第13話 契約とスキル3

 目を覚ますと後頭部に柔らかい感触、目の前にはメロンが2つありました。


「あっ、起きた!どうだい?体の調子は?」


 このままもう一眠りしたいところだが起き上がり、体の調子を確認する。


「うーんと、調子はかなり良いよ,,って!なにこれ!メタボが無くなってる!しかも腹筋バッキバキじゃん!あれ?なんか髪が軽いし髭も整ってる?」


 ここに来て二日間、地球に居た日も合わせると三日間もシャワーを浴びたり髭を整えたりできなかった。

 起きる前の俺は汚ならしかった。

 面倒で伸びても放置していた変にもっさりした髪。

 それに血と汗で脂ぎったベタベタが+されていた。

 さらに髭も元々伸ばしていたアゴ以外が微妙な長さに伸びて汚ならしい無精髭。

 だらけきった生活で飛び出た腹。

 それが起きたらどうしたことでしょう。

 頭が軽くて触った感じは髪はサラサラの短髪になってるし、わさわさ生えていた髭もアゴ以外がツルツルに。

 飛び出た腹は消え、バッキバキへとビフォーアフター。


「うん!気絶してる間に僕がコウにスキルを与えたんだ!身体超強化と神力超強化だよ!これで異世界攻略の序盤で死んじゃう事はなくなったかな!髪と髭も僕の身だしなみスキルでちゃちゃっとね!カッコ良くなったと思うよ!」


「えっ、寝てる間に顔の整形まで?匠の技やべぇ」


「あははっ!やだなー!元々そんなに悪い顔じゃないくせに!顔の形は弄ってないよ!ね!ニアちゃんはどう思う?自分の使徒に教えてあげなよ!」


 ニアちゃんが生まれ変わった(てない?)俺の顔を品定めしている。


「や、まぁ、身体も健康的になったし上の下か中の上はあるんじゃないの?知らんけど」


 美少女に誉められたんじゃね?

 おっさん、テンション上がっちゃうよ?


「ありがと!俺はニアちゃんは超美少女で可愛いと思ってるよ!!レイちゃんも超可愛い!メイさんも超美女!…支部長はダンディですね。ニアちゃんは俺より先に起きてたんだね!」


「うっわー、うざ。あたしは5分位で起きたよ、その後はレイ様におっさんの身体が弄られてボッコボッコ動いてんの見てたわ。超キモかった」


「あははっ!しょうがないよ!スキルが影響してたんだし!でもこれで正式に使徒になった時に、ニアにも少し身体超強化と神力超強化がかかるね!…身体超強化は胸とか以外の贅肉は付きづらくなるからね。太りづらくなるよ」


「マジですか!最上神様!ありがとうございますっ!!」


「…ちょっとだけニアが羨ましくなってきました」


 創造神様からのスキルより、レイちゃんからのスキルの方がメイさんには羨ましかったようだ。


「ん?メイも欲しいの?まだ在庫あるからこの件の報酬にしよっか?一緒にルミーナの家に行って用件が終わったら支払うよ!それでいいかい?」


「本当ですか!?その報酬でお願い致します!コウ様に関わって良かった!!」


 すっげー嬉しそう、見とれるほどいい笑顔。

 俺と関わって闇落ちしてた時の顔はどこへやら。


「そか!じゃあ後でね!アイトはどうする?何でも言ってみてよ!」


「そうですね,,では寿命を伸ばしては戴けないでしょうか?無理でしたら金銭で構いませんので」


「寿命かー、アイトはもう異世界攻略して神力上げれないの?ショップで買える寿命は買った?」


「私は家族や支部長の仕事があるのでもう異世界に行く時間は取れないのです…それに私の神力を上げる為に行かなければならない異世界は命の危険があります。恥ずかしながら、私は孫の顔が見たいんですよ。妻はまだ寿命がそれなりにあるのでいいのですが。それとショップで寿命を買えるほど、私は大金持ちではありませんよ。一度も買った事は無いですね」


「そっか!ショップで寿命買うのは高いし上限もあるからね!上限まで買ってたら僕には寿命伸ばすのは無理だったけど、お金で買える分なら大丈夫だよ!報酬は寿命じゃなくて、お金って事にしよう!僕は神力の質を高める事はできるけど、神力自体を上げる事はできないからさ。じゃあアイトも報酬は色々終わった後にね!」


「はい、ありがとうございます。微力ながら御協力させて頂きます」


 なにやら報酬の相談が終わったよう。

 寿命とか買えるんだね、やっぱファンタジーだわ。

 他にどんなの売ってるんだろ?


「よしっと、説明もしたし力も与えた。協力者への報酬も決まったし、後のゴタゴタは僕と協力者で解決するとして、最後にニアが転送の儀式をしてシステムに認められればコウは晴れて使徒になり、この神界で生きていくっと…まっ、システムに関しては問題ないか。あっ、ニア!コウを異世界に送ったらニアも一緒に異世界に行ってね!低級の異世界でパッパと帰って来れる所でいいから!二人でスキル試したりしながら、神界の常識を教えたり、コウの疑問に答えてくれると嬉しいかな!」


「はい、了解です。送り先はシステムが作った低級亀キノコの正常世界でいいですか?」


「うん!そこならニアが居れば大丈夫だね!じゃあ、後は若い二人でごゆっくり…って言いたいとこだけど。…コウ、最後に1つ。僕の質問に答えてくれないかな?」


「どしたのレイちゃん?そんな暗い顔して?何でも答えるから言ってみて」


 さっきまでのハイテンションが嘘のよう、しょんぼりした顔でこちらをジッと見つめている。


「あのね、コウは僕達神のせいで地球に帰れず、ほぼ強制的に神界で暮らす事になっちゃたじゃない。もしも、コウが普通に転移してきたとして。呼び出したのがここに居る誰か…いや、不細工な女神だったり、脂ぎったおっさん神だったとしても。ちゃんと説明されて、酷い目にあってなかったら、コウは使徒になって神界で生きてくれたかな?」


 ふざけた態度で答える話じゃないな、レイちゃん、涙目だし。


「レイちゃん、俺はね。地球じゃ半分死んでるような生活してたんだ。両親が死んで、家を兄貴が継いでから実家とは連絡も取ってないし。最初は親友に誘われて一緒に楽しくやってた仕事も、その親友が死んじゃって、別の奴が上司になってから、惰性でなんとなく続けてただけだし。人間関係も駄目でね、長いこと付き合って同棲してた彼女がいたんだけど、たまたま早く仕事終わって帰ったら、俺の友達とベッドで浮気してたんだよ。怒ったら逆ギレされてさ、彼女にはあんたは下手くそとか色々言われるし。浮気相手の友達には寂しくさせたお前が悪い、とか言われて殴られるし。その後は、俺と彼女の事知ってた奴等の中で何故か俺が悪者扱い。まだ生きてた親友だけは俺の味方だったけど。後は色んな事を投げ出して適当に生活してたのさ。飲む、打つ、寝るって感じ。だから俺はね、たとえ不細工な女神でも、脂ぎったおっさん神でも。ちゃんと説明されてたら、使徒になって地球とおさらばしてたと思うよ。ま、流石に酷い目にあわされてたら、やった神の使徒にはならないけど。あと、初対面で即股開くような糞ビッチとか怪しいし、浮気した元彼女思い出すから俺には無理かな。元彼女も俺が知らなかっただけで、イケメンだったら即股開いてたらしいんだよねぇ。ま、あの糞ビッチでも本性知らずに普通に接してくれてたら、使徒になったかもしんないけど。だからそんな気にしなくていいよー、なんなら今の状況が楽しくなってきたし!」


 話し終わったらレイちゃんが抱きついてきた。

 ふわ~、柔らかくて良い匂いなんじゃ~。

 出会って速効イケメンパックンチョな糞ビッチと一緒にするなよ。

 レイちゃんはサービスだと言いながらも見るからに恥ずかしがっていたし、戸惑う俺を気遣ってかハイテンションで場を明るくしてくれていた気がする。

 それに時折、こちらを不安そうな目で見ていた。


「コウ、地球でのつらかった事や、僕からの質問の答えを教えてくれてありがと。おかげで少し肩の荷が下りたよ。お礼に、ギューッてしてあげるね!それと耳貸して」


「いやぁ!俺の地球での生活なんて、恥ずかしい話ですわ!耳ならいくらでも貸すよ!返さなくていいからね!」


 レイちゃんに耳を近づける、なんかこそばゆい。

 俺の耳汚くないかね?丸三日は風呂入ってないし、加齢臭とかしてない?

 さっきのビフォーアフターで綺麗になってればいいんだけど。


「コウ、君が神界に転移してきたの、実はシステムの異常って訳じゃないんだ。君が神界の生活にある程度馴染んだら、創造神様からお話しされると思う。僕がコウに今教えてあげられるのはこれだけ。皆には内緒にしてね」


 システムの異常じゃない?

 それじゃあなんなのさ?

 …まぁ、ここまできて、色々考えても仕方ないか。

 いつか創造神様が教えてくれるだろ。

 さっき話した通り、地球じゃ半分死んでた。

 どうせ地球に未練なんか無い訳だし。

 ここに来て生き返った今、これからの生活が楽しみでしょうがない。


「オッケー、了解した!レイちゃんとはここでお別れしたらもう会えなかったりするの?神の神みたいな感じなんでしょ?寂しいなぁ」


「あははっ!普段は神界でも上の領域で仕事してるんだ。下に降りるのは創造神様の頼みか、神の怒りって言われてる罰くらいなものなんだよね。罰に関しては2度と同じ事しないように厳しくしろ!って、創造神様に言われてるからさ。自分でもやり過ぎなんじゃないかなーと思うくらいにはキツくしたからね。怖がられて僕の神具が祭壇に置かれて祈られるくらいには神の神してるよ!だからよっぽどじゃないと上の領域に居るし、下の領域で会う事は多分もう無いかなぁ」


「そっか、残念。上の領域には会いに行けないの?」


「上の領域の端っこにはニアが上級神になれば来れるよ!そうしたらまた会えるかな!会うのには時間がかかるけど、ここに居る皆の端末に僕の端末とメールできるようにしておくから!色々やって欲しい事ができると思うし!コウが使徒になったら端末使える様になるからさ、ニアから教えてもらってメール送ってよ!忙しい時は返事遅れちゃうかもだけどね!通話は話してるとこ見られて、下の領域にいる神や使徒と仲良くしてるのがバレると、他の最上神達に怒られちゃうから無しだけどね!」


 メールができるならそこまで寂しくはないな。

 でもまた本人に会えるのなら、ラヴいロリ巨乳女神にギューッてされたいものだ。

 頑張るぞい!


「じゃあ早くニアちゃんを上級神にしなくちゃだな!頑張ろう、ニアちゃん!」


「あんたね…。上級神をなんだと,,まぁいいわ。メイ様、そのへん含めてちゃんとこいつに説明しときますね」


「あははっ!お願いね!それじゃ、コウ!ニア!転送の儀式、頑張って!ま、絶対に失敗はしないから気楽にやるといいよ!はい、これ1人用使徒申請転送装置ね!じゃ、僕達はもう行くね!また会おうね!バイバイ!」


「ニアちゃん、黒石さん。初めての転送、頑張ってね」


「ニア、しっかりやるんですよ。コウ様、ではまたお会いしましょう」


 立ち上がり部屋を出ていこうとする三人。


「えっ、一緒に儀式しないの?」


「ちゃんと説明するしいーから、あんたはレイ様にバイバイしとき。多分、長いこと会えないから。支部長、メイ、また後で。それではレイ様、またいつかお会いしましょう」


「お、おう。それじゃ、レイちゃんバイバイ!また会おうね!メイさんと支部長もまた!」


「うん!楽しみにしてる!メール待ってるよ!」


 支部長とメイさんは会釈してドアから出ていき、レイちゃんはブンブン手を振りながら去っていった。


「ふぅ、とりあえず説明すんね。転送の儀式ってさ、システムにちゃんと承認されるように契約する人以外は立ち会わないのが一応ルールなの。ノイズが入って失敗しないようにね。ま、ルミーナの時あんたは立ち会ったみたいだけど。チラッと聞いてるっしょ?転移装置に比べたら安いけど、使徒申請転送装置もお高いのよ。使いきりだから失敗したらまた買わなきゃならないわけ。使徒になれば端末貰えるからこんなことしなくてもタダで異世界行けるようになるけどね」


「なるほどね、長いこと会えないって言ってたけどどのくらい会えないの?」


「…あー、そだね。あんた次第かな。まぁ、詳しくは使徒になってからでいいでしょ。とりあえず転送の儀式上手くいかなきゃ意味ないし」


「それもそうか、んじゃ、バシッと一発!転送しちまおうか!」


「ノリが軽いなー、言っとくけど。レイ様は絶対大丈夫みたいに言ってたけどさ。あたし初めてだから上手くいくかわかんないよ」


 処女か、良い響きだ。

 今からかうと面倒くさくなりそうだから自重しよ。


「大丈夫大丈夫、ニアちゃんを信じてるよ。上手くいくって」


「はぁ、ならいいけど。単純にお互い納得してれば問題ないし、余計なお喋りとかしないよ。記念にいい感じの雰囲気で転送したのを録画して使徒自慢してる奴もいるけど、普通に装置起動させるから。上手くいって異世界転送されたら絶対にその場から動いちゃ駄目。敵に襲われても死ぬような危険はないから適当に攻撃してて。ただし、転送した場所から勝手に動いたら死ぬかもしんない。あたしが行くまでその場から動かないって約束して」


「オッケー、約束するよ」


「本当にわかってんのかこいつ…まぁ、いいや。いくよ、転送装置起動」


 おお、ちょっと前に見たデカイ魔法陣だ。

 光が体にまとわりついてくる。


[使徒として承認、登録。転送開始]


 目の前が真っ白になり、体が浮く感覚。

 体が何処かへと吹き飛んでいく。

 だがその前に、キャラが迷走しがちな美少女女神と、何かが繋がったような気がした。


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