文化祭をサボった俺と、人生をサボった彼女

平日黒髪お姉さん

第1話

 生徒たちの騒がしい声に追い出され、俺は屋上へと足を運んでいた。ここはいつも静かで助かる。

 下界から聞こえる仲睦まじい男女の声に惑わされないように、イヤホンを装着し、完全無視モードに俺は徹することにしたのだ。


 今日は文化祭当日。学校にとっての大きな目玉イベント。

 しかしそれは一部の連中だけに限られる。例えば、クラスの中心にいる者、部活動に汗水垂らしている者などなど。

 つまりは、元々学生生活を楽しんでいる連中しかこの文化祭は楽しめないのだ。

 だから……俺みたいな友達もいなければ、彼女もいない。

 クラス内で浮いており、おまけには遅刻・欠席の常習犯たる俺には、邪魔にならないようにさっさと消えろというわけだ。


 こうして屋上へと足を運んだ邪魔者は大の字に寝転び、誰にも迷惑をかけずに文化祭が終わるのを待っていたわけだ。


「もしかしてキミ……サボり?」


 何か聞こえた気がするが……これはただの幻聴だ。

 俺みたいな人間に声をかけてくる奴なんて誰もいない。


「ねぇー聞いてるー? もしかして年上には興味ないとかいっちゃう系の男子ー? って、あの……本当に寝てるの?」


 女性の声が近くで聞こえてくる。それもちょっと怒っているっぽい。それに……何だか、俺に喋りかけているっぽい。

 だってこの屋上って俺以外の人間なんて誰もいないし。


「えいっ!!」


 ほおに何かが触れた。冷たい感触だった。ひんやりして気持ちいいなと思うのも束の間、思い切りほおを引っ張られた。


 流石にこれは幻覚ではない。現実の出来事である。


 目をパチリと開けると、女性の顔があった。

 それも超絶美人だった。端正な顔立ちで、黒くて丸い瞳。

 化粧しているのは確かだけどナチュラルな感じで、大人可愛いを体現化した感じだ。


「心配したんだよ。死体かなと思ってさ」

「心配してると言う割には、俺の顔を使って遊んでいるように見えるのですが……」


 巨乳美人というのは嬉しい話だ。

 しかも身体を屈めているのだ。そうなると必然的に、タイトスカートの先に見えるのは人肌が見えてですね……。


 はい、完全に健全な男子高校生には毒の姿が見えるわけだ。


 鼻を伸ばすのを悟られないように、俺は早口で言った。


「死体を見つけたらなら、先に警察に連絡するのが義務なのでは?」

「死人に口無しとは言うが……うん、ガッカリだ。キミは生きてる」

「ガッカリしないで。普通ここはほっと一安心したとかでしょ」

「だってさ、文化祭だよ。殺人事件の一つや二つぐらい起きても当たり前でしょ?」

「コナン君じゃあるまいし……そんなわけ」

「キュン死する人は出てくると思うけど? 文化祭だし」

「……ケッ。くだらねぇー。何がキュン死だよ。さっさと死ねってんだよ。あんなリア充共は消えればいいんだ」

「と、事件前に犯罪者は申しておりました。もう完全に世の中を嫌っているのがはっきりと伝わってきましたね。はい」

「勝手に俺を犯罪者にするな! というか、文化祭殺人事件の犯人は俺かよ! 殺される側じゃなくて、殺す側だったのね!」

「わたしのインタビューについても一言欲しかったかも。キミ、モテないでしょ? キミさ、女の子に相手にされないでしょー? お姉さんはなんでもお見通しだぜ」

「女性に相手にされない? バカを言わないでくださいよ。モテモテで困るから、こうして屋上に逃げているんです。あー困るな、モテ男は辛いぜ」

「刑務所に行く前に、病院に行った方がいいかもね、キミ」

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