EX05 ロリコン襲来


 パーカー家に丘の魔女が遊びに来た。

 その衝撃は凄まじく、メイドたちは慌てふためいた。


「クリスお嬢様は、その、お仕事中なので不在です(魔女、美しい! クリス様と並べば天下無双の美しさ! でもこいつロリコンなのよね! クリス様は魔女をあんなにお慕いしているのにっ! クソがっ!)」


 ちょうど玄関で掃除をしていたソフィアが対応。


「あ、いいのよ。今日はルーナに用があるの(そしてクリちゃんの部屋でエロ本探しよ!)」


「ルーナお嬢様ですか? ちょっと、ブラウン補佐に確認しますので、少々お待ちください(ロリコンがわたしのお嬢様を食べる気だぁぁぁ!! でもこの魔女、見た目だけは超絶美しいからわたしドッキドキ!)」


 ソフィアは急いでモニカの下へと向かった。

 魔女は玄関でぼんやりとソフィアが戻るのを待った。

 そうしていると、背後に気配を感じる。しかし魔女は気付かない振りをした。


「「わっ!!」」


 ルーナとリリアンが大声を出しながら、魔女に抱き付いた。

 魔女はビクッとなった。


「やったぁ、魔女さんビビった!」とルーナ。

「おう! ついに魔女さんをビビらせたぜ!」とリリアン。


「え、ええ。驚いたわ(ああん! 美少女たちがわたしに抱き付いてるぅぅぅ! この温もりがわたしの生命力!!)」

「てか、魔女さんこっち」

「おう、こっちの方が速いぞ」


 ルーナとリリアンが魔女の手を引っ張る。

 ルーナが右手を、リリアンが左手をそれぞれ掴んでいる。


(ああんっ! 美少女たちがわたしを取り合ってるみたいな構図! 素敵!!)


 2人に引っ張られるままに、魔女はルーナの部屋の窓の下まで移動した。

 窓からロープが垂れ下がっている。

 ルーナとリリアンが魔女の手を解放し、手袋をはめた。


「そんなことしなくても、2人とも飛べるでしょ?」

「うん。でも、ロープを使って登るのがいいんだよ?(魔女さんってやっぱクールだなぁ。ロマンとか分からないタイプだよね)」

「そうそう。てか、これも訓練みたいなもんだぞ?(ロープ楽しいのに、魔女さん本当あれだな、えっと、なんだっけ? 現実的?)」


 言ってから、ルーナとリリアンは順番にロープを登った。

 魔女は二人がロープをよじ登る姿を見ていた。


(エロいわね。何かがエロいわ。服装は二人ともズボンだし、可愛くないけど、美少女たちが必死にロープに身体を擦りつけているのは、エロいわね)


 美少女とロープの戯れをたっぷりゆっくり堪能したあと、魔女は普通に空を飛んでルーナの部屋に入った。

 その時に、ふと青髪のメイドのことを思い出したけど、「まぁ、おばさんのことはいっか」と呟いて忘却することにした。



「姉様、いつも攻められてばかりじゃ、ありませんのよ? わたくしだって、お姉様を気持ちよくできますのよ?」


 言いながら、ルーナは魔女の顎をクイッと右手で持ち上げた。

 魔女は床にペッタンコ座りしていて、ルーナは立っている。


(あああああああああ! 美少女に顎クイってされたぁぁぁあ! あばばば! しかも凄まじい台詞と一緒にぃぃぃぃぃ!! トロットロでぇぇぇす!! ヤバい! これヤバい! 死ぬ!! わたし死ぬぅぅぅぅぅ!! 胸が苦しいぃぃぃぃぃ!! キュンキュンしすぎて苦しいぃぃぃぃのぉぉぉ!!)


 魔女は表情が少しトロンとしている。いつもの仏頂面はどこへやら。


「ルーナ! 次あたし!」


 リリアンはルーナが左手に持っている本をサッと奪い取る。

 そしてパラパラとページをめくった。

 ルーナが魔女から離れる。


「ああんっ! お姉様、そんなところ、ダメですぅ!」リリアンが言う。「……あれ? 全然面白くないぞこれ」


 リリアンは普通に読み書きができる。学校には行っていないが、孤児院で院長先生に教わっているからだ。


「恋愛小説だもん」


 ルーナがリリアンから本を回収。

 ちなみに、ここはルーナの部屋ではなく、クリスの私室。

 魔女がクリスの部屋を見たいと言って、ルーナが案内したのだ。

 クリスは鍵をかけたりしない。メイドがお掃除するし、特に隠すようなものもないからだ。


「お姉ちゃんこういう恋愛物ばっかり読んでるんだよね」ルーナが言う。「冒険物の方が断然面白いのに! ねーリリちゃん!」


「おう。冒険物最高だぞ。お姉様と妹がイチャイチャするだけの話はつまらないぞ」

「ちょ、ちょっといいかしら?」


 魔女が手を伸ばし、ルーナは魔女に本を手渡した。

 魔女はパラパラとルーナの言う恋愛小説を読んだ。


(官能小説じゃないのぉぉぉぉぉぉ!! 姉妹でやりまくりぃぃぃぃ!! クリちゃんガチのシスコンでちょっとキモいわね!!)


「あ、でもこの作品のお姉様って、魔女さんに似てるかも」ルーナが言う。「髪の色とか」


「へぇ、そうなんだ」


 リリアンはすでに興味を失っていて、クリスの部屋をウロウロした。

 そして壁に立てかけられた棒鞭を発見してビクッとしてルーナに抱き付いた。


「リリちゃんビビりすぎ」


 ルーナが笑う。


「あんな凶悪な武器を部屋に置いておくなんて、姉様はさすが鬼畜だな!」

「お姉ちゃんは鬼畜可愛い天使! 鬼畜天使! ほぼ鬼畜!」


 リリアンとルーナは抱き合ったままでクルクルとダンスしながら言った。

 魔女はまだ恋愛小説という名の官能小説を読んでいた。


(なんて過激なの!! クリちゃんムッツリスケベすぎぃぃぃ!! てか、ルーナも内容知ってることに驚きよ! これルーナに読ませたのかしら!?)


 魔女は気になったので、一度小さく咳払い。


「ねぇルーナ、このエロ……じゃなかった、恋愛小説、クリスに読めって言われたの?」


「えー? 違うよー?」ルーナはニコニコしている。「暇な時に、ちょっとパラパラ読んだだけー。私は冒険小説派だから、ちゃんとは読んでないよ?」


「そ、そうなのね(そうよね、さすがのクリちゃんも、実の妹に姉妹百合小説は渡さないわよね。でも、せめて隠しておいて欲しかったわね。普通に本棚に並べていい代物じゃないわよこれ)」


「魔女さんも恋愛小説が好きなのか?」とリリアン。


「まぁ、嫌いではないわね(エロいのだーーーーい好き!! 特に14歳以下のエロいのだーーーい好き! だからルーナとリリアンだーーーい好き!!)」

「魔女お姉様って呼んで欲しいか?」


「恥ずかしいわね、それは(そんな呼ばれ方したら、このエロ本みたいなことしちゃうわよ!? リリアンが泣きながら達するまでやっちゃうわよ!? だからダメよ! さっきのルーナの不意打ちでもうかなりトロットロなんだから!! これ以上はダメ!!)」


 魔女の言葉で、ルーナとリリアンが顔を見合わせた。

 そして悪い笑みを浮かべる。


「魔女お姉様! そんなところ、触ってはダメですぅぅ! 魔女お姉様ぁぁぁ!!」

「魔女お姉様! 激しいですわぁぁ!! 魔女お姉様!! 手加減してくださいぃぃ!!」


 ルーナとリリアンはキャラクターになりきって楽しそう。

 2人は台詞の内容を深く考えずに、かなり大きな声で言った。


(理性がぁぁぁぁぁ!! 飛ぶぅぅぅぅ!! 襲っちゃうぅぅ! 襲っちゃうよぉぉぉ!! もう我慢できないぃぃぃぃ! ルーナとリリアンが悪いのよ!? わたしを挑発するから!!)


 魔女がルーナとリリアンに飛びかかろうとした時。


「「クリス様の部屋で何をしとるかぁぁぁぁ!!」」


 部屋の前で聞き耳を立てていたメイドたちが雪崩れ込んできた。

 モニカはルーナを抱き上げ、ソフィアがリリアンを抱き上げた。

 そして他のメイドたちが魔女を拘束する。

 その後、ルーナとリリアンが遊んでいただけだと説明し、魔女は拘束を解かれた。


(あ、危うく憲兵に突き出されるところだったわ!)さすがの魔女もヒヤヒヤしていた。(襲う寸前で良かったわ! 飛びかかっていたら言い訳が難しいものね!)


 魔女はホッとしたので、帰ることにした。長居は無用である。


(てゆーか、この恋愛小説もとい、姉妹百合官能小説をネタにクリちゃんをいじりましょう!! ああんっ、変な意味になっちゃったわ! クリスをからかいましょう! ふふっ、楽しみね!)


 ちなみに魔女はその本をルーナに言って借りて帰った。

 妹の方が14歳だったので、続きを読みたかったのだ。

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