく進んでいる。


「……」

ふと物陰で何かが動いた気がした。

冷房の風でカーテンが揺れたようだ。

冷房は雰囲気を出すために入れているらしい。

中は極寒で上着が無ければ辛いほどなのだ。

暑いのは嫌いだがいささかやりすぎな気もする。


「おまたせ!交代だよ〜」

菫が脅かす役の交代を知らせに来てくれた。

2時間毎で交代していくのだ。


「もう2時間経ったのか〜」


「そうだよ!それにしても寒いね〜」


「本当に!」


「色々、お店あるから楽しんできて!」


「うん。ありがとう〜」

さてと取り敢えず見回りしないと。

動いて来るなら文化祭期間中だろうし。


「と思ったけれど、不気味な程に何も無いな」

校内を見回り騒ぐ生徒達・建物に異変は無かった。


「グルグル……」

出店から流れてくる匂いに食欲が沸いた。








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