第7話 「なるほど。一連の戦犯はやつか」






「そういえばそのコスプレ道具どうしたんだ? 菜々のじゃないよな?」


すいちゃんに借りたやつだよ。オタク男子を落とすならコスプレでもしたら〜? って提案されて」


「なるほど。一連の戦犯はやつか」



 頭に思い浮かんだ犯人の姿に、奏人は苦虫を潰したような表情になる。


 日向ひなたすい


 菜々の親友にして、おれと同じ『日本文化研究会』に所属するメンバーの一人。


 オタクの巣窟のようなあの研究会に一般人などいるはずがなく、彼女は趣味でコスプレイヤーをしている筋金入りのオタクだ。


 ちなみにおれはラノベ、アニオタ。


 瑠璃さんはゲームオタだ。


 まあ一般教養としてのベースは各々十分に蓄積されており、最近では互いに布教しまくるせいでその境界も薄れてきているが、それはさておき。



「あれ? でも日向さん監修ならあんな大惨事になるはずが…」


「えっとね〜。急用だって呼び出してあのこと《欲情のこと》相談したら適当な道具一式と、オタクに受ける言動のサイトだけ渡されて追い返されちゃった。なんかイベントに向けての準備があるんだって」


「ああ、そういやもうすぐニコ○コ超会議があったな…………頼むから最後まで面倒見といてやってくれよ、まじで……」



 こいつみたいな一般人に、それも天然に思うがままコスプレなんてやらせたらどんな化学反応が起きるのか目に見えていただろうに。



「すごいよね〜、衣装なんてほとんど手作りみたいだし」


「好きだから続けられるんだろうな」


「この水着のキャラなんか、あたしと同じ名前みたいだし。気になって一番最初に選んじゃったんだよね〜。奏人知ってる?」


「知ってる知ってる」



 あれだろ? ラッキースケベ満載で、巧みで際どい描写が有名なあの作品のメインヒロインの妹で双子の姉の方だろ?


 原作にゼッケンが付いていたかどうかまでは覚えていないが、多分日向さんのオリジナルだろうな。



「あたしも何か夢中になれること見つからないかなあ?」 



 陸上は?


 そう開きかけた口を閉じて代わりに別の答えを用意する。



「そのうち何か見つかるよ」


「なんか適当〜」


「いやほんと。お前は行動力あるから、何かやりたいこと見つけたら一直線に突き進むって」



 昔からそうだ。


 菜々のやつは一度自分がやると決めたことは、目標が達成されるまでストイックに挑み続ける。


 陸上しかり、勉強しかり、オタクのことでさえ、友達の日向さんが真剣に取り組んでいるものを詳しくなろうと彼女なりに知ろうとしているようだ。


 オタクの分野に関してはまだまだ浅いと言わざるを得ないけど。



「奏人……」


「何?」


「なんかそのセリフ、クサい」


「ほっとけ! てかいつまでその格好でいるんだよ。風邪引く前に、早く脱ぎ散らかした制服拾って着替えて来い!」






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