第25話「限界と伸びしろ」


 「菊田くん、君が俺達の同士になることは大歓迎だ」

 「え.....ど、同士?」

 「ただ、君はひとつ勘違いをしている」

 「僕が勘違い......?な、何を」


 今、萌香の前には3人の半裸の男性が歩いています。

 萌香は後ろを歩いているだけで、彼らとは関係ないです。

 あるけれど、ないですから......。

 すれ違う方たち、萌香までそんな目で見ないでください......


 「どれだけ頑張っても上手くならないってさっき言ってたよね」

 「え、あ、まぁ」


 「なら菊田くんは実際に血反吐を吐くまで練習をしたことがあるかい?」

 「ち、血反吐?」


 え? 血反吐? 

 いま松坂くんは一体何を......。ち、血反吐って言いました?

 も、萌香の聞き間違いですか?

 血反吐って......


 「菊田くんは他人にふき飛ばされて命の危機を感じたことはあるかい?」

 「い、命の危機......?」


 ま、松坂くん?


 「サッカーが上手くならないと生きていけない環境に置かれたことはあるかい?」

 「え、いや、え?」


 サッカーが上手くならないと生きていけない?

 も、萌香やっぱりわかりません。

 松坂君、彼は今一体なんの話をしていますか? え?


 「うん。ないよね。菊田くんは確かに真面目だ。練習もちゃんとしている。でも、それは当たり前のことだよね。それだけで限界まで頑張っていると主張するのはちょっと違う気がするかな~。うん、違うと思う」

 「え.......」


 「さっきもう伸びしろがないとか言っていたけど、その身体からしてもまだ伸びしろめちゃくちゃあるよね.......」

 「え、あ.......」


 「あるよね」

 「あ、はい.......」


 あれ? 伸びしろ?

 しかも今、菊田君。はいって......。

 でも、た、確かにあんな身体の松坂くんに言われたら.......


 「それに菊田君、勉強の時間は置いておいて。見ている限り朝から寝るまでずっとサッカーのこと考えているわけではないよね」

 「え......」

 

 「ないよね」

 「ま、まぁ.....」


 「じゃあやっぱり限界じゃないよね。菊田くんにはむしろ伸びしろしかないよね......」


 「え、あ、はい.......」


 あれ?これって...... 

 も、もしかして松坂くん。説得してくれてる?

 何だかんだ言っても、やっぱり松坂君は菊田くんのことを..... 

 そ、そうですよね。あんなにサッカーが上手なんですもん。

 普段は辞めたい辞めたいって何故か言っているけれど......本音はね。

 

 内容や今のこの状況はひとまず置いておいて、あんなにも真剣な顔で菊田君を辞めさせないために......。


 や、やっぱりちょっとカッコいいかもです。松坂くん......。

 サッカーもそうですけど、本当に大事な時はいつも真剣だし。頼りになるかもです......。


 べ、別にそういうのではないですけどね.....

 そ、それにやっぱりあのセクシーな身体さんも......

 ど、どうしても萌香の目に......


 「うん。素直なのはいいね。やっぱり菊田くんは良いよ。なぁ田辺くん」

 「うむ」


 うん。そ、そうです。

 何事も素直が一番です。だからこれからも萌香たちと一緒に


 「よし。一緒に俺たちと共にあのクソババアの深田と戦おう!今日から菊田君もアニメ同好会の一員だ!アンチサッカー!」


 ん? 反アンチサッカー?


 「3人で絶対に、絶対にサッカー部から抜けてやろうな!」


 「え?」

 「へ?」


 「ん? どうした菊田くん。辞めたいんだろ。サッカー」

 「え、あ、うん え?」


 「よし、これでスリーマンセル。退部の為の作戦の幅が広がるぜ。なあ田辺くん」

 「うむ。戦力増強。ちなみに菊田殿、好きなアニメはなんですぞ?」


 「え? あ、アニメ? え? ま、まぁ強いていうならばよく昔見ていたのは『えんぴつしんちゃん』とかだけど.......」


 「お、渋いですな。菊田殿。ギャグアニメの原点をついてくるとは」

 「うん。いいよな。しんちゃんは。久々にこの前に見たけれど、やっぱり面白い。そりゃ長年続いているわけだ。いいね。菊田くん」


 「え、あ、ああ。ありがとう......」


 えーっとこれはどういうことですか?

 あれ? あの流れからあれ?


 どうなっています? これ?


 え? 結局これって辞める方向に......


 「ほう、そういうことだったか。菊田はこいつらと組んでいたわけだ」


 って、え?

 唐突に萌香の後ろからは大人の女性の声。


 「お前が急に辞めたいとか言い出すから心配したが、そうかこいつらとつるんでいたのか。それになーんか今、あのクソババアの深田とか聞こえてきた様な気がするなー」


 ふ、深田先生。


 「あ、あ、あ、違う、僕は、ちが」


 あっ、松坂くんと田辺くんが逃げ......


 「そうか、くっ.....一人逃した。ほぅ少々意外だったが2バカが3バカにねぇ」


 「い、いや本当に、本当に違っ、あ、あ、あ.....ちょ、松坂くん、松坂くん、何であ、あ、何で僕が」


 二人ともズボンのベルトを持たれて.......


 「よし、じゃあ行こうか。菊田と松坂」


 結局こうなるんですね......。

 まぁ一応はこれでいいんですかね......。


 「あ、ちょ、何で僕が、何で」

 「菊田くん。諦めろ。こういう時はもう無になるんだ......。騒いでも無駄だと俺は最近わかった......」


 「え、あ、あ.......」


 はぁ......。

 とりあえず意味わからないけど萌香も練習行きます......。



 何だかんだでほぼいつも通りですね.......。



 で、でもやっぱり松坂くん。

 すごい身体です.....。 ゴクリ

 



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ジェットンです。3分の2ぐらい復活しました。


もし面白いと思った方が奇跡的にいれば応援してくれたら嬉しいです。


すみません。




別作の「彼女いない歴=年齢の小早川くん28歳は、若くして恋に枯れ果てている」も完結しましたので宜しければぜひ

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