第3話 物買いわしき

 家でふんふん勉強に勤しんでいると、必要なものがひょっこり頭の隅から顔を出しました。

 甘いもの。

 ノンシュガーのエスプレッソコーヒー飴がまだまだ残って…いませんでした。ポッケにも、トレジャーボックス(お菓子箱)にもありません!

 他のも留守をしているようで、どこにも見当たらないのです。

 ああっ…食べたい

 幸いにもまだお店は閉まってません。

 遠くで犬の遠吠えが、冷え込みがひしひしふらりとしています。

 食べきれんばかりの甘いもの…

 いわゆるお金持ちはいないんですけど、まだまだ欲しいを抑えきれない人は勘弁してあげようと、持ってる人は持ってます。だけどですね、あまり良くは思われてないみたいです。別に花は均一とかおしなべて同じようになる必要はないと秘めています。バランスどりが難しいですね、きょうどうというのはどこまでか?はしりすぎると力に訴えちゃいます。いつまでも試みていってみて、失敗してもかまわない!人間は失敗の連続だもの!

 人間…

 花は人間なのでしょうか。

 遠く、うっすら。

 量子のわざと、クラフトマシンのボディー。

 夢でしょうか。

 果ての淵で、いつまでも悩み続けるでしょう。

 ぶんぶんぶん。

 フローラルなアロマを引きずって、身支度して、いざ、外出。


 お店はたくさんは置いていません。この地、近場からのものがほとんどです。かと言って少なくもない。いつもほほうっと感心するんですが、どうやっているのか品数が絶妙です、ここの店主はデキますね。

 でもでもでも肝心のコーヒー飴がありません!

 ええええええええええええええええええええええ

 地団駄を踏みたい気分です、

 ふっくら美人店主のウミさん曰く、「そういやあそこにあったよ」

 あそこって、あの店ですか??

 そうだね、あそこ、“月瀧屋“さんだねえ

 前途多難、進退極まったとはこのことです、行くべきか行かざるべきか。

「欲しくないのかい、はなちゃん?カラダがどうしても求めてるんだろ、あの味を?」

 イジワルな、慮っての発言はなんとも蠱惑的で。

 ええぃ、はなむけとして一口チョコを2、3個買って店を出てから、一大決心をします。

 潜っていくんです!

 自転車は持ち寄っていませんでした、この店で済むと思っていたので!

 ついでにショートカットしてしまいましょう。

 やや投げやりに入ったものだから、レイヤーを間違えました。

 スマートグラスも悲鳴を上げます。

 違和感、不快感、不安感、もろ手を挙げて大行進。

 吐き気まで、悪寒とかダメージまではいきません、それでも悪い変化を促します。

 んーーーーー!

 変化は花に触れ、結びついて花開く。

 ぱちぱちぱちばちっ

 火花でした。

 七色変化、輝き、ひかり、照らされ、照らします。

 天照。

 信心深くはないんですけど、この時ばかりは目を見張りました。

 山陰の霧深い、でも歩きにくくない鳥居の立ち並ぶくねり道、ひかりが誘うように、神々しく照らしています。

 太陽の光だ。

 直感的に捉えます。

 背筋が張ります、緊張しいしいで失礼のないよう、しっかり大地に足を踏み込みます。

 踏みしめるたびに、断片が立ち現れます。

 僅かにかすみみる神話です。連なり始め、ひとつの語りとかたなしています。

 国産みから、いえ、ぐるぐるかきまわる渦?とにかくスマートグラスにも滝のようにつらつらと文章が流れ落ちていきます。うたがうたいあげられる。これは、神話と物語と歴史さえもが交差して励起しているのです。

 禹歩からスキップ、跳ねるような、リズミカルに、地面が波打ってます、これはセッションなのです、花の好きな音楽の一座のきょうえんです。それは叶えられなかった夢なのかもしれません。そこでは望みと願いが高みをけみす。

 ?かげから善女龍王がそっと見つめている気が。

 大丈夫、染まってもよってもはいないはずですよ。

 もちかえったものはなにか。それは問いです。次なるへと進むための。惜しむように閉じてゆく。そうして外へ出てみれば、そこはみち晴れた店先が見える道行でした。

 こーーーん、

 すぐ隣の石の稲荷から打ったような返し音、声。

 だまされたのでしょうか?

 そうかもしれません。

 なんだかウキウキしながら明るすぎて近寄り難くて有名なその店を、わたしは朗らか和やかに目指すんです。

 懐の一口チョコがひとつなくなっていたのを知ったのは帰ってからずっと後のことでした。




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