いろいろ短編集

月夜公

第一章:りんごの話 〜りんごは川に流されて〜


真っ白な、雪のような花が咲く

緑の小さな実できて

やがては真っ赤に熟すでしょう


その色は何色でしょう

それは恥ずかしがる乙女の色

それは日が海へと沈む空の色

それは咲き誇るバラの色

それは復讐に煮えたぎる炎の色

それは心和ます秋の楓色


お日様の陽を浴びて、とろけるような甘さになるのでしょう

蜂蜜のような

温めた乾酪のような

蟲が飲む蜜のような


でもそれはほんのいっとき


四季が巡って時が経つ

生き物の輪廻がいくつも起こり、新しい生物が生まれる


その長い川のほんの一寸のことでしょう


川の流れを止められたらどんなに良いことでしょう


いつまでも、真っ赤なりんごを見てられる


しかしそんなことは起きないのだよと、月が孤独に笑っています



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