第37話「ギア」


 「ほ、本当になんなんだよあいつは......」

 「か、監督!!!どうしますか!もうさすがに」


 い、いきなり試合早々でキックオフシュートをかましてきやがったかと思えば、こ、今度は1人、2人、3人抜いて、4人、5......


 「と、止めろおおおおお!!!!!!そいつをどうにかして止めろおおおおお!!!!!!!!!!!」


 し、知らん。あんな奴知らんぞ!

 一体何が起こっている.......

 ま、松坂洋介まつざかようすけ。その名前は知っているけど本当にあんな奴はしらんぞ!

 誰だよ!


 「か、囲めえええええ!!!!!!!!!!」


 い、いくらベストメンバーではないにしろ、こ、こいつ等だってそれなりの......

 に、二回戦で、しかも三峰なんかに負けたら恥、恥でしかないぞ! どうにかしてあいつを


 って、ヒ、ヒールリフトお!?

 か、からの何だよ、あ、あの高速のシザース!?!


 も、もう試合も始まって何だかんだで35分。

 前半も終わりだというのに、ま、まさかの2点も決められて

 って、何だ!だから何だよ!あいつのあのシュートは!!!!!!!

 って、さ、3点目.......。う、嘘だろ?


 な、何で三峰なんかにあんな奴が


 ぜ、前任の監督を計画通りうまいことひきず、いや引き継いで、早くも、早くも俺の時代が来たかと思ったら......

 いきなり、いきなりこんなの、新人戦とはいえ絶対に俺の責任に......


 そ、それだけは阻止。それだけは阻止しなければ、くっ、3年のあいつ等も連れて来れば.....今からでも、い、いや、クソッ間に合わない。

 せ、せめてあいつ等だけでも、あの兄弟だけでも来れば

 エ、エリートの俺がこんなところでは......

 今年はあの白鳳だって.......

 

 「一体、何をやっているんだ、あの双子の問題児たちは!」


 1年は全員召集かかっていたはずだろうが!


 「あ、か、監督。ようやく、ようやく来ました!」

 「や、やっと来たのか!? ”零士と清二”が!」


 くっ........何分遅刻だと思っているんだこいつら!

 いつもいつも悪びれもせずに......


 「へぇー、あいつやるじゃん。てか、それでもこいつ等、三峰相手にもう3点も取られてるってマジかよ。終わってんな」

 「うおっ、仲居もいるじゃん。あいつ三峰なんかに来てたのかよ。終わってんな。ふっ、もうあのデブなんてフラフラじゃねぇか。マジで終わってんな」


 ま、まぁいい。こいつ等にはプレーで返してもらう。

 よ、よし。まだ後半戦は丸々残っている。

 こいつ等が、こいつ等が二人がいればまだ全然何とかなる時間だ。


 「お前ら、後半戦からすぐに出ろ」


 「ういーす」

 「あーあ、だっる」


 こ、こんなのだが、こいつ等は間違いなく、あの松坂と同じこれからの日本のサッカー界を超躍進させると言われている10年に一度の逸材が集まるのメンバー。

 松坂は無理だったが、こいつ達を獲得するのに俺がどれだけの苦労を重ねたと思っている。本当にどれだけの......


 黄金の世代のU-15代表だった”轟木兄弟”


 こいつ等が二人合わされば客観的に見てもあの松坂を超える。

 攻撃はもちろんのことだが、こいつ等がいれば特にもう得体の知れないの勢いも完全に終わりだ。

 もう我がチームのネットが揺れることはない。

 

 ふっ、残念だがここまでだ三峰。遊びは終わりだ


 所詮、お前らは過去の遺物

 落ちた......って、


 よ、よく見れば、な、なんで、何であいつの.....


 あ、あいつの娘がいるんだ!?


 ふ、がなぜあんなところに.......

 な、なんで



 「お、おい、零士と清二、あいつ等を、あいつ等を徹底的に潰せ。何が何でも潰せ。負けることは絶対に許さん。絶対に、絶対に勝て、絶対にだ」


 

 「はいはい、まだ3点だろ。余裕だって」

 「その代わり、ちゃんと勝ったらまた頼むよ~。監督~」

 

 くっ、な、なんで、なんで本当にあいつの娘がこんなところに......


 潰せ!絶対に潰せ!なにが何でも潰せ

 


 「わかったから。徹底的に潰してこい!」 

 

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