第2話

 ルチリシャ・ボラゴはエニシダの飼い猫で白い長毛が銀色に光る美しい猫だった。彼女はこの日、ミチルの家に遊びに来ていた。



「アスター、あんたってばいったいなぜそんなに肉球の色がピンク色なの?うらやましいったらありゃしないよ」


 ボラゴの肉球は黒色で彼女はそれを気にしていた。


「知らないよ、お母さんかお父さんに聞いてよ」


 アスターはそんな話には付き合っていられないとばかりに窓の外ばかりを見ていた。ボラゴは肉球をぺろぺろと舐めた。


「まーだ気にしてるのミチルのこと。好きな人と今頃幸せに暮らしてるわよ」

「けど、寂しいんだよ」

 

 アスターは急に涙ぐんで下を向いた。


「泣きなさんな、男のくせに」

「うう、だって」 

 

 アスターが泣いていると、コンコンとドアに音が響いた。家政婦のロベリアだ。白髪頭をふわふわと留めている。


「あら、ボラゴちゃんも一緒なのね。はい美味しいミルクよ」

「ありがとう、ロベリアおばさん。こんなに生温かいミルクは久しぶりだよ」


 アスターは一口なめて言った。


「あらそう、よかったわ。ボラゴちゃんのも今用意するわね」


 ロベリアは慌てたように階段を下りて行った。


「私、ミルク飲み終わったら帰ろうから帰ろうかしら」

「ああ、そう」

「何よその態度、もっと寂しがりなさいよ」


 アスターは深くため息をこぼした。早く帰ってくれないかなと心の中でつぶやく。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る