Day.17 錯覚

錯覚【幻の虹と、失ったのは】

 水たまりに青空と虹が映っていた。

 錯覚だ、と分かっていても条件反射のように空を見上げてしまう。灰色の曇天を見て、もう一度水たまりを確認する。青空も虹もなく、アスファルトの底が見えるだけの、ただの水たまりだった。

 あぁ、またか。最近こんな事ばかりだ。窓ガラスの反射やマグカップに入れたコーヒーの表面に、錯覚なのだろうがなぜか虹を見てしまう。

 子供の頃のような虹への憧れなんて今はないのに。そう考えてしまう自分は、大人になったんだなと思う。そこに一抹の寂しさを感じるのは、錯覚、ではないんだろう。

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