49  嵐に浚われた男


Kとのみ名乗るおとこがいた

足の下の、10センチ四方のみ

そこにKは立っている

立ったまま眠り

一本のペン

一枚の紙切れ

夢を綴った

そこにのみ意味があるかのように


不本意にもKは結核で死んだ

汚濁まみれだ



K2もいる

ピンクのスリッパを履いている

スリッパの動く地域を自由に動く

清潔な2本の手は

可能な限り世界に触れない

偶然に触れなば

清潔化する


美しく

病原菌に毒されていない

それのみが生存を許される

必要最小限に生き

それ以上のものには縁がない


一日生きるたびに

世界は縮み

次のステップを踏み出せず

空気からも逃げたかった

一日生きるごとに

小さく縮んだ



ある日春の嵐が

窓の隙間から吹き込んだ


K2はもう見えない程だ

薄っぺらな1センチの紙切れ


心の中は空っぽ

気配だけが嵐に運ばれた


純白の魂として

汚れなき概念として

彼の夢の中で

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