03

私は一人納得し、口を開いた。


「あの実は…。」


「それにね真希ちゃん、姫ちゃんはお茶汲みから経験してる女子社員の鑑なのよ。」


祥子さんがビールジョッキ片手に私の肩をバンバンと叩く。


「ええっ?今時お茶汲みですか?」


「あ、うん。入社当時は、だよ。」


「さすがに今はそんなのないよね。今そんなことさせたら、セクハラパワハラだって問題になるわよー。」


「ですよねー。私絶対やりたくないもん。あ、早田さんにならお茶入れてあげたいかな。」


真希ちゃんは否定しつつも調子の良いことを言う。


「真希ちゃん現金な子!とはいっても、女は損よねー。頑張ったって出世の道もないんだからさぁ。」


祥子さんはビールを煽りながら嘆いた。

私は空いた大皿を店員さんに返しながら、新しく運ばれてきた天ぷらの大皿と交換する。


「祥子さん、今はだいぶ緩和されましたよ。女性役職者もいますし。」


「そう?だったら姫ちゃんだってそろそろ階級が上がったってよくない?」


「階級って何ですか?」


真希ちゃんの質問に祥子さんは少し声を落とし、早田さんの方をこっそり指差す。


「真希ちゃん、課長になるためにはいくつ階級があると思う?」


「課長の前がグループ長で、その前が主任でしたっけ?だから三つ?」


祥子さんはカバンからペンを取り出すと、割り箸の箸包みに階級を書き出す。

平社員から主任に上がるには一級から三級までの三段階あり、主任からグループ長に上がるにも試験がある。その上の課長になるためには、試験と上司からの推薦が必要だ。

うちの会社は大手で歴史も古く、今なお昔ながらの階級制度が残っている。


「さっすが、祥子さん詳しいですね。」


「私は元社員だもの。結婚出産で退職して派遣で出戻りしただけだから、会社の事情は割りと知ってるわ。昔は産休育休なんて取れなかったのよねぇ。」


「へえー。」


真希ちゃんと私はしきりに感心した。

確かに祥子さんの言うとおり、出世に関してはまだまだ男尊女卑の傾向は強い。今はだいぶ制度が整ってきたので、ようやく女性役職者が増えてきた。産休育休の取得率も上がっているみたいだ。

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