第6話 瀬戸美月 彼氏を両親に紹介する ③

母親瀬戸さくらの、もうすぐご飯ができるとの呼びかけで、美月と健司は1階に戻った。


ふぅ、一気に疲れた・・・

美月は気づかれないようにため息をつく。

妹のひなたも降りてきた。

やはり疲れた顔をしている。

美月を見たひなたは、小さな声で言ってくる。

”おねえちゃん、今回の貸しは大きいわよ。覚悟しておいてね”

うなずくことで了承する美月。


1階に降りてきた健司にさくらが聞いた。

「健司さん、美月の部屋(散らかっていて)驚いたんじゃないですか?」

「いえ、(漫画が多くて)ちょっとは驚きましたが、問題ないですよ。」

”へぇ・・あの状態で問題ないって、よほど包容力があるのかしら”

さくらは、いい方向に誤解したのである。


「健司くん、ちょっとこっちに来てくれ。」

父親がリビングのパソコンのところで彼氏健司を呼ぶ。

「健司くんの車は、これなのかね」

どうやら、まだ車が気になっていたようである。

「こちらの、型の車です。」

「ほお、FRなんだ。運転面白そうだね。」

「はい、楽しいですよ。」

「馬力はどれくらいなのかな?」

「300馬力以上になります。」

「そ・・そりゃあすごいね。」

驚く、菊夫。

「そのうち、乗せてみてもらえないかね。」

「はい、喜んで。」

ニッコリと笑って快諾する健司。




美月にはよくわからない話であった。

ちょっと置いてけぼりの気分。



「ご飯できたわよ。ダイニングテーブルについて。健司さんはここに座ってください。」

「これは、美味しそうですね。」

今日の昼ごはんはちらし寿司。刺し身もふんだんに使った豪勢なものであった。

「「いただきます。」」

家族全員と健司さんが一緒に食べる食卓は新鮮である。

「このちらし寿司、本当に美味しいですね。酢飯のお酢がいい香りでまろやかですね。」

さくらは嬉しそうに言う。

「すごいわね、健司さん。それがわかるなんて。これは赤酢を使っているのよ。」

「それはすごいですね、高級な寿司屋さんで使うのは聞いたことはあるのですが。だから美味しいんですね。」

「健司さんは料理するんですか?」

「まぁ、一人暮らしですのでそれなりに料理はしますね。

 結構料理は好きなので、いろいろ作ります。」

「男性なのにすごいわね。」

「今は男性も料理や家事はする時代ですからね。」


むう・・・・


美月は、健司が自分以外の誰かと仲良くするのを見て、少し不機嫌になったのだ。めんどくさい性格である。

まぁ、その相手は自分の両親ではあるのだが。



食事が終わり、リビングに戻りお茶を入れてもらった。

両親がソファに座り、その向かいに健司と美月が座る。

「それで・・健司くんは美月と、その・・将来とか考えているのかね?」

「はい、まだ交際して間もないのですが結婚を前提に交際させていただきたいと考えています。」

まあ、お約束の挨拶儀式である。

「そうか、私としては美月がいいなら問題ないとも。」

「えぇ、これからもぜひよろしくね。」


こうして、健司は瀬戸家に正式に交際を認めてもらうことができた。


「お邪魔いたしました。」

「健司くん、また来てください。」

「はい、よろしくお願いします。」

「じゃあ、私は健司さんを送っていくね。」


健司が帰った後、美月の両親は健司の感想を述べあった。

「最初、年齢が離れててびっくりしたけど、礼儀正しくていいんじゃないか?」

「料理や家事をするなんて、美月にぴったりだわ。美月が怠けすぎないか心配になっちゃうわね。」


健司の印象は両親には好感触であったらしい。



そのころ、瀬戸家の次女のひなたは、リピングのソファで通販サイトを検索していた。

”何にしようかな。ブランド物のバッグ?それともパソコンとか?もっと高くてもいいか・・。

いっそのこと、トータルコーディネートで服を揃えるとか”

もちろん、美月にたかるつもりである。

そうとは知らない美月は今日も健司の家までついていったのであった。



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