第7話 出会い

「でけー……」

「おっきいねぇ……」


 人工島側から島に上陸し、そのまま歩いて鈴海本島側にある学校に向かった私たち。

 見えてきたのは何本もの桜の木からできた自然のアーチだった。


「綺麗だね」

「ああ」


 学校に入る前から桜の木は見えていたのに近づくと視界の全てが桜色に染まり驚いてしまった。

 私たち以外にも思わず足を止めてしまった生徒が何人もいた。


「冬也ーー!!!!」


 誰かが冬也を呼ぶ。

 そのまま、


「どーん!!!」


 と、冬也に体当たり。


「のわっ……」


 情けない声を出して振り返りかけた冬也が倒れた。


「冬也!?」


 思わず声をかける。


「だ、大丈夫……」


 私の声に反応して声をあげる冬也。

 怪我はないみたい。


「よいしょっと」


 冬也にぶつかった張本人が立ち上がる。

 そこにいたのは長い黒髪をポニーテールにしている背の低いだった。


「冬也! 久しぶり! 会いたかったよ〜」


 遅れて立ち上がった冬也にギュッと抱きつく

 むっ……。距離が近い……。


「おお恵音けいねか、久しぶり」


 やっぱり冬也の知り合いだったのかよしよしと頭を撫でる。

 冬也にあんな可愛い知り合いがいたなんて……。

 なんだか悔しい……。


「恵! 先に行かないでー!!」


 また後ろから声が聞こえる。


「あ、あかり! ごめんね〜」

「もう! 離れちゃダメでしょー。しかも他の人に迷惑かけて。2人ともごめんなさい、恵が迷惑かけちゃったみたいで……」


 律儀にお礼をする少女。

 あかりって呼ばれてたっけ。


「いえいえ全然大丈夫ですよ」


 冬也と恵音? って人知り合いみたいだし。


「あ、自己紹介がまだでしたね。私、幽気ゆうきあかりです。その子は虹野恵音」

「よろしくねー」


 あかりちゃんと恵音ちゃんか。

 ん? 虹野?


「冬也、虹野って……」


 冬也の苗字も虹野。

 もしかして……、


「うん! 僕と冬也はだよ!」


 私の疑問に答えてくれたのは冬也ではなく恵音ちゃんだった。


「ふーん。冬也、なんで私に黙ってたの?」

「いや別に、聞かれなかったし」

「そう」


 なんとなく冬也に問い詰める。なぜか冬也について知らないことがあるとモヤモヤしてしまう。

 なんでかな?


「ところで恵音ちゃ、さん。ひとまず冬也から離れてもらってもいいかな。が男の子に抱きついたままなのはその、誤解を産むからさ」


 この子は気にしていないけどさっきから周りの人たちがちらちらとこっちを見ている。


「恵音でいいよ。あと誤解は産まれないと思うよ」

「???」

「だって僕。男だもん」


 え?


「えぇぇーーーー!!!!」


 恵音はしてやったりと笑って、あかりはあちゃぁと顔に手を当てて。

 冬也は何故かあかりの方を見て目を丸くしていた。

 私の叫び声が周りに響く。


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