第53回(改) BB小説家コミュニティ第三期スタート

 2021年8月1日。BB小説家コミュニティ第三期の開始日。

 夜になり、私はDiscordに接続した。


 BB小説家コミュニティは、一切対面での交流がない、完全オンライン型の集まりである。

 使うツールは二種類で、一つはSlackというアプリ。こっちには、主に全体への案内や、BookBaseに所属する各編集者による小説コラムが掲載されたりする、いわば公式掲示板のような場所となっている。

 もう一つは、Discordというアプリ。オンラインゲームをやる人達にとっては馴染み深いツールであるようで、過去に私が入っていたコミュニティでも活用していたものであるが、本格的に使うのは今回のBB小説家コミュニティが初であった。このDiscord上で、参加者達は、活動を行っていくのである。


 Discord内にはいくつも部屋(チャンネル)が作られており、ほとんどがテキスト入力によるチャット形式で交流する場となっているが、一部の部屋は音声接続で会話することも可能となっている。


 右も左もわからない状態であったが、まずはDiscordの音声チャンネルに、私はアクセスした。


 時間が来て、オタクペンギン社長が、相変わらずの早口で喋り始めた。早口ではあるが、聞き取りやすい声をしており、耳馴染みはいい。


 怒濤の如く、説明の波が押し寄せてきて、その情報量の多さでお腹がいっぱいになってくる。私は何とか頭の中を整理しながら、このコミュニティで何が出来るのか、理解と把握に努めていった。


 大きく分けて、やれることは三つある。

 一つは、参加者同士の交流。

 一つは、感想サービス。

 そして最後の一つは、個別編集だ。


 参加者同士の交流について、ほとんど制限はない。ただ、唯一課せられているルールがある。

 それは、読み合いの禁止。

 お互いの作品を読み合って、感想を述べたり、批評したりするのは、トラブルの元となるからやってはいけない、というものだ。

 このルールは、私にとっては非常にありがたいものだった。会に参加している間、自作を読まれて、勝手に批評を送られたりするような、不愉快な思いはしたくなかった。だから、読み合い禁止、と明確に定められていることによって、安心して活動することが出来る。


 そして、感想サービス。このコミュニティの目玉の一つである。

 月に三作品(注:三期当時の数です)、一作品につき冒頭一万文字まで、編集者に原稿を読んでもらえる。そして、何日かした後に、感想をもらえるのである。どこが優れているか、何が魅力的なポイントか、逆にどういったところが改善点か、そういう内容をコンパクトにまとめて、編集者が感想やアドバイスをくれるのだ。

 さらに、その一万文字感想とは別枠で――会期中、一回だけ、十万文字感想をお願いすることが出来る。

 十万文字。それは、書籍一冊分のボリューム。これを読んでもらえて、感想やアドバイスをいただけるというのは、かなりの魅力であった。


 ちなみに、会費は私の場合、税込で14850円だった(三ヶ月分。オプションサービス付き)。この料金には、もちろん各種感想サービスも含まれている。

 ココナラやSKIMAといったサービスで十万文字感想をもらおうとしたら、素人によるサービスでも、だいたい17000円くらいはかかる。それだけでもBB小説家コミュニティの会費を超えてしまうが、コミュニティではさらに、一万文字×三作品×三ヶ月、小説の感想をもらえるのだ。


(なるほど、ここでは、如何に感想サービスを有効に活用するかが、会費の元を取るためのコツとなってくるわけなんだな)


 この時の私は、このBB小説家コミュニティの核となる部分を、そのように解釈した。とにかく感想サービスを使わなければ勿体ない、と思った。


 最後の一つ、個別編集であるが、これは会費とは別料金を払って、編集者と個別にやり取りしながら、一緒に作品づくりをする、というものだ。

 これは正直、やらなくてもいいかな、と私は考えていた。わざわざお金を出してまで、編集者に作品づくりについてあれこれ言われたくなかった。自分の書きたいように書く。それがこの時の私の望みであった。


 とにかく、私がこのコミュニティに入った一番の目的は、孤独に執筆活動を続けることに限界を感じていたから、というものがある。

 他の参加者と交流し、編集者から感想を受け、自分の書きたい心、執筆意欲に火をつける。それが何よりも、今の自分にとっては大事なことであった。


 問題は、そんな自分の目的に対して、このコミュニティがどこまで役に立つか、というところであったが、そのあたりは気楽に考えていた。


 何せ、会期は三ヶ月限定なのである。


(なあに、万が一ろくでもない集まりだったとしても、三ヶ月経てば自然とおさらばだ。そこで縁を切ればいい。会費は勉強代と思えば安いもんよ)


 そんな風に考えていた。


 さっそく、説明会が終了した直後に、私は感想サービスを利用した。

 一万文字感想の一本目は、『水滸ストレンジア』の冒頭を読んでもらうことにした。

 果たして、編集者からどのような感想が返ってくるのか。


 ドキドキの時間を過ごしていたが、すぐ翌日に、BookBaseの編集長サマンサ氏から感想が送られてきた。


「拝見しました。おもしろかったです! ストーリーがいいですね~。あらすじも上手です。読みたくなります。物語が本格的に始まるのがラクシュミーがさらわれて以降だと思うので、読ませていただいた冒頭がさくさく進んでいるのものよかったです」


 どんなコメントが寄せられるだろう、と思っていたところに、まさかのベタ褒めで、私はすっかり気分が良くなった。

 そうか、私の書く物語は、面白いんだな!


 自分の中で自信が膨らんできて、もっと書きたい、という意欲がむくむくと湧き上がってくるのを感じていた。

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