07

 残ったのは。


 ふたり。


 僕と、彼。


「さあて。仕事だな」


「まずは、君の見た未来を。喋れるかな?」


「喋るよ。全滅だ。街がまるごとなくなる。今日明日ってところだな」


 彼。身体が、震えている。


 いつも。彼は。こういう、ひとが死ぬ未来を見続けて。それを変え続けている。


「僕と君で、止めよう。ミサイル」


「おう。おまえのほうは?」


「朝からずっと。感じてる。ミサイルはたぶん、誘導されて、この駅前の公園。ちょうどここに、落ちてくる」


 心が、ぼろぼろに壊れる音がする。


 もうずっと。


 この電波と波長を、感じ続けていたから。


 彼。ポケットから、ボタンを取り出した。


「これが、発射装置だ。沖合の空母管制と繋がっている」


 ボタンを持つ、その手が。震えていた。


「俺は、ひとが死ぬ未来が見えるけど、何が起こるかは分からない」


「僕は、電波や波長が分かるけど、ひとが死ぬ未来を変える力を持ってない」


 でも。


 ふたりなら。


「俺が、迎撃ミサイルを発射する」


「僕が、ミサイル迎撃のタイミングを見つける」


「完璧だな」


「完璧だね」


 ふたりとも。


 ぼろぼろだった。


 それでも。


 街は、守る。


「君に会えて、よかったと思うよ、ほんとに。たのしかった」


「俺もだ。おまえと会ってからは、なかなか人生がたのしかった。ひとの死を見続ける俺でも。楽しいと思えた」


「へへ。さあ」


 街を守ろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る