第7話助けてくれたあの人は~清水綾視点~

 あれは、恋をしたのかな……?


 だって……思い出すだけで、こんなに胸がドキドキする……。


 こんなの初めてで、どうしたらいいんだろ……?





 その日、私はいつもと違う場所で買い物をしていた。


 地元だと人が寄って来ちゃうし、他の人にも迷惑かけてしまうから。


 なんで悪いこともしてない私が、気を遣わなくてはいけないの?と思うことはある。


 でも、それで上手く収まるなら、私が我慢しようと思う。


 みんなは、私をしっかりした子、優しい子、明るい子だと言ってくれる。


 でも、それは違う。


 ただ、怖いだけ。


 みんなの輪から外れたり、イメージと違うとか言われたりするのが……。


 そしてその結果、虐められたり、ハブられたりするのが……。


 そんな日々を過ごしてる、私のストレス発散方法は、知らない街でお洒落な格好をし、買い物したり歩くことです。


 目立ちたくないなら、地味な格好すればよくない?と思うかもしれない。


 でも、それだけは嫌だった。


 だって、お洒落は好きなんだもん!


 それにストレス発散のために、我慢していたら本末転倒だと思うし。


 なので、今日は知り合いの少ない街を散策しています。


 でも、ダメでした……。


 ナンパはされるし、スカウトはされるし、皆にジロジロ見られるし……。


 結局、私が我慢するしかないのかな……。


 そして日が暮れてきても、状況は変わらなかった。


 嫌気がさした私は、誰もいない路地裏に入った。


 でも、それが不味かった。


 どうやら、後をつけられていたみたい。


 タチの悪そうな不良2人に、絡まれてしまいました。


 その2人は、私を何処かへ連れ去ろうとしました。


 私だってもう16歳だから、何をされるのかは理解していました。


 だから、必死で抵抗しました。


 でも、怖くてあまり声が出ないし、力が違いすぎて……。


 もう、駄目かと思ったその時、彼は現れました。


 それなりに整った顔立ちに、オールバックのワイルドな髪型。


 身長もそこそこ高く、スタイルも良さそう。


 何より、その目に惹かれてしまいました。


 何者にも屈しないという、意思の強い目に……。


 彼は最初殴られていましたが、それはわざとだったみたい。


 一撃で、不良の1人を倒した後、もう1人も撃退してしまいました。


 そしてぶっきらぼうな言い方で、私に色々と言ってくれました。


 正直、男の人にそんな口をきかれたことなかったから、少し戸惑いました。


 でも、優しい空気感が伝わってきたので、ああ良い人なんだなと思った。


 しっかりと、人がいる通りまで送ってくれました。


 そして、名前を告げずに去っていきました……。


 お礼したかったんだけどな……それに……カッコよかった……。


 今時、あんな人いるんだ……。


 女の子を助けても、下心を見せずに去っていくような人が……。


 まるで、漫画の世界の主人公みたい……。


 私は、彼に恋をしたのかもしれない。





 家に帰ってからも、彼のことばかり考えてしまう……。


 ベッドで思い出して、悶えたり、ニヤニヤしたり。


 恋ってこんな感じなの?すごいなぁ……。


 でも……名前も知らない。


 もちろん、連絡先も……。


 決めた!明日同じ街に行ってみよう!


 会えるかはわからないけど、行動しなきゃ始まらない!


 私はそう決めて、眠りについた……。





 次の日、同じ駅で降りて、街を散策した。


 相変わらず、男の人達に声をかけられるけど我慢した。


 そして……なんと、あっさりと見つけてしまいました。


 まだ午前中なのに……これは運命かな?


 でも、彼はベンチで気持ち良さそうに、うつらうつらしていました。


 その姿に、何故か私はキュン!としてしまいました。


 理由はわからないけれど……可愛いと思ってしまいました。


 起こすの悪いかなと思ったけれど、意を決して話しかけてみました。


 でも、彼は脱兎の如く逃げてしまいました……。


 まさか逃げられるとは思ってもみなかったので、私は呆然としてしまいました。


 待って!と声を出し、追いかけようとした時には、もう遠くにいました。


 速い!とてもじゃないけど追いつけない!と思った。


 でも、ここを逃したらもう会えない!と思い、追いかけようとしたのですが……。


 彼の後ろポケットから、何かが落ちました。


 そしてそれを拾うと、とても驚きました。


 なんと、私と同じ学生証だったのです。


 更には、同じクラスの気になっていた男子と同一人物だったのです。


 そういえば、似ていたような気がしないでもない……。


 私は嬉しかった。


 元々気になっていた人と、好きになったかもしれない人が同一人物だなんて……。


 これって、運命的じゃないかな!?


 でも、全然違う感じだった……どっちが本当の彼?


 私は、ますます彼のことが気になってしまった。


 そして、決めた。


 彼には申し訳ないけど、明日学校で話しかけてみようと。


 外だと、また逃げられちゃうかもだし……。


 多分、何か理由があって静かに過ごしているとは思うんだけど……。


 ごめんなさい、吉野君。


 貴方の日常を壊してしまうかもしれません。


 それでも、私は貴方とお話しがしたいです。


 恋する乙女は、誰にも止められないんだから!












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