第30話 かつての同僚オリオンが語ったことは・・・



「実は任務に失敗してな。オスカーさまに会わせる顔がないのだ」

と、オリオンはエルフィンと二人きりになったとき、真実を告げた。


「本当はオスカーさまの愛する方を、ここへお連れするはずだったのだ。

 そちらの方の救出が、本当の目的で、重要な任務だった。

 だがその方は、途中でなぜだかわからないが、時の輪に吸い込まれてしまい、消えてしまったのだ」

と、オリオンは哀しげにつぶやいた。


「アメリアさまとオスカーさまが婚約したのは事実だ。

 私が救出に失敗したその方を護るために、オスカーさまはアメリアさまと婚約したのだが、結局は、オスカーさまもその方を護れなかった。

 最後の手段として、お前たちのいるこの星へ逃亡させることで、オスカーさまはその方を護ろうとしたのだが、その任務に私は失敗してしまったのだ」

 オリオンは優秀な武官で、今まで任務に失敗したことはほとんどなかった。だから、それがショックで落ち込んでいるのだろうと、エルフィンは考えたが、実は他の理由もあった。ただオリオン自身も、そのことに気づいていなかった。


「アメリアさまはマルデク王朝の血を引き、彼女が選んだ夫は次のマルデク王になることが、予言により、決められている。

 だからもしもの時は、アメリアさまを交渉の手段として使っても良いと、オスカーさまは言っていた。彼女は保険のようなものだったのだ。そしてアメリアさまも、アメリアさまで、この星へ来たい理由があってな、一緒に来ることを切望していた。だから、足手まといになるのはわかっていたのだが、一緒に連れてきた」

と、オリオンはエルフィンに本当のことを話した。





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