三十四、cosmos

清冽だから


誰も 触れ得ぬのだ


可憐のみならず

清く 潔く

故に


よこしまな者は元より

豪気なる者も 高貴なる者も

触れ得ぬ


ただ吹く風ばかりはその頬を撫でる

澄み切る空ばかりはそのに映る

白いサギのいと細い足先の黄色のまばゆさばかりは

その身に似通う


さえずりは遠く

静けさは深く

手を取り合う者とてなく

むれに交じらず


純朴さを損なわず

純粋さを気取らず

ただあるままに 清廉な


てた雪とて かほどはきよくあるまいに

淋漓りんりと流る湧水の いわお飛沫しぶ一欠片ひとかけよりこわ

宵闇にともるを知ったホタルの生まれて一度目の明滅よりやわらかに


甘さを排し

すくと立ちながら そよと揺らぐ


姿の

余りに

清く 潔く 在る故に

誰も 誰とても 触れ難い

その

誇りもせで惜しみのない愛らし気な純真を


ぽきりと手折たお

秋憂しゅうゆうにそそのかされて

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