片思いは連鎖する――双子姉妹と幼馴染

御剣ひかる

DAY1 門

 夕暮れの住宅街を、三人の子供達がはしゃぎながら下校する。

 やがて彼らはそれぞれの家の前に到着した。


 倉橋家の双子姉妹、愛衣あい真衣まい、彼女達の向かいの飯坂家の武瑠たける


 愛衣が元気よく門を開け、真衣がゆっくりと閉める。一方のお向かいさんは丁寧に扱われない門扉が今日も大きな音を立てている。


 新興住宅地にほぼ同じ時期に引っ越してきた二つの家の子供達は、仲良く育っていった。




 そして、今。彼らは中学二年生だ。


「また明日ねー」


 愛衣が元気よく門を開け、真衣がそっと閉めるのは同じ。


「おぅ」


 短く答えて武瑠は門を開けっぱなしで家へと入って行く。


 小学生のころのやんちゃは鳴りを潜めたが、双子姉妹は彼の本性を知っているので武瑠の後ろ姿を笑いながら見送って家へ入った。


「タケちゃん、おぅ、だって。かっこつけちゃって」

「中二病だよね」

「クールな俺カッケー、ってね」

「愛衣ちゃん、気を付けないと本人にもタケちゃんって言っちゃってまた怒られちゃうよ」

「怒らせとけばいいよー。タケちゃんはタケちゃんだし、今更呼び方替えてもねぇ」


 言いながら双子は自分達の部屋に引き上げて私服に着替え、おやつを食べながらお向かいさんの幼馴染の話で盛り上がるのだった。

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