第1話/アイドル

私の名前は藍田みのり(あいだ みのり)

小さい頃からアイドルに憧れ、アイドルを目指し、憧れのアイドルになった。


私の憧れる大好きなアイドルは大きな会場のステージで歌い踊り、キラキラした笑顔で大勢のファンを魅了する。


そんな、アイドルに私はなりたかった…





アイドルは一括りにアイドルと言われがちだけど、いくつかに分類される。


①大手アイドルグループ/メンバーの人数が大所帯で基本選抜制である。


②大手事務所からのアイドルグループ/少人数・メンバーごとに色分けがある。


③元アイドルがプロデュースするアイドルグループ/選抜制や格差の苦悩を知ってる故、選抜制を作らないことが多い。


④地方アイドル/東京で活動せず、地元でアイドル活動をする。


⑤地下アイドル/②の大手事務所アイドルと基本変わらない。違うとすれば…


事務所の大きさと知名度とアイドルに払われる給料。地下アイドルはバイトをしなければ生きていけない。

事務所から出るライブのステージ代なんて微々たるもので、ファンと一緒に写真を撮るチェキ代とグッズ代で稼いでいる。


そんな地下アイドルを私はやっている。アイドルをしながらバイトをし…

地下アイドルって言葉は誰が言い始めたのかな?上手い言葉すぎて笑いが出る。


地下は底辺だ【底辺のアイドル】





アイドルになりたい人は当たり前に①②③からアイドルデビューを目指す。

私もそうだった。中学生の時、初めてアイドルオーディションを受け、落ちて、それを何度も繰り返し今のグループに所属した。


①②③はオーディションの倍率が高く、私はチャンスを掴めなかった。

私はいつも負け組だ。勝者はテレビの中でいつもキラキラした笑顔で笑っている。


ねぇ、知ってる?【IDOL】の語源って偶像崇拝からきてるんだって。

偶像とは信仰の対象であり、アイドルはファンにとって神なの?って知ったとき笑った。


でも、合ってるよね。ファンはステージの下から光り輝くアイドルを崇めている。







今日も私は小さなステージの上で笑顔を振りまきながら歌い踊る。

今は地下という底辺にいるけど、下克上をし大きなステージで歌うことを夢みて。


「みんな〜、今日も張り切っていくよ〜!」


私が所属するアイドルグループCLOVERのセンター上野美香がとびきりの笑顔を振り撒きながらファンのみんなを煽る。

ファンは美香の声掛けに拳を上に突き上げ、大きな声を出し応援する。


「ほら、ほらー!みんな、もっとアゲてー」


二番人気の友永由香里がファンに近づき、煽り、みんなのボルテージを更に上げた。

ファンは由香里の言葉にアドレナリンを放出し、飛んだり、大声を出し私達を応援する。


三番手・四番手の私と梨乃は端でみんなを手で煽ったり、声掛けをする。

アイドルは常に順番が付き物で、センターが一番目立つし、二番手もセンターと一緒に歌うことが多いから目立つ。


アイドルは中でも外でも競争社会だ。上に行ったものが勝ち組で、まずはグループ内で成り上がらないとトップには立てない。



小さなステージはファンとの距離が近い分、ファンの視線がよく分かる。視線ほどものを言うってアイドルになって初めて知った。

勿論、メンバーカラーのグッズの差もキツいけど、実は視線が一番辛い。


誰にも見てもらえない…

こんなにも頑張っているのにとなるから。


ファンの視線を一番集めるのはセンターの美香と二番手の由香里であり、両端にいる私と松本梨乃はなかなか見てもらえない。

もちろん、私と梨乃にもファンはいる。センターの美香や二番手の由香里のファンに負けないように必死に応援してくれる。


だけど、私達への声援が美香や由香里のファンの声に掻き消されてしまう。動く波に押しだされ、ファンまでも端に追いやられる。


この世は順番だらけだ…


だから、アイドルも推しを応援するファンも心を強く持たないといけない。私は残酷な順番のお陰で強くなった。今は下位にいるけど負けない!必ず上に行くと誓った。


だから、私はいつも考える。どうやって注目を集めるかファンを増やすかを。


「みんな、最後の曲だよ〜!ブチ上げて行こうねー!」


美香があざといポーズをしながら、またファンを煽った。小さなライブハウスには大きな声援が鳴り響き、阿鼻叫喚に近い光景だ。


別に悪い意味で言ってる訳ではない。私もファンと同じ場所にいる。

ファンがアイドルに対して必死に何かを求めているように、私も天空に向けて必死に細い蜘蛛の糸が垂れてくるのを待っている。


底辺から抜け出したくて、天界に行きたくてずっともがいている。上に行かないと私が憧れていた景色は見れない。

私は小さい頃に見た、あの大きなステージに立ち、ファンが小さな豆粒に見える大きな会場で歌い踊りたい。


「みんなー!!!!絶対、一緒に上に行こうね!!!」


私は大きな声でアイドルとしての野望を口にする。でも、これはファンも同じ野望のはず。だから、一緒に上に上がろう。一緒に大きなステージで騒ごう。


底辺から抜け出そう!


夢は声に出さないと叶わないとアイドルの頂点に立った人が言っていた。

だから、私も叶えるために夢を声に出す。



「絶対、上に行くから!!!!」

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