Day.13 樹洞

 目が覚めた。暗闇の中にいた。なんとなく空気は湿っていて、ひんやりとしている。手を伸ばしてみると壁に触れたが、その壁は平らではなくざらざらとしていて、なんとなく傾いているようにも思えた。四方を手で探るとすぐに掌に壁が触れた、歩き回ることは出来ない程度の広さだ。目は一向に闇には慣れず、じわじわと恐ろしさがこみあげてきた。

 私は誰だ。……私は誰だ?

 急に恐ろしさが頂点に達した。この場所で目覚める前、自分が一体なにをしていたのかまったく思い出せない。服のポケットや周囲を探ってみるが所持品らしきものはない。そろそろと立ち上がってみると頭をぶつけることはなかったので、狭いが高さはそれなりにある空間のようだった。

 慎重に壁に耳をつけてみる。ごうごうと水が流れるような音がしている。何故だかその音を聞くと安心した。再び座り込んで壁にもたれかかり目を閉じる。わからないことだらけの今、何をしても裏目に出そうな気がした。

 ひんやりとした空気は心地良く、恐怖心は徐々に薄らいでくるようだった。


 こうしてその森の木は己のうろを埋め、枯れずに立ち続けるのだ。

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