第6話 一滴程度のラブコメ要素

「兄ちゃんさー、鰯どうするの~?」


 海菜と朝ごはんを食べていると、いきなりそんなことを言いだした。父さんと母さんは二人ともまだ寝ている。


「どうするって?」

「まだ配信するの~?」

「するつもりだけど、なにかまずかったりするか?」

「1-4までやるのはいいんだけど~、時間かかりすぎ~」


 確かに、このペースでやっていくと、予想以上に時間がかかってしまう。

 途中の区切りのいいところでやめてもいいのだけど、折角許しが出ているので、やれるところまでは、やってみたい。


「どんどん難しくなるし、ここでやめてもいいんじゃない?」

「さすがに土曜のは長かったもんなぁ」

「兄ちゃん、1時間半とか2時間で区切りつけれないでしょ~?」

「まぁ、せっかく慣れてきたのに、とは思うかもしれないな」

「だから、やるにしても今日というか~……休み以外はやるのやめた方がいいんじゃない?」


 学校から帰ってきてからとなると、深夜までかかる可能性がある。

 そこから寝るまでの時間を考えると、睡眠時間は、かなり減ってしまう。


「寝ないと頭働かなくなるからなぁ」

「もうちょっと、区切りつけられるやつ作ればよかったかな~」

「いや、配信されることなんて考えずに、これからも面白いのを作ってほしい。作ってほしいって言うのも変な気もするけど……まあ、リリース前にちょうど4面まで終わる計算だし、土曜だけにするよ」

「そう? じゃあ、これからも頑張ってね」


 海菜の頭を撫でつつ食器を流しに置き、学校に行く準備をする。


「あっ、兄ちゃん、今日午後から雨降るかもって~」

「うん、ありがとう」


 玄関で傘を渡される。


「じゃあ、行ってくるな」

「うん、いってらっしゃい」


 手を振る海菜に見送られ、学校へ向かった。



¥¥¥



 校門から校舎に入る直前、雨がポツポツと降り始めた。

 予定より早まったらしい。

 小走りで校舎に向かう。

 靴を下駄箱にしまい、スリッパを履いていると、まるで夕立かのように雨の勢いが急に増し、雨粒も大きくなっていた。


 朝のホームルームまでの時間、窓の外を見ていると、さらに雨が強くなっている。

 傘をさしている人に紛れて、全力ダッシュをしている人もいる。

 それを見ていると予鈴が鳴った。

 そして、窓から視線を外した時に尿意を覚える。

 あと5分あるから、行ってしまおう。

 混んでないだろうし。


 教室に向かう人とすれ違いながら、トイレに向かう。


「あ」

「うわっ」


 誰かがぶつかってきて、その衝撃で壁に手をつく。


「ご、ごめんなさい! 滑っちゃいました!」

「大丈夫です」

「……え」


 見ると床が少し濡れていた。

 しかたないと思い、そのままトイレに向かった。





「……今の声、うみくん!?」


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