02

「仕事は?」


「大丈夫。終らせてきたぜ」


 彼女。手を振る動作。手首から先には力が入っていなくて、ぶらぶらと指が揺れる。


「そっちは。研究いいのか?」


「小休止中ね」


 駅前の。磁場に関する研究をしていた。小さな専門学校の一室を間借りしている。


 人には言えないけど。


 官邸直属の、研究組織だった。


 高性能の自律稼動弾頭トマホークミサイルが、捕捉できない区域。磁場によって、位置情報と実際の着弾地点に大きなずれの発生する場所。その研究ということになる。


 そして。この場所が。


「サンドイッチ。食うか?」


「食う食う」


 彼女。片手で、お弁当箱のふたを開ける。


 女二人。


 サンドイッチ。


「ふたりは?」


 お互いに。


 好きなひとがいる。


 ただ、いつも会えるかどうかは。運次第だった。


 それで、いつも。公園に二人でいることが、多くなった。そういう、関係。べつだん、二人で仲良くなったり、距離を縮めようとしたりはしない。誕生日プレゼントとかも渡したりしないし、そもそもお互いの誕生日も年齢も、知らない。


 それでも、お互いに。信頼している。公園にいると。心が落ち着くから。

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