第43回 豆君は、我の心を乱すから嫌い。

卑弥呼が、かわいい社員らしき人にあいさつをされて、俺の後ろに隠れた。


 


「浜水ちゃんこそ、かわいいよ。」


顔を赤くしながら、ぼそぼそと卑弥呼は答えた。


 


社員ではなく、浜水さんか。


卑弥呼との会話を聞いて、正常かの精査が必要だな。


 


卑弥呼は恥ずかしいためか。なかなか話しかけようとしない。


こんな時に限って話さないって、どんだけポンコツなんだよ!!!


 


俺が話して、情報を引き出すしかないか。


あの息を荒げた挨拶を見る感じ、ガチのひみ民であることはたしかである。


ガチひみ民と言ったら、逆杞憂民と想像してしまう。


逆杞憂民は、卑弥呼をかわいい子供と勘違いしている集団であり、世話を焼くことが大好きだが、おそらく、卑弥呼より若いため通常の逆杞憂民タイプではないと思われる。


女性のガチ恋勢の可能性がありそうなため、エドであることは隠しておくか。


 


「あなたが、有名な浜水さんなんですね。


大型新人がいるから、この事務所は安泰ですね。」


愛想笑いを浮かべながら、浜水がどう来るか様子を見た。


 


「ふ~ん。なるほどですね。


私の胸を凝視しているから、卑弥呼様とは特別な関係ではないんですね。」


浜水は軽蔑した顔で、俺のことを睨みつけている。


軽蔑した顔から浜水はガチ百合のひみ民であることを確信した。俺がエドであることがばれたら、間違い無く危険なことが起こる。


 


って!!!!!!!!!!!!!!!!!


卑弥呼が後ろで、もじもじして隠れているのって、カップルみたいだよな。


俺の肩を強く握ってきて、卑弥呼が目をウルウルさせてきた。


 


「胸見ていたって本当なの?我のことを特別って言ったじゃん」


俺の両肩を必死に握って、揺らし始めている。


 


おそらく、恋愛感情なんて卑弥呼の中にはない。


特別であることを否定されていることに、いらだっているのであろう。


俺は、卑弥呼様の今まで反抗されてこなかった怒りに対して反抗し、理と同様に変わった価値観を持つ特別な存在にされている。


 


理同様に、俺の中でともに特別な存在で卑弥呼はありつづけたいに違いない。


 


「いやいや、胸に付いている名札を確認しただけです。


卑弥呼様が後ろに隠れている姿は、僕にしか見せない特別ですよ。


卑弥呼様は、僕にとって特別に決まっているじゃないですか。」


 


俺は、必死に弁明し、卑弥呼が特別であることをアピールした。


 


「豆君は、我の心を乱すから嫌い。」


卑弥呼は顔を赤く染めてから、その場を慌てて去ってしまった。


 


卑弥呼が去った後、明らかな殺意が俺に向けられている。


 


「なるほど、あんたが豆か。なるほどね、


あんなにいちゃつきやがって、腹立たしい。


私が、この害虫を駆除する。」


 


殺意の出ている方向から言葉が聞こえてくる。


 


 


俺が、今までの発言が第3者から聞くと告白ととられることに気付いた。


全くの勘違いでこんなやばそうなモンスターは目を開いてしまったようだ、


 


胃がまたキリキリし始めた。

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