月讀尊

あれだけマンボーやら

不要な外出は…とかで

活気を失った町が

12月なると急に賑わいを取り戻してきた。


町と言っても

渋谷とか、

横浜とかじゃない。


県下にたったの一軒しかないデパートに

県内中の人達がお年賀を求めて

一様に集まるのだ。


深月みつきが働く喫茶店もその恩恵をうけ

多くの客で賑わっていた。


夏のあの日、

優美ゆみ緑郎ろくろうに助けられてから

5ヶ月たった。


優美ちゃん4人がけのテーブルって空いてた?


いま片付けてまーす。

もう少し待ってもらえます?


優美は今その時の縁もあって

私の働く店でアルバイトをしている。


緑郎とはやり直したとはいえ、

すぐに再婚ではなく、一度失敗しているのもあって、ちょうど良い距離感を模索しているらしい。


 私って考えなしに、

 すぐに思い付きで実行してしまって

 失敗する事が多いんです。

 だから緑郎さんとはやり直したいけど、

 まず自分としっかり向き合ってから

 一緒になりたいんです。


だ、そうだ。

緑郎もそれに納得しているらしい。



深月さん、

まだシフォンケーキありました?


うんあるよ。


じゃあ

シフォンとブレンドで1つずつで

お願いします!


はーい。



私はというと…。

朱い糸はいつでも見えるわけではない。

糸は私を介して見えるわけで、

つまり私と出会うべく

 運命さだめ

がある糸しか見えないようだ。



優美と緑郎の糸をほどいたあの日。

優美の朱い糸が見えてから、

何か違う世界に

踏み入れたような感じだった。

沸々と湧き上がる、

神仏のような説法を

自分の中で解釈した通りに言葉に出していた。



いわば彼女を助けたい気持ちが

具象化されていくゾーン状態

、月下の翁の言う

だったのだと思う。


それから

朱い鳥居と白いキツネ

という私の夢にでてくる、二つのキーワードについて緑郎が調べてくれた。


ネットで調べて

出てきたの2件


一つ目は久我山稲荷神社

杉並区久我山にある稲荷神社(実在)

稲荷と名付けられたところは、

豊作を願う事が多い。

それからここは遠すぎてなんとなく関連性も実感もわかなかった。


二つ目はこの町のどこかにあった

月讀命つくよみのみこと」を祀られた神社


神社があった場所は江戸時代前期の

寛文2年5月1日(1662年6月16日)に起きた大地震で川の水が逆流して氾濫をおこして水没してしまった。

という書面が残っているらしいが、

今では何処にあるかもわからないそうだ。


月讀命と月下の翁

翁は自分を 月を読む者 と言っていた。


本当の事を言うとという

ワードに私は聞き覚えがあった。

私は大学時代に神道文化学という学部にいたからだ。


神道文化学とは神道を中心とする日本の伝統文化、そして内外の諸宗教・文化を学ぶ学部なのだが、

私は特に神道に興味を抱いていた。


先生とはそこで出会った。















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る