幸せな星

 一隻の宇宙船が、新惑星を見つけるために広大な宇宙を探索していた。そして今、宇宙船につけられた計器は、一年ぶりに新惑星を見つけたことを知らせた。

 それを見た乗組員はすぐさま隊長に伝える。

「隊長。新惑星を発見しました」

「やっとか。生き物はいるか」

「はい。しかも文明を持っているようです」

「それはよかった。前に見つけた星は、全て氷で覆われた冷たい星だった。寒すぎて生き物が一匹もいなかったな。つまらない星だった」

「そうでしたね。今回は何か発見があればいいんですが」

 そんな会話をしながら、宇宙船はゆっくりとその星へと着陸した。着陸した場所は緑豊かな草原だった。遠くには透き通った川が流れ、太陽が眩しかった。

 しばらくすると、宇宙船を見つけたその星の住人が宇宙船の周りに集まってきた。その誰もが、朗らかな顔をしていた。

「どうやら敵意はないようです」

「油断はできないぞ。こういうやつらに限って本当は好戦的ということも多い。注意しろ」

「わかりました」

 そうして、乗組員は武装をしたまま宇宙船から出た。しかし、すぐにその必要がないことがわかる。この星の住人は、本当に朗らかだったのだ。住人全員が幸せそのもので、不満が少しもないようだった。彼らは乗組員を手厚くもてなしてくれた。

 一週間ほどたち、お互いに親睦もかなり深まったころ。食事の時間に翻訳機を介してこんなことを伝えようとした。

「あなたたちの星は素晴らしいですよ。文明がしっかり発達しているのに、争い事がなく、皆が幸せだ。どうしてなんですか」

 すると、翻訳機はエラーを表示した。翻訳できない言葉があったらしい。

「隊長、『素晴らしい』と『幸せ』が翻訳不能と出ています」

「おかしいな。まあいい、別の言い方をする。あなたたちはみんなが満たされた気持ちでいる。みんなが成功者のようだ。理由は思い当たりますか」

 すると、また翻訳機はエラーを表示した。

 その後も、何度も言葉を変えたが、翻訳機はエラーを出し続けた。

 やがて、ひとりの乗組員が言った。

「もしかして、これこそ彼らの幸せの理由なのではありませんか。彼らの言語には幸せとか、成功とか、そんな意味の言葉が存在しないのです。だから、皆幸せなんじゃないでしょうか」

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