第18話 異常

 かばんさんのところに住まうようになってから2週間ほどが経った。この日々にも慣れ始めたころだった。


 最近妙に認識が狂ってきている。投影されているだけの偽物とわかっているセルリアンが本物と思えてくるのだ。これは1週間ほど前からだ。


 それにその日にはおかしなことが起きている。しかもあまり覚えていないんだ。


 それは俺がいつものように5時くらいに研究所を出てかばんさんの家に戻るときのことだった。


 帰り道を歩いていると突然口に布を当てられてそのまま気を失ったんだ。気だ付いたら同じ場所に倒れていた。


 30分ほどしか経っていなかったからそんなに気にしなかったんだ。


 その間に何かされたのだろうか。


 それにこの症状、すこし強くなってきている。経った今俺は目の前のラッキーが投影しているセルリアンになぜか怒りを感じて意識を失いそうになった。


 明らかにおかしい。でもむしろこれは好機だ。怒りにのまれないようにも訓練できる。


 野生解放の使い方もだんだんわかってきたんだ。頑張らないと。


 意識を集中してラッキーが投影しているセルリアンを見る。


 …ダメだ、やっぱりなぜか怒りが出てくる。どうしてだろうか。


 まあ赤黒いサンドスターも普通に使う分にはいつものサンドスターと変わらないからいいんだがな。


 そうして俺は弾丸を作って銃に込める。


 2週間前に比べてだいぶ当たるようになった。よく狙って撃てば全弾当たるくらいには成長した。だがすばやく標的を行き来するような射撃はまだ当たらない。


 ほかにはそうだな。1秒くらいなら足場を作れるようになったことだろうか。でもまだサンドスターを大量に使ってしまうからあまりやってないがこっちも練習しないとな…。


 どうすれば大量のサンドスターを使わずに足場を作れるだろうか。


 足場にするタイミングだけ作り出せばいいのではないか?


「5時ニナッタヨ マダ続ケルカイ?」


 もうそんな時間か。試してみるのは明日にするかな。


 余った弾を箱の中に入れて俺は部屋を出る。あんなに何もなかった部屋がいまじゃ結構物が増えた。カコさんに用意してもらったものが数個あったりする。


 セルリアンの石くらいのサイズのサンドスター吸収パネルや拳銃のホルダー、さらには他の銃の資料までくれた。


 あのパネルどういう仕組みしてるんだろうか。弾が当たると電信が鳴って後ろの小型タンクにサンドスターが溜まる。これは俺がサンドスター欠乏症になったときに使えるらしい。


 貰った資料に関してはいろんな種類の銃が記載されている。構造からメンテナンスの仕方まで細かく書かれている。どこにこんな資料があったのだろうか…。


 この中から気に入ったものを作ってみたら?とは言われたがまだこんなに複雑なものは作れない。物を作り出す練習もしなければな。


 梯子を登ってハッチを開ける。


 …眩しい、暗いところにいたのはほんの一瞬なのに。今までこんなことは無かった。それに視界がぼやける、いつもの景色のはずなのに輪郭がぼやけていて何があるのか分からない。


 ようやくピントが合ってきた。梯子を登り切ってハッチを閉め、鍵をかけると同時に部屋のドアが開く。


「おや?もう5時ですか…、最近時間感覚が狂ってきていますね…。研究のしすぎでしょうか。」


 …ミライさんか、随分疲れてるみたいだな。


「休憩も大事ですよミライさん。ではお先に。」


 ミライさんと入れ替わるように部屋を後にする。いつものようにそのまま外に出る。


 あれ以来周りを警戒しながら歩いているんだが視線や気配は感じない。これでは相手がどんな勢力かもわからないがこれ以上関知してこないなら気にする必要はないだろうか。


 そんなことを考えているうちにかばんさんの家に着く。いつものように玄関のドアを開けてリビングに行くといつものように歓迎される。


「おかえりグンちゃん!今日こそお話聞かせてよ!」


 この歓迎は数日前からされだした。サーバルちゃんだけでなくアライさんやアオにもだ。別に隠していたわけでもないしこの際全員集めて話してしまうか。


「分かった。じゃあサーバルちゃんはアライさんたちを呼んできて。俺はアオたちを呼んでくるから。」

「分かった!呼んでくるね!」


 相変わらず元気がいいなサーバルちゃんは。


 そう思いつつ俺たちが借りている部屋のドアを開ける。


「おかえりグン。やっと話してくれるんだね。」


 聞こえていたのか、アオは耳もいいな。


「多分みんなリビングで待ってるだろうからそっちに行こう。」


 アオとリンが立ち上がる、それを確認して部屋から出る。みんなの話し声が聞こえてくる。もう3人ともいるのだろうか。


 リビングのドアを開くとそこには思っていた通りすでに3人揃っていた。


 テーブルを囲むように俺たちも椅子に座る。


「それじゃあ話すよ。」


 とは言ったものの何を話せばいいのか分からない。何を話そうか。


「パークの外ってどんな感じだったの?」


 サーバルちゃんがそう問いかけてくる。悩んだ末に俺は答える。


「何もない。」

「え?」


 希望を打ち砕かれたような声でサーバルちゃんはそう発した。


「グン、それってどういうことなんだい?」


 あまり答えたくはない質問だった。でも話し始めた以上また引き延ばすということもできないだろう。


「これは俺がフレンズであるってことにもつながるんだけど…」


 言葉が止まる、体がその事実を発することを拒んでいる。受け入れたはずなのに。もしくはみんなに知られたときに嫌われてしまうのではないかという恐怖か。


「俺がそうしたんだ、フレンズの力で。」


 溢れ返しそうな感情を殺して俺は真実を語る。


「俺が絶滅させたんだ…ヒトを…」


 こんなのどう思われても文句は言えない。恐怖を覚えられようが軽蔑されようが俺にはそれを受け入れることしかできない。俺が犯した罪には変わりないから。


 それでも俺は生きていくと決めたんだ。この家から出て行けと言われても俺は拒みはしない。


 まずい、俺の中の感情が自分を卑下しだしている。制御が効かない、このままでは意識を飲まれてしまう。風邪に当たって頭を冷やすしかなさそうだ。そのまま帰らずにどこかに行くのもありか?


「ちょっと風に当たってくる。」

「待ってグン。」


 アオが俺を呼び止めようとする。それを無視して足早に外に出る。それから走ってどこか遠くに、どこでもいい。ここじゃない誰もいないところに。


……


 しばらく走ってきた。おかげで感情は落ち着いたみたいだ。


 人気のない森。ここならだれにも見つからずに生きていけそうだ。


 疲れたな。


 その辺の木に寄りかかる、空はもう暗くなって星がいくつか見えるようになっていた。


 今日はここで一休みしていこうか。


 と思った矢先だった。


「話の途中でどこかに行っちゃうなんて困るよー。」

「そうよ!ちゃんと最後まで話しなさいよ!」


 まさか追いかけてきたのか?俺はみんなのほうを向いて言葉を発する。


「俺は何人もの命を奪ったんだ。かばんさんが探し続けたヒトを殺したんだ。なのになぜ俺に構うんだ?どうして俺を嫌いにならないんだ?」


 それを聞いたみんなの中から一人が俺のほうに近づいてくる。暗くてよく見えないが多分アオだ。


 アオが俺の前で足を止める。


 次の瞬間俺の顔が左を向くと同時に頬に痛みが走る。前を向くとアオが喋りだす。


「私は前に言ったはずだよ。”何があっても私はグンを嫌いにならない”って。それに私たちはのけものなんて作らない。」


 それに続いてアライさんもしゃべりだす。


「そうなのだ!たとえどんな失敗をしても一緒に助け合うのだ!人に迷惑をかけたなら一緒に謝るのだ!それが」

「フレンズなのさー。」

「あー!アライさんが言いたかったのだ~!!」


 みずべちほーで聞いた曲にもそんな歌詞があったな。「けものはいてものけものはいない」だっけ。


 ほんとにその通りだ。みんなこんな俺でも受け入れてくれる。


「さ、帰ろう。」


 アオが手を差し伸べてくる。


「うん。ありがとう、こんな俺でごめんね。」


 差し伸べられたその手を取って繋ぎ、家のほうにみんなで歩き出す。


 その手は暖かく、優しいものだった。前にも感じた感情がまた湧いてくる。


 みんなと話しながら歩く帰り道は、何もない森がまた来たいと思えるほど楽しい物だった。


「ねえグン?」


 みんなが話している中アオが話しかけてた。


「なに?」


 アオのほうを見てそう答えると、アオは口に手を当てて笑う。


「フフッ、なんでもない。」


 この時の俺は、アオに見惚れていた気がする。


……


「ただいまなのだ!」

「あ、みんなおかえり。どこ行ってたの?」


 俺たちが外に出ていた間に帰ってきていたかばんさんが迎えてくれる。


「みんなでちょっと散歩さ。」


 アオがそう答える。料理をしているかばんさんを覗くともうすぐ出来上がりそうだ。今日はもうお話はできないかもな。


「お話はまた明日だね。ごめんね、みんな。」

「いいさいいさ、急かした私たちも悪かったよ。」


 こう言ってはいるがアオもそういうが相当楽しみにしていたはずだ。明日は研究所に行くのを休もうかな。試したかった事は明後日でいいだろう。


 それからすぐにかばんさんが料理を運んでくる。


 この感じにも慣れてきたはずなんだが何かおかしい。楽しいはずなのに何も感じられない。帰ってくるときもそうだったが生まれてくるサンドスターが少ない。


「ごちそうさま。」

「お粗末様です。」


 いつものようにご飯を食べ終えた俺は足早に部屋に戻る。


 絵の練習で気を紛らわそう、その世界に入るんだ。スケッチブックを開き、ペンを取り出して絵の練習を始める。


 しばらくしてアオが部屋に戻ってくる。そしてすぐにこんなことを言ってくる。


「ねえグン、今日は一緒に寝ないかい?」


 今までは何とも思わなかったその言葉が妙に脳に残る。そして湧き出るこの不思議な感情。もう少しで答えにたどり着くはずなんだけどやはりたどり着けない。


「グン?」

「あ、ごめんごめん。いいよ、一緒に寝よう。」


 そして俺はまた絵の練習を始める、でも集中できない。この感情が俺を別の方向に動かしていく。なんなんだこの感情は、はっきりしないせいで無性にもやもやする。


 ダメだ、まったく集中できない。今何時だろうか。


 部屋の壁に掛けられている時計に目を向ける。視界の中に黄色いものが見えた。リンもいつの間にか戻ってきてたみたいだ。


 時計の短針は9時を指している。少し早いがもう寝てもいいかもしれない。


「俺もう寝るね、おやすみ。」

「そうなのかい?じゃあ私も寝るよ。」


 ベットに入ろうとするとアオもそれに続いてベッドに入ってくる。


 いつも隣でリンが寝ていたから違和感は無いがなんだかちょっとだけいい気分がする。


 懐かしい、と言っても2週間ほどしか期間は空いていないが前はこうして寝ていたな。


「おやすみなさい先生、グン。」


 その言葉を聞いた俺はそのまま眠る。


_____


 いつもとは違う感覚に目を開く。そこに広がっていたのは一面の草原。月の光に照らされたその広間はひどく荒れていた。ところどころ抉られて土がむき出しになっている。


 なぜこんな状態になっているんだ?


 そしてなんで俺は


 アオに銃を向けているんだ?


 俺の体は言うことを聞かない。トリガーにかけられた指が離れることは無かった。だがトリガーが引かれることもなかった。指が震えている。


 指に力が籠められるのを感じる。ここままじゃアオに発砲してしまう。それだけは絶対にダメだ。


 しかし込められた力がなくなることは無かった。


 こんなものは見ていられない。目を閉じてその場面を見ないようにする。


 トリガーが引かれる。


 その瞬間破裂音が脳内に響き渡る。


「うわぁ!」


 破裂音で飛び上がる。本当に撃ってしまうとは。


 夢…?久しぶりに見た。


 でもこれはよろしくない状況だ。これまでの経験上夢で見たものは必ず現実でも起きている。


 つまりこの先でいつか俺はアオに銃を向けてあろうことかそれを撃つということだ。


 そんなことはあってはならない。絶対にだ、でもどうしてそんな状況に?


 あらゆる想定をしてみるが思い当たるものが一つもない。


 まさか…俺が暴走してそうなるのだろうか?でもそんなことあるはずがない。仮に俺が何かの感情に呑まれたとしてもアオにそんな感情を抱くとは思えない。


 でもどうだろうか、最近体の様子もおかしいのだ。カコさんはサンドスターに異常はないと言っていたが何かある気がする。


 今日は行かない予定だったが一度もっと精密な検査を受けてみる必要があるかもしれない。


「グン!」


 そう呼ばれて意識が周りに向く。


「大丈夫?ひどくうなされてたし、今も考え事とかしてたんじゃないかい?」


 アオがこちらの顔を覗き込んでそう聞いてくる。そのオッドアイはいつもと変わらず綺麗で、かわいくて、ずっと一緒にいたくなる。


 そんなアオに銃を向けていた未来の自分が信じられない。守るために使うと決めた力を最悪な形で使っている。本当にそんなことが起きるのか。


 みんなの身の安全のためにもしばらく帰らないほうがいいだろうか。


 でもそれだと俺の身に何かあって無意識のうちに誰かを襲うことになってしまうだろうか。でもあの地下室ならそんなことは起きないか。


 本当にそうか?意識を失った俺は意識がある俺より高度なことをやってのけていた。おそらく本能で動いていたのだろう。万が一俺がみんなを襲うことを本能でしてしまうと鍵なんて普通に開けそうだ。


 むしろ破壊してしまうかもしれない。クソ、どうしたらみんなを襲わずに済むんだ?


 俺の体に何が起きているのか分からない以上考えようもないな。


「あーごめん。ちょっと嫌な夢を見ただけさ、大丈夫だよ。」


 そうとなれば急ぎでカコさんのところに向かう必要がある。いつそうなってしまうのか分からないからな。


 急ぎでベッドから出て腰にポーチを着け、そのまま玄関から出ようとするとリビングにいたサーバルちゃんこんなことを言われる。


「おはようグンちゃん!朝ご飯食べないの?」

「今はそれどころじゃないんだ、行ってくるね。」


 そう言い残して家を出る。そのまま走って研究所まで向かう。


……


「空いてるわよ。」


 ノックする前にそう言われた。走ってきたからだろうか。


「失礼します。」


 入っていいとのことなので遠慮なく入らせてもらう。


「今日はずいぶん早いじゃない。何かあったの?」


 そう言いながらいつもの検査の準備を進めるているカコさんにお願いする。


「俺の事もっと詳しく検査してほしいんです。」


 カコさんはしばらく考え込む。無理もない、よくよく考えたら急にこんなことを頼まれてもできることは少ないだろう。


 そもそもこの研究所にそこまで詳しく検査できるものがあるのかどうかすら怪しい。


「いいわよ。でもここじゃできないし色々手配しないといけないから2,3時間待ってもらうことになるけどいいかしら?」

「ありがとうございます。」


 以外にも嬉しい答えが返ってきた。


「じゃあ準備が終わり次第そのラッキーに連絡するから自由にしててちょうだい。」


 そう言ってカコさんは部屋を後にしていく。


 にしても2,3時間か…。せっかく来たしそれまでいつもの部屋で特訓でもしてようかな。


 そういうわけで地下室に続く部屋に来たがいつもいるミライさんがいない。カコさんに連れられて行ったのだろうか。


 俺のために申し訳ないな。


 そんなことを考えながら部屋に入る。昨日できなかったことを試してみるか。


「ラッキー。」


 その名を呼んだ時俺の中で何かが次にしようと思った発言を遮った。


「ドウシタノカナ。」


 嫌な夢を見たからかもしれない、このままいつもみたいにセルリアンを投影させると俺がどうにかなってしまう気がする。


 でもなぜかそうなってしまえと思う気持ちもある。どうしてだろうか、そうなってしまうと俺はみんなを傷つけてしまう。


 俺の意思が保たれているうちはみんなを傷つけたくない。


「いや、何でもない。」


 この原因が分かるまではサンドスターをむやみに使わないほうがいいのかもしれない。


 部屋に横たわりしばらくぼーっとしていたらこんなことを考え出していた。


 はぁ、なんでこうなったのかな。何をされたかは知らないが犯人を見つけたらそいつを


 コロシテヤル


 はっとして体を起こす。今何を考えた?無意識にそんなことを考えたということか?


 その感情は俺の意思とは関係なく湧き出た。自分が怖い、夢で見たものが本当に起きるような気配を体が感じている。


 そうなる前にどこか逃げたほうがいいか?


 いやだめだ。俺はすぐ逃げ出そうとしてしまう。みんなに恐れられることを怖がってる。みんなはそんなことないというがその言葉がまだ信じられずにいる。


 彼女らを信じられない自分が許せない。


 その時俺の手は無意識にナイフに伸びていた。


 クソ、何を考えても悪いほうに行ってしまう。いったいなんなんだよ…。


 カコさんからの連絡が来るまで何も考えずにいよう。もうそうするしかない。


 また体を寝かせて極力何も考えないようにする。


……


「カコハカセカラ メッセージヲ 受信シタヨ。再生スル?」

「あぁ…もうそんなに経ったか。再生してくれ。」


 体を起こして緑色に光るラッキーを顔の前に持ってくるとラッキーは音声を再生し始めた。


「準備ができたわ。研究所の前で待ってるから来てちょうだい。」


 ラッキーの光が消える。


「メンセージハ コレデ 終ワリダヨ。」

「あぁ、ありがとう。」


 立ち上がって部屋の外に出る。ハッチに鍵を閉め、廊下を歩いて研究所から出るとそこにはメッセージ通りカコさんがいた。


「あぁ、来たわね。じゃあ行くわよ。」

「はい。」


 そう言って歩き出したカコさんに俺はついていく。どこに行くとは聞かされていないがおそらく俺がここに最初に連れてこられた病院だろう。


「ここよ。」


 一瞬だけ振り向いてカコさんが言ってくる。


 やはりそうだった。前は帰る時だったからあまり分からなかったが正面にしてみてみるとかなり大きい建物だな。


 カコさんはそのまま歩みを止めずに中に入っていくので置いていかれないようについていく。


 奥まで進んでくるとある一室に入った。


 そこには何やら機械を操作しているミライさんとかばんさんがいた。


「あ、来たんですね。準備はできてますよ、さあこちらへ。」


 ミライさんが指し示す台に寝ころぶと何やら装置が俺に取り付けられ始める。


「そのままじっとしててくださいね。」


 何が起きるんだ。まさか電流とか流れたりしないよな?


 うぅ…何をされるのか事前に聞いておけばよかった。


「もういいですよ。」


 もう終わったのか?意外と早いんだな…。


「今結果を刷ってくるから残りもよろしくね。」

「分かりました。」


 俺に取り付けられた装置が外されていく。その作業をしながらかばんさんが話しかけてくる。


「異常が無いといいですね。」

「…」


 答えようしたが答えられなかった。異常がないとは考えられにくいからだ。異常が無いと願いたいんだが…。


 その時ドアが勢いよく開いた。柄にもなくカコさんが急いで来たみたいだ。ということは何か異常があったのだろう。だがあのカコさんをここまで慌てさせる何てどんな異常が見つかったんだ?


 カコさんは息を整えた後に真剣な顔つきで語りだした。


「落ち着いて聞いて頂戴ね。あなたの体から―」



「セルリウムが検出されたわ。」

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