第9話 鼻を借りる

「鼻を貸すってどういう意味っスか?」


「そのままの意味じゃ」


門から少し離れた噴水のある広場に着く


ちなみに小さな事務作業はヴェルデとシャルムが請け負ってくれた


「ここか?」


「はい、ここにユンが倒れていました」


フェンリルがやっと察する


「……あー、ここの匂いを嗅げって?」


「そうそう、2人で犯人を探しておくれ」


にっこりと笑っているが目が笑ってない


きっと仲間が何者かに襲われたから怒っているのだ



すんすんと軽く匂いを嗅ぐ


「……でだ、オンブルはどうする?」


「…私は空を飛べない…あなたの脚力なら追えるのではないですか?」


「決まりだな…クロエ様からのお褒めの言葉は俺のもんだ!」


そう言ってフェンリルは風のように消えた


おや、


「オンブルは行かなくて良かったのか?」


「…はい、我が主の傍を片時も離れる訳にはいきません…それに、私には向いていないので」


オンブルは影に戻っていく


向いていない……か、


どうやら敵は素早い者らしい


オンブルは素早く動くのが苦手だ


「オンブル……敵の姿は?」


「…姿は…鳥、のように感じました」


「鳥か…」


空からの侵入…人間には厳しいが魔族に対しての結界が甘かったか…


「あと、こちら一見普通の鳥の羽根に見えますが…僅かに鳥ではない甘い匂いがしました」


甘い匂い……


「人間がつけているような…香水…?ですかね」


人間に手引きされている?


いや、まて香水をつけているなら……


バタバタとフェンリルが戻ってくる


「ぬぁーーー!!いないッス!!」


「やはりか」


「やはり……とは?」


敵は自分たちの匂いを消すため香水を付けていた…


「もっかい探してくるッス!!」


「…ああ、深追いだけはしないように!」


多分だがその香水で位置がバレないように匂いを色々な場所につけ、撹乱かくらんしているのだろう


「うんハッキリ言って協力者がいる!それにそれは多分魔族だ!」


「なぜそんな事が分かるんですか?」


「……鳥の魔族は生まれ持った姿を変えられないと聞いたことがある…その魔族が人間の使っている香水をどこで手に入れるのか…」


それに、人間が魔族に手を貸すとは……有り得なくはないだろうが、考えにくい…


「協力者はヒトに近い姿をした魔族…」



最悪は人間



「だろうと思うのだがー」


「……そうなると…身内こちら側になりますが…」


……さて、門の外には知能のほぼない魔族、内側には人の姿に近い知能の高い魔族……


明らかに格差があるが…まあ1回置いておいて…


城内に入れるのはひと握りなのだが…


1つ謎がある、こんな事を思い付く魔族がいるのか…?と


何のために…


「ああ、そうだケイト…!」


「ゔえ゛…」


その名前を呼んだだけでオンブルが唸る

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