第6話 女の騎士なんかいるわけねーだろ!

 ああ?

 騎士になりたいだぁ?


 騎士になるってお前、どっかの貴族の生まれだったんか?


 違うんならなれるわけねえだろ。

 騎士になるんならお前ぇ、どっかの騎士様の下で従卒として何年か修行してよ、そっから騎士見習いになって、そっからその騎士様に紹介してもらったりして、どっかの王様に叙爵してもらうとか騎士団に入るとかしなきゃなんめぇよ?


 騎士様だってお前ぇ、捨てるほど金持ってるわけじゃねえんだし、どこの馬の骨とも知らねぇ奴なんざ抱えたかねぇだろうぜ?

 ましてや従卒にもなりゃ騎士様の武器とか鎧とかの手入れさしてもらったり、馬の世話とかしながら色々勉強すんだ。武器も鎧も馬も騎士様にとっちゃ大事な財産なんだ。そういうのをわけの分からん奴なんかに任せたかぁねえだろうさ。


 せめてどこぞの貴族様の家の出だとかさ、有力貴族様の紹介状とかさ、そういうのでもない限り従卒になんかまずしてもらえねえよ。


 そりゃ戦でもありゃあ戦働きで立身出世てのも無くはないだろうけど、今の世の中平和だからなぁ。

 だいたい戦働きしたって簡単に騎士になれるわけじゃねえ。

 有名どこの傭兵隊長さんだってなかなか騎士にゃなれねぇんだ。

 むしろとは真逆の存在だとか言う坊さんだっていんだからよ。戦働きで功名稼いでも、その戦いっぷり次第じゃ逆に騎士からは遠ざかっちまうことだってあんだよ。

 だから昔の傭兵隊長だって手柄立てて男爵だ子爵だって爵位と領地はたまわっても騎士にゃあ、ついぞなれんかったってぇのはいんだろ?


 隣の男爵の初代様がたしかそんな感じだよ。

 どこかよその国の貴族の三男坊だったんじゃなかったかな?

 それで家をん出されて傭兵になって・・・戦働きで当時のウチの王様から爵位と領地を賜ったんだよ。

 でも、たしか騎士になれたなぁお孫様からじゃなかったかなぁ?

 貴族の出でさえ騎士にゃあ簡単にはなれねぇし、平民となりゃまず無理よ。


 だいたい、平民じゃ馬に乗れねぇじゃねえか?

 お前ぇさん、馬に乗れるか?


 ハッ、馬に乗れねぇのに騎士になんかさしてもらえるわけねえじゃねえか。


 騎士は馬に只乗るだけじゃねえ。

 重てえ鎧を着て乗るんだ。しかも、それで戦場を駆け回れなきゃいけねえ。

 まあ、実際には乗り降りする時は一人じゃ出来なくて従卒とかに手伝わせるらしいんだがな。


 そりゃそうよ!

 あの鎧どんだけ重てえか知らねえのか!?

 あんなの着たら歩くこともままならねえよ!

 普通の奴はあれ着たら立ち上がるだけでもやっとだぜ。

 だから乗る時は従卒が下からケツを持ち上げんだとよ。

 降りる時なんかもっと大変よ。バランス崩したら只じゃ済まねえからな、あんなのの下敷きになった日にゃ骨折で済めばラッキーってなもんだぜ。


 あ?

 女だぁ?


 おいおい、女が騎士になんかなれるわけねえだろ。

 ハッ、女の騎士なんて初めて聞いたぜ。


 あんな重てぇ鎧なんか女が着れるわけねえだろ。

 あんなの着て馬に乗り降りする女って、どんなゴリラ女だよ?

 そんなメスゴリラの嫁の貰い手なんざぁまずねぇだろうぜ、ハッハッハッハッ。


 だいたい女じゃ馬に乗ったまま小便できねえだろうが!?


 あ?


 ああ、そうだぞ?

 あの騎士連中は馬に乗ったら馬に乗ったまま小便とかすんだぞ?


 当たり前だろ、乗り降りすんのにイチイチ従卒に手伝ってもらわなきゃいけねえのに、小便するためにイチイチ馬を降りると思うか?


 戦んときゃぁ従卒は普通、戦場から離れたところであるじが帰ってくんの待ってんだ。いついかなる時でも手伝ってくれる奴がそばにいるってわけじゃねえから、一度馬に乗って戦場に出たからにゃあ戦が終わるまで乗りっぱなしよ!

 当然、小便くれぇは馬の上からチ〇ポだけ出して右か左へシャーッてなもんよ!

 いや、外に出さねえで内にぶちまける奴だっているらしいがな。


 ああ、下手すりゃクソだってそのままさ!


 バッカ、お前ぇだから騎士連中は鎧や馬の手入れを自分でやらねえで従卒とかにやらせんじゃねぇか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る