第27話 個人戦イベント一日目

イベント一日目


個人戦イベントはまずバトルロイヤルから始まる。

各プレイヤーが一戦ずつそれぞれ闘い、参加者数から割り出された上位何名かが次に進める形式。


今回は参加者数も増え、生き残った八名が翌日の準決勝に進むルールになっていた。

バトルロイヤル戦数は六戦でそれぞれ五十人ずつが闘う。



「参ったな、包囲されたらキツイぞ」

オニオンはルールを読み、戦略を考えていた。

以前よりも明らかに参加者数が増えている。


「………これでいけるかな」

範囲攻撃と強力な単体攻撃、範囲魔法と防御のスキルを付けイベントを闘う事にした。




「…まぁ、こんなもんでしょうね」

フージンはイベントの準備を早々に終えていた。


通常攻撃である程度の相手を撃破出来る上に前回のチーム戦イベントで手に入れた回復スキルも持っている。


「操作ミスしない限りは負ける要素がないわね」

綾は不敵に笑っていた。




「大盾、うん、これで闘ってみよう」

グラスは新しい闘い方を試してみることにした。


守りからのカウンター、防御力アップのパッシブスキル、攻撃に転ずるシールドバッシュを軸に闘うつもりだ。

「よし、行こう!」



三人はそれぞれ違うバトルロイヤルに振り分けられた。

アリーナランキングを元にマッチングされたのだろう。




イベント開始


オニオンはすぐに狙われた。

「…俺って本当に嫌われてるのかな」


そう言いながら範囲攻撃から各個撃破を繰り返し向かって来る敵を倒し続けていた。



「おら!おらおらおらおら!!」

フージンはなりふり構わず攻撃が届く敵を倒し続けた。



「………まだ、まだ。…今!!!」

グラスはタイミングを見計らいカウンター攻撃で向かってくる敵を倒していた。



一日目終了



「ふーーっ、まぁこんなもんかな」

「おし!!撃破数一位!!!」

「残った…。この闘い方合ってるかも!!」

三人とも翌日の準決勝に残ることが出来た。


ギルドに集まる三人

ボイスチャットが始まる。



「速水さん、野間さん、よろしくお願いします」

グラスがお辞儀をする。


「あっ、グラスさん。ここではプレイヤーネームで呼び合う事にしてます、フージンさんがこだわり強いので」

「あっ、そうだったんですね。すみません」

「いえいえ」


「おい、私を悪者にしたな?」

「してないよ!」

「覚えてろよ?…さっちゃん、よろしくね」

「え?さっちゃん?」

「グッちゃん」

「無理があるよ」

「うるせぇ、黙れ」

「………」


「すみません」

「え?」

「私がケンカの火種になったみたいで…」

「ううん!良いのよ?私が虐げてるだけだから」

「虐げられてます」

「の…、オニオンさん。情けないですよ?」

「…え?もしかして二人から?」


「そういえばあんた、両手に華ね。腹立つ」


「私はオニオンさんを異性として見たことありませんよ?」


「………フージンさん」

「…うん、何となくわかる」

「グラスさんの方がキツい………」


「え?あ、すみません」

「謝らないでください……」

オニオンは下を向いた。


気を取り直してイベントの話を始める。


「全員残った?」

「当たり前でしょ」

「大盾、合ってます。私に!」


「グラスさん、敬語じゃなくても良いですよ?」

「そう言ってるお前も敬語だろうが」

「敬語だろうが。こんな感じですか?」


「はい、良いですよ」

「敬語!!」

「敬語!!」

「…胃が痛くなってきた」


「結婚、良いなぁ…」

「グラスちゃん?急にどうしたの?」

「私の彼氏、全然そんな素振り無くて…」

「私みたいに強引に進めないとダメよ」


貴俊はハッとした。


「………そういう事か、誘導されてた気もする」

「文句あんのか?」

「無いよ。結婚したいし」

「う、うん」

フージンは出鼻を挫かれた。



「あれ?今、二人は一緒にいるの?」

「いないいない。あっ、そうだ聞いてよ!あいつ、一人の時間が欲しいとか言い出してさぁ」

「えぇ?結婚するのに?」

「そう!!」


「…僕はいない方がいい?」

「いろよ!そして聞いてろ」


「オニオンさん、一人でいて何するの?」

「えーっと、別のゲームもね?」

「何の?」

「その時の話題のゲーム」

「っていうかどれだけゲームにお金使ってるの?」

「……秘密」


「フージンさん、管理した方がいいよ」

「大丈夫、結婚後は小遣い二万だから」

「もう決まってた」

グラスはケラケラ笑った。


「あれは失敗したなぁ」

「もう修正は出来ないからね」


「なんだかんだラブラブなんだねぇ」

「…ま、まぁ」

「そうね…」



三人はその後も色々と話し、時間が午後十一時を過ぎた頃。


「あっ、すみません。そろそろ寝ますね」

「うん、おやすみー」

「おやすみ」

「おやすみなさい」


グラスはログアウトした。


「あんたはどうするの?」

「僕もそろそろ寝ようかな」

「それがいいよ!おやすみ」

「…何か引っ掛かるな。どこか行くの?」

「別に?」

「そう………」

「彼女を疑うの?」

「疑うというか何というか」

「浮気なんかしないわよ」


「うん、そっちじゃない」

「あんたは?」

「出来ると思う?」

「してんな?」

「なんでそうなる?」

「いいから寝なさい」


「………抜け駆けするよね?」

「お手て繋いで決勝なんてつまらないでしょ?」

「…ごもっとも」

「明日は休みなんだから昼間どうとでも出来るじゃない」

「そうだね、なら僕も寝るよ」

「寝る前の自撮り写真送ってね」

「なんで?」

「本当に寝るか彼女としては心配だから」

「じゃあ綾も送ってよ」

「やだ」

「即答だね」

「いいから寝なさい。はい!解散!!」

「じゃあおやすみ」

「おやすみ、私の夢見ろよ」

「努力するよ」



土曜日

貴俊は起きるとスマホで時間を確認した。

「…ん?メッセ?」

時間は朝八時、約一時間前に綾からメッセが来ていた。


少し嫌な予感がしながら画面を開くと

『お昼食べに行こう』

とだけ送られていた。


「昼?…うーん、食べに行くか」


『おはよう、いいよ。行きたい店あるの?』

と返し、起きることにした。

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