第16話 不安
石田華は、2才で不安をいっぱい抱えていた。
なんで、お母さんは、いつもさみしそうに、華に笑うんだろう?
なんで、ばあばは、お母さんのことをさけるんだろう?
なんで、じいじは、華を好きじゃないんだろう?
なんで、エリ姉さんは、華をにらむんだろう?
なんで、ミタカ兄さんは、悲しそうな顔をしてるんだろう?
なんで、お父さんは、ばあばとエリ姉さんが嫌いなんだろう?
華が、ちゃんと「さん」を言えないから、みんな困って悲しいのかな?
華がいるから、みんな怒ってるのかな?
華がいるから・・・?
まだ2才の華には、分からない事ばかりの家族と世界だ。
「お母すん、華のこと、みんなきらい?」
1度だけ、エリ姉さんに怒鳴られて、華がばあばの家で大泣きして、自分の家に帰った時に、華が母親であるさやかに泣きながら聞いた。
さやかは、優しく華を抱きしめた。お母さんは、いつも甘い優しい匂いがするから、華は大好き。
「みんな華を嫌いじゃないのよ、華もお友だちとケンカして怒る時があるでしょ?」
華をのぞきこんだお母さんの方が泣きそうな顔をしてる。
「うん、カナちゃんとケンカする」
カナちゃんは、近くの公園で遊ぶ、華の1番の友達だ。いつもは遊んで楽しいけど、時々、おもちゃのとりあいで、ケンカする。
「華とカナちゃんと同じように、大人もケンカしたり、おこりたい時があるの。エリ姉さんが怒ったのは、つらいことがあったから。でもエリ姉さんが華にどなったことは、華にしちゃいけないことだから、華は悪くないし、華のことを嫌いなわけじゃないの、分かる?」
「うーん、少し」
華がうなずくと、お母さんは、ほっとした顔をした。
お風呂から出てきたお父さんが、ニコニコ笑って、華とさやかに気がついて、頭をわしゃわしゃ撫でてくれた。華は、これが大好きだ。不安もいつの間にかに、吹き飛んでいく。
「華、お父さん、華の好きな牛乳プリン買っておいたよ、食べるか?」
お父さんは、華をヒョイと持ち上げて抱っこするとリビングまで歩きだした。
「お母さんも食べようかな?」
華が後ろを振り向くと、泣きそうな顔だったお母さんが笑ってる。
「華の牛にゆうプリン、お母すんにはんぶんあげる!」
華が大声で言うと、お父さんとお母さんが笑った。
「華は、優しいなあ、でもお父さんは牛乳プリン3個も買ってきたから、華は全部食べていいんだよ?お金持ちだろ?お父さんは!」
華は嬉しくなって、ケラケラ笑った。
華の不安は、いつの間にかに消えていた。
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