甲斐田の恋

午後七時何人かの日本人に連れられ

外国人のお客さまが御来店

料理長が流暢な英語でお客様を

ご案内しメニューの説明をしている。


暫くして料理長は渋い顔をして

出て来た。


「誰か、英語出来るヤツいないか?

俺、厨房を離れられないから。」

大学生に料理長が聞いているが


「普通の会話なら何とかですけど

料理の説明は・・・

ちょっと・・・

ヤバいっす!」


皆尻込みをしていた。



要らぬ口出しは、したく無かったが

料理長が困って居るようだったから

未華子はついに

「あの、少しならできます。

外国人と仕事をした事も

ありますので・・」


ソコにいた全員が


((´(´・(´・_(´・_・(´・_・`(´・_・`)えっ、マジ

としばしポカーン

皆、普通の 主婦パートだと思って

いたから信じられないと、

顔を見合わせていた。


「Is it okay to ask?」

(じゃあ、頼んでも大丈夫?)


「Yes i understand.」

(はい、わかりました。)

未華子はニッコリとして厨房を

出て座敷へと向かう。

英語のトーンが高くアメリカ人?

と思いながら


「May i help you?」

とドアを開けたら紺のスーツ

涼しい目、胡座をかいた元夫

蒼生が15、6人の、外国人に混ざり

込話込んでいた。


「関田さん、困ったら呼んでよ。」

料理長が心配そうにコショコショと

耳元で囁いた。


「はい。わかりました。」

未華子はニッコリと頷く。

蒼生は素知らぬ顔で未華子を見よう

ともしなかった。


蒼生の顔色一つ変えない所を

みると未華子の働いている職場を

態々、見に来たのだろう。


来る料理、来る料理を次々に

説明した。

そのうち未華子の美しさに男性達は

彼女を口説き始めた。


日本美人

可愛い



暫くその様子を楽しんでいた

蒼生も、流石に止めに入った。

然し本気出して来る奴も居て

てんやわんや!


騒ぎを聞き付けた料理長が

未華子を確保した。


未華子に回り込み、抱き寄せる

甲斐田を見て蒼生はワナワナと

怒りを剥き出しにして睨み

付けた。


甲斐田は、未華子になんかあったら

と思うと厨房にいても

落ち着かない。

パート休みの山内さんを呼び出し

調理は山内さんが主になり

進んだ!

その日は満員御礼で仕事終わりが

日付けを跨いでしまった。


疲れた足取りで、店を出る。

未華子は足の痛みを気にしながら

帰っていく。


「あー、はぁー、疲れたー

コンビニ寄ろう

甘い物は必須‼おしるこ、買おう。

体に染みるものがイイな!」

そんな甘い事を考えていると見慣れた

車、セリ〇が駐車場に止まっていた。


未華子は元夫が居ると思っては

いたが、関係無い人なので

無視して、コンビニを目指す。


パッパッパッパッパッパッシングが五回



「待てよ!未華子

夫の顔も忘れたのか?」


パッシングを無視して歩いて居ると車で先が塞がれた。

車のドアが閉まりバタンッ蒼生が出て来た。


「ふうー」

鼻で深く息を吐き出した未華子は、

「何か、御用ですか?

も・と・元夫、しかも

たったの二週間の、元夫の~

御喜蒼生さん💢」


「そんな言い方好きじやないよ。

やめてくれ‼

ゴメン、未華子をキズつけて‼」


「ああ、オバサンって言った事?

俺逃したらあとが無いって言った事?

貰い手が無いって言ったこと?

五月蝿い女呼ばわりした事?

夏帆に乗り換えた事?」


「うっ‼」


「彼女と結婚しなかったの?」


「何度も、申し入れはあったよ

でもハッキリ断った!」


「ふう~~~ん。

勿体な‼」


「分かるだろ!

夏帆に気持ちなんか無かったよ、

俺は未華子を忘れられない‼」


「≧m≦ぷっ!ウケる笑

あんなに私をオバサン扱いしてたのに?

二人で私の話で盛り上がって

バカにしてたじゃん。

今更・・・じゃない‼」


「ゴメン‼」


「それに結婚した事あんなに

後悔していたじゃない。(笑)」


「ゴメン、後悔してなんかいなか

った。

未華子と離れる気なんて

無かったんだよ。

もう一度やり直そう

いい夫になるよ、未華子から

離れない約束する。」


「むりじゃないかなぁ~

誕生日来て33になったんだァ~

オバサンに拍車かかって

ヤバかもだな‼」


「もしかして彼氏出来たの?

アイツか?」


「ん?アイツって誰よ?」


「違うなら良いんだ。

誕生日お祝いしなきゃいけないな‼」


するとジワジワと黒のクラウ〇が

止まり、黒シャツとズボンの料理長が現れた。


「関田さん、どうかした?

知り合いなのか?」

その声にムッとした蒼生が振り返った。



未華子は

「いえ、大丈夫です。」

と蒼生に向けない笑顔をみせ

答えた。


蒼生はさらに💢ムカつき

「貴方は未華子のなんですか?」

車から出てきた料理長に蒼生が

冷たい目をしてイラつきながら

睨みつけた。


「私はあの店のオーナー件

料理長をしています。

甲斐田と言います

貴方は?」


「確かにいい店でしたよ。」



甲斐田も口は笑っていても目を

光らせながら

「ありがとうございます。

仕事の暇を見つけて、経営にも

口だしてます。

殆ど本社に任せてはいますがね。


店を任せる人材は沢山いますから

チェーン店回りもやってますよ。

貴方こそ関田さんの何?」

料理長と蒼生は随分近づきながら

ヒバナを散らし質問し合っていた。


「あ、あの、料理長彼は

離婚して、別れた元夫なんです。」


月夜にイケメン二人の

笑顔のひきつりながらの睨み合いが

続く、静けさだけが

シ━━━━━━━━━━ンと言う

音を響かせる。

未華子はいたたまれなく


「あの、私お腹すいているし

帰ります。料理長お疲れ様でした。」


そう言うと未華子は足音を響かせ

ながらソソクサとその場を去った。

そう今日は忙しすぎて賄いどころでは無かった。


「あ━━━━━━もうっ‼

男は懲り懲りよ━━━━━‼

好き好き言ってもサー

結婚した途端若いオンナ連れてるし

後悔だの~

考え直すだの~


アレコレアレコレ言い出すしなw

再婚?やめとけ辞めとけ!

ナイナイ‼」

未華子はオッサン口調で自分に

いいかける。


コンビニに寄り

飲めないビールとツマミ、おしるこ

を買う。

やっぱりビールより甘い物の

方が未華子には合ってるみたいだ。


「ううぅ━━━━━生き返るw」



次の日の朝、24時間営業の大手

スーパーに買い物に出た。

今日は未華子は久しぶりのシフト

休み、起きてTVをみていたら

ピザの特集をやっていた。


あー、もうすぐGWか‼

ピザが無性に食べたくなり

強力粉を買いに行く。


まあ日用品も無くなりかけて

トイレットペーパーに、パンパンの

エコバックを抱えかなりの距離を

歩く、強力粉だけの予定が

大荷物‼


すると見慣れた黒いピカピカの車

とすれ違った。

車は横付けされ、料理長がスーツ姿で降りてきた。


料理長にも未華子の姿が見えていた

ようで声をかけてきた。

「関田さん、偉い大荷物だね笑」


料理長は紺のスーツでオールバック

店では調理衣を来て、白い前掛け

をビシッと決めて白い板前帽子

を被っていて、老けて見えるが・・

今日の料理長は若々しいイケメン!


「幾つなんだろう。」

ふと未華子に疑問がよぎる。

魚華のお兄さんは35って言っていた

からもしかしたら、未華子と

同級生かも知れないそう思った。


「こんにちは、

今日は何事ですか?」

助手席に座る40位の男性も居て

彼もスーツ姿だ。


「なにかあるんですか?」

と、つい興味がてらに聞いてしまう。


「ああ、甲斐田グループの

会議だから、スーツ着てるんだよ。」


「素敵です。

行ってらっしゃい!」


「送るよマンション迄」


「い━━━いですよ‼

会議遅れたらマズイですよ。」


「ああ、関田さんの履歴書見たよ。

なんで辞めたの?」


「東南アジアに移動命令が

出たんですよ、日本に居たくて

辞めました。」


「そう‼ 元旦那が関係してると

思ったけど違ったね」


「ア、ハハハハ…そうですよ

男関係で仕事は辞めません٥」


料理長が手をあげると黒いセダ〇

が止まった。


「専務どうしました。」

50歳位の女性が窓を開け聞いた


「山田さんは会議でないよね?」


「はい、社長に呼ばれてるだけです。」


「何時から。」

「10時まで行けば大丈夫ですよ。」


「店の子なんだ、マンション迄

送ってくれないか!

親父には言っとくから」


「はい、時間は充分大丈夫ですよ。

え・・っと?」

未華子の顔を見ながら


「ああ、彼女は関田さんだよ。」


「あ💦ああ、だ、大丈夫です

そこですし、すぐそばですから

ご心配なく…」

山田さんはメガネをかけて痩せがらで、髪をお団子に纏めた、優しそう人だった。


「すぐそこなら行きましょ

ちゃんと送らないと専務が

心配しますから

どうぞ‼」


「は・・はい、」

申し訳なさそうに車に乗り込むと

甲斐田も安心したように

その場から立ち去った。


「専務とは?どういう関係

ですか?」

ストレートに山田さんは聞いてくる!


「あ、私はただの従業員です。

`色々凄技ばかり見せられて

尊敬しています。」


「だけ?ですか?」


「え?だけですが

あの~」


「いえいえ、失礼しました。

甲斐田は、お見合いの話が出て

いましてね!ちょっと気になり

まして大変失礼しました。」


「あ、あーあそうですか‼

なるほどですね(笑)

私離婚したばかりで、半年は

経ちましたけど、人と付き合おう

とか考えてませんよ!


ご心配は仕方ありませんね。

こんな、訳分からない女が

いたら、心配しますよね。

分かります。」


「あ、いえ....けしてそんな

意味では・・」


「でも料理長もお見合いなんですね!ご結婚されてるとばかり

思っていました。ꉂꉂアハハ

貫禄ありますし」


「そ、そうでしたか‼」

彼女は呆気に取られた様子で

未華子をみた。


料理長を狙ったように見えていたのか?


「あ‼ここです!

ありがとうございましたー‼」


ペコっと頭を下げると山田さんは

ニコニコしながら車を出した。


「あー優しいなー‼」

そう思うとホッコリとした気持ちに

なった。




「おい、又浮気か?(笑)」

ゲッ!!

見覚えある声に振り向くと

イライラした蒼生が立っていた。


「未華子の嬉しそうな顔

久しぶりに見たワ‼」

と蒼生は、ピリピリした笑顔を

見せた。


「後がありませんからね━━━━

ってか見た?女の人ダシッ‼

し・か・も‼荷物運んでもらった

だけ‼」


「ふ~ん、」

疑いの怪しい目を向けてくる。



「何よ

仮に男の人でもさ、いいじゃん。

私フリ━だし、別によくない?

浮気呼ばわりはチョット

違いますね━━━アホか?」


「ふ━━━ん。」


「ってか蒼生、アメリカに帰ら

なかったの?」


「ああ、誰かさんのせいで

アメリカに帰れる状況じゃなくてね‼」


「えっなんで?」


「未華子こそ

君のキャリアがあれば外資系企業

だって就職先は手にあまたじゃないか


全然違うルート選んで

1からやる事はないだろ!

しかもあんな腹黒がいるトコ

行く事無いだろ‼」


「はァ?

腹黒?まさか料理長の事?」


「料理長は立派な人よ

尊敬できる人よ‼٩‼」


「何よ!

蒼生だって今更出てきて

何がしたい理由サ‼」


「・・・」


「あれ?アヒャヒャヤキモチ妬くとか?」

未華子は、蒼生を馬鹿にして

顔を近ずけて

( ᯣωᯣ )じ━━━っと見る‼

そして言う‼


「蒼生、いい事教えてア・ゲ・ル‼

私は独占欲が半端無いんだ

蒼生良く知ってるじゃん。

何処で、何してるか鮮明に教えて

くれないと


ストーカーにな・る・の‼

蒼生懲りてるじゃん!


こわ━━━━いでしょう。

ヤバイよ━━━━~💀👿

・・・・・アヒャアヒャヒヤ」


「・・・」


「分かったらもう近付かないで!

せ━━━━━━っかく蒼生の事

忘れてたのに💢」


「・・・」



「いいよ、俺かまわない。

未華子がストーカーなら大歓迎‼」


ブッ

「またまたまたまたぁ~

蒼生怖がってたじゃん。

ビビってた癖して、ばかじゃんか‼

だから蒼生を、元2週間夫を解放して、あげたんでしょ。

私ってば、優しい」


「・・・・・」



「でしょっ‼」ニッコリ












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