第7話 晩御飯

 美咲たちがリビングで雑談して待っていると、蓮夜が両手に皿を持ってリビングに戻って来た。


「晩飯出来たぞ。三人とも食べるだけのごはん入れて来い」

「了解」


 蓮夜の言葉に悠斗が返事をして三人を先導してキッチンに移動した。

 悠斗は食器棚を開けると三人分の器を取り出して美咲と愛奈に一つずつ手渡した。


「その炊飯器から好きな量だけ入れて」

「はーい」


 炊飯器を指さして言う悠斗に愛奈が返事をして、炊飯器を開けて炊きたで美味しそうなお米を器に入れてリビングに戻った。

 美咲も愛奈と同じように器にお米を入れてリビングに戻った。

 リビングでは蓮夜が作った料理をテーブルの上に並べ、人数分のコップと取り皿、箸を用意していた。

 美咲は愛奈の隣に座り、お米を入れてきた器をテーブルに置いた。

 美咲が席に着くと、悠斗がお茶と自分の分のごはんを持って戻ってきて席に着き、蓮夜も自分の分のごはんを持って戻ってきて悠斗の隣に座った。


「それじゃあ、食べるか」

「「「いただきます」」」


 四人は手を合わせた後、箸を持ち蓮夜以外の三人は並べられた複数のおかずで最初に食べるものを選び始めた。

 回鍋肉やロールキャベツ、ローストビーフとちょっとしたサラダが並べられている。

 三人は少し悩んで各々に気になるものを取り一口食べて、美咲は目を少し見開いて驚いた。


「おいしい!」

「相変わらず、凄い美味しいわね」

「確かにな」


 驚いている美咲に比べて悠斗と愛奈は少し呆れ気味に呟きながら他の料理も食べていく。

 美咲も愛奈達と同じように他の料理を食べていくが、蓮夜はそれぞれを少しずつ食べて微妙な顔をしていた。


「どうしたの?」

「ん?」


 微妙な顔をしている蓮夜に美咲は不思議に思い問いかけると、蓮夜は美咲に視線を向けて少し首を傾げて視線を料理に戻して問いに答えた。


「思ってた味と少し違うなって思っただけだ」

「ん?どういうこと?」

「ん?」


 蓮夜の言葉の意味が分からずに美咲が問い返すと、蓮夜は美咲の質問の意味が分からずに首を傾げた。

 二人のやり取りを見て悠斗が呆れたようにため息をついて美咲に話しかけた。


「美咲、蓮夜は頭の中で料理の味を想像しながら作ってるんだ。だから、考えてた味との誤差があったから少し納得がいってないだけだ」

「少し気になることもあるけど、取り合えず分かったわ」

「蓮夜も美咲はお前のこと良く知らないんだから、もう少し丁寧に説明できないのか」

「そうだったな」


 悠斗は自分の作った料理の味が気になってあまり他のことを考えていない蓮夜にため息をつきながら注意した。

 悠斗の注意に蓮夜はあまり回っていない頭で適当に返した。


「蓮夜、もう少し美咲のこと気に掛けてあげなさいよ」

「別に特別気にしてないわけじゃない。俺は誰に対してもこんな感じだ」


 蓮夜の態度に呆れたように言う愛奈に蓮夜は何でもないように返した。


「まあ、眠気が取れてるだけましか」

「そうね。まあ、美咲も嫌われてるわけじゃないから気にしない方がいいわよ」

「他の人にもこんな感じの態度なの?」


 美咲は無駄に味付けについて考えている蓮夜に少し視線を向けながら悠斗と愛奈に問いかけた。

 二人は料理を食べながら美咲の問いに返した。


「まあ、普段はこんな感じよ」

「蓮夜と波長が合う奴か、そこそこ長い付き合いで仲良い奴以外だとこんな感じだ」

「波長が合う人なんていたの?」

「いたぞ」


 美咲の問いに味付けについて考えていて話を聞いていないと思っていた蓮夜だった。


「聞いてたの?」

「何となくは聞いている」


 美咲が意外そうな顔で問いかけると、蓮夜は当たり前のように答えて箸を置いた。

 美咲が悠斗と愛奈に質問している間に蓮夜はすでに食べ終わっていた。


「ちなみに、俺と波長が合う奴は中学の時に一人だけいたぞ。他の高校に行ったが」

「どんな人だったの?」

「それは二人に聞いてくれ。後、あんまり話してないで先に食べたらどうだ」

「……そうね」


 美咲は蓮夜のことを気にしてあまり食べていないことに気づき少し急ぎ目で食べ始めた。

 美咲が食べることに集中し始めたことで蓮夜はお茶を飲んで一息ついた。

 お茶を飲んで蓮夜がくつろいでいる間に悠斗達三人も食べ終わった。


「じゃあ、片付けるか」

「あ、片付けは私達がやるよ」


 蓮夜が立ち上がろうとしたところで愛奈が呼び止めた。


「分かった。じゃあ、今の内に風呂に入って来るよ」

「分かったわ」

「じゃあ、俺達三人で片付けるか」

「そうね」


 蓮夜は愛奈に頷いた後、三人に風呂に入ることを告げてリビングから出て行った。

 三人はテーブルの上の食器をまとめてキッチンに運び、三人で分担して食器を洗い終わらせた。

 意外と早く片付け終わった三人は蓮夜が風呂から上がって来るまでの間リビングで雑談して過ごした。


「上がったぞ。次、入りたい奴入りな」

「じゃあ、次は俺が入るよ」


 蓮夜に続いて悠斗も風呂に入り、蓮夜は美咲と愛奈をリビングに残してリビングから出て行った。


「蓮夜、どこに行ったんだろ?愛奈何か知ってる?」

「ああ、やる予定だった用事を終わらせに行ってるんじゃない」

「用事?」


 問いに対する愛奈の答えに美咲は首を傾げて問い返した。

 愛奈はどう説明しようか悩みながらも話し始めた。


「えっと、蓮夜って本当にいろんなことやってるみたいで、普段は夜にその用事をやってるらしいんだけど、誰かが泊まりに来た時とかは用事を無くしたりいろいろしてるんだよ」

「そうなんだ。じゃあ、泊まりに来たりして悪かったかな?」

「蓮夜が許可出したんだし、大丈夫だよ」

「ねえ、蓮夜はどんなことをやってるの?」

「それは私達も分からないんだ……」

「そうなんだ……」


 美咲の問いに申し訳なさそうな顔で返した愛奈に美咲も申し訳なさそうな顔で返事をし話題を変えて雑談をして悠斗が上がるのを待った。

 悠斗が上がったのを確認して愛奈、美咲の順番に風呂に入り、美咲が風呂から上がって髪を乾かしていると蓮夜がリビングに戻って来た。


「取り合えず、お前らが泊まる部屋に案内するからついてこい」


 蓮夜に言われて三人はそれぞれ用意された客間に荷物を運び、リビングにまた集まった。

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