7 正式な冒険者になりました

タイチョーに示された選択肢の内、俺はダンジョンに行くことにした。

ダンジョンに何をしに行くのか詳しく聞いてみると、2階に突入するのではなく冒険者カードを取りに行くだけらしい。


前回の帰り際に俺が喚いたので、一人で動けるようになったタイミングで計画してくれたらしい。

なんとなくタイチョーの事が分かってきたけど、この人は事前に説明すると考えてないと極端に話が分かりづらくなる……

L〇NEの話が異常に分かり難いのも納得だ。


ちなみに俺一人ではなく、ユウと平課長もついでになので取りに行きたいとなったので5人で取りに行くことになった。

ユウは冒険者カードの話を聞いてから、強く興味持ってたからちょうどいい機会だと思ったんだろう。

俺以外にも冒険者カードを持っていた方が相談する際の深さが変わるので、俺としても丁度良い。


階段付近には他の隊員が詰めていて、念のため二人の隊員が随行してくれているので前回と比べて足取り軽く会話を交えてダンジョンに向かっている。


「「へ~、あの会社の社長なんですか」」


自衛隊でも地元社長という肩書は興味を引くらしくアレコレ聞いている。

身近過ぎて実感なかったけど、普通の人からはやはり凄く見えるらしい。

ユウ達が辞めるという話が出ているので、会社のコア事業のサブカル関連はどうなるのかタツが詰め寄っていた。

ユウは空気を読んでぼかしていたが、正直に丸投げしたと言ったら地下2階に放り込まれていたりするんだろうか……


「あれ? ライト付けたんですか?」

「取り合えずの措置だけど、安全と判断できた1階は徐々にインフラ部分もやっているよ」


L〇NEで普通に話しているせいか、タツも最初よりかなり砕けた話し方をしてる。

電気が来てないので携帯型での対応だが、早く電気も通したいらしい。

災害時にも駆り出される職業柄仮設での環境整備は得意なので日ごとに良くなっていくだろう。

暖房も備え付けられる日も来るのかもしれない。


最終的に生活インフラが通るようになったら、1階は町の様相になるのではないだろうか。

ダンジョン内に足を踏み入れても一定間隔でライトが置かれている。

流石に携帯型では光源が足りずに満足いく明るさとは言えないけれども、問題なく行動を起こすくらいにはなっている。

実際にメモを取ろうとするにはツライ光量になるが、不便とは思わない。

地方とはいえ至る所に満足な光量がある現代がいかに凄い事なのか感じられずにはいられない。



ちなみに今回のダンジョン内行軍の並び順はこんな感じ。

           [俺]

         [タツ][タマ]

         [ユウ][平課長]


おかしくね!?

何で自衛隊の前に俺なの!?

じゃんけんとかじゃなくて、民主的に多数決にしたら満場一致(本人除く)で先頭が決まった。

冒険者カード付きの防衛職業が先に行って欲しいと思うのが普通の感情じゃないの?


一応抗議の声を上げてみるも。


「「俺(私)たち、ソロでクマ倒せないし!」」

「外のクマも倒せるんだから先頭が妥当だろ」


と返ってきた。

ていうか、ユウはなんでそっちの援護射撃するんだ……

近い将来の同僚を援護しろよ!


外でもクマを倒した発言で更にひと悶着あったが、仕方なしに冒険者カード部屋まで歩いていく。


当初の想定通り遭遇戦にはならなかった。

こんなことなら抗議せずに、素直に歩いていけば余計な情報が広まらずに済んだと後悔する。


8畳くらいの狭い部屋だが、部屋の中心に台座が置かれており台座の上に球状の光の塊がある。


「あの光に手を開いた状態で入れて、光の中で手を握ると冒険者カードが手に入る」


ツッコミどころはいくつかあるけれど、ようやく念願の冒険者カードが手に入る!

湧きたつ心を抑えられるわけがない!


未知の物に手を入れる若干の不安と大きな期待を胸に抱きながら光の中に少しづつ手を伸ばす。

光に指が触れるとグニャンというような感触が伝わり手を引っ込めてしまいそうになるが、安全が確認されている行為なので体の反射反応に従わずに指を進めていく。

触れる前は光が出ているだけだと思っていたけれど、指が触れた時の感触からはただの光ではなく、質量を感じる。

水というよりもゼリーのような物に指を突っ込んだような感じだろうか。

実際はともかく質量と共に粘りつくような感触を指先が脳に伝えてくる。

指を押し進めて手首まで光の中に入ったところで手を閉じると固い金属製のようなものを掴んだ感触を感じるので、そのまま手を光から引き抜く。


「なんか、不思議な感触だった」


そう言ってユウと交代するとしげしげと自分のカードを見つめる。

あの時タツは確か真ん中くらいをタッチしていたような……

最初のダンジョン突入後の事を思い出しながら指先を冒険者カードに触れるとあの時と同じようにホログラフが立ち上がってくる。


一体どこで取得されるのかしっかりと俺の名前が記述されている。

ステータスも色々と表記されているが、この数字の大小の感覚がよく分からない。

他の人と見比べてみてようやく意味が分かってくるものだ。


そう思ってタッチパネルの操作感覚で下にスクロールしていくとスキルが

【武器適正(徒手)】【特攻(クマ)】【構造把握(人間)】【構造把握(クマ)】【急所突】【一点集中】【環境把握】【精神攻撃耐性(小)】【強靭な肉体】


………………ナンカオオクナイカ?


自衛隊の二人と新たに冒険者カードを取得した二人に確認をしてみるも、多くても5個くらいらしい。

きっとサンプルが少ないだけなんだろうと自分に言い聞かせる。


「一番下に【クラスチェンジ】という項目が出てるはずなのでタッチして候補を見せて欲しい」


タツに言われるがまま一番下までスクロールすると、点滅している表示でクラスチェンジとあったのでタッチをすると3つ表示がされるので見せる。

タツは光の近くまで行き、メモ帳にメモっていく。


「選択は強制しないので、自分の望むものを選択で大丈夫。 ただ、後で再選択可能か分からないので選択は慎重に行って」


そう言われたので、俺は職業についている説明を読むことにする。



武闘家: 強靭な肉体と瞬発力が強み。インファイトでは圧倒的な強さを見せる。


剣士: 刀剣類を用いた攻撃を得意とする。技の習熟により相手の武器を破壊することもでき優位に立てる。


学者: 多くの知識を有し分析が得意。知識活用により様々場面での発見も行うことができる。専門職ほどではないが魔法も扱う。


念のために2度読み返すと、俺の心は決まる。

職業選択によって、この後どんな新しい事が起こるのか期待に胸を膨らませながら指を望んだ職業に載せる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る