俺と彼女の事件(3)

 俺は寝ないで考え続けた。


 ——答えがある一つにしか辿たどりつかないからだ。


 俺が彼氏の立場からいなくなる。それが俺の答え。いじめの原因が俺なのだから。俺が彼氏の立場である限り、このいじめが続くことになる。


 昨日、累との会話で原因分かってからこの解決策から頭が離れていかないのだ。


「もう……どうすれば……」


 俺はベットの中で唸り続けた。


 だが、東阪もこれ以上に苦しみ続けているのだ。今頃寝れずに東阪も唸っているのだろうか……。


 なんでこんな事になるんだ……。付き合う事になんの罪があるのか。学校という刑務所にしばられ、校則という法律に自由を奪われる。クラスという牢獄ろうごくに身を投じる。それに勉強という罪を受ける。


 なのに——いじめという法律違反には目を背けられる。


 これ以上、この法律から逃げなければならない。学校は地獄だ。


 ——早く決断をしなければならない。 


 

 この時の俺の判断は間違っていたのだと思う。

 

 だが、これは断言できない。それは——


***


 次の日の東阪は学校を休んでいた。


 俺は彼女にメッセージを短文で送った。『明日2人で学校休もう』と。彼女からの返信は昼まで帰ってこなかった。昼の返信では『うん、いいよ!』と短い返事だった。


 この返事は会えて嬉しい時に使うビックリマークだなとしんみりと思った。


「智也顔つき悪くない?」

「あまり寝てないんだ」


 累が休み時間にボーッとしている俺に話しかけてきた。


 授業も頭に入ってこず、一日寝ないだけでかなり疲労が溜まるのだと分かった。肩も少し凝っており、腰が重い。うなっていたせいか……


「考えことね、あまり深く考えるのも得策じゃないよ。葛藤する事になるだけ」

「分かっているよ、もう答えはでたんだ」


 俺は今すぐにでも行動したいが、おそらく東阪は耐えられなく学校を休んで傷を癒していると思う。


 そんな時に隣に入れない俺は本当に情けない。うまく対応もできず、東阪を苦しめてしまった。——俺は本当に別れたほうがいいのかもしれない。


 こんな彼氏ダメだ。東阪にはもっといいやつがいる。


 そういう思いが頭にすんなりとスムーズに入っていく。


「聞いていい?」

「別れようと思う」


 累に何か言われると思ったが深刻そうな顔つきでいて、なにも言ってくることはなかった。

 

 俺の顔の青白さを見たからか、寝ずに考えていたことを知ってなのか分からないが、この場面で黙っていてくれる事に少しホッとしたのは何故なぜだろうか。


「明日学校休んで2人で話をする」

「そうなんだね……」

「ああ」


 そう言い、俺らは離れていった。

 

 その後の学校も集中できず、夜はあまり寝れなかった。


 

 次の日——


 朝になり目が覚めると、カーテン越しから眩しい太陽がこちらを射抜いている。おもわず目をこする。


 時間を確認しようとスマホを見ると、東阪からメッセージがある事に気づく。『おはよう!』というメッセージ。俺はこれも最後なのかなと悲しく思いながら、眩しい光で画面が見えにくい中『おはよう』と丁寧に打った。


 俺らは昼の1時に東阪の家でという事になった。


 昼が近づき身支度みしたくを整え、東阪の家に向かう。


「よっ」

「やっほ」


 お互い軽い返事を交わす。


 東阪の顔色はとてもいじめにあった時の顔ではなかった。化粧もしていて、髪も艶やかでとてもキレイである。


「お邪魔します」

「誰もいないよ?」

「まあ言わないよりかはいいだろ」


 そう言うと、東阪は微笑みこちらを向く。


 ——無言で向けられる笑顔ほど可愛いものはない、そう思った。


 俺らはベッドに座って、腿の上に東阪が頭をあずける形になったり、面白い動画の共有をしたりと普通のカップルがするような事をした。 


 キスも自然にして、やる雰囲気にもなった。


 俺は心が痛んだ。一緒にいると自然と楽しんでしまう。いや、まず一緒にいるこの空間が幸せなのだ。


 だが、これは俺に限っての話。東阪は俺がいる限り苦しい状況は終わらない。


 外に夕焼けが見えてくると俺は切り出した。


「東阪、話をしたいんだが……」

「ん?」


 彼女は首を右にかたむける。


「俺たち、別れよう」

「え…………」


 俺は理由を言わなかった。いじめのことを掘り出したら俺は最低だ。今の俺も最低なのかもしれない。この判断はあっているのか……


「ごめん」

「やだ……、いやだよ……‼︎」

「ごめん……」

「なんで? なんでそんなこと言うの」

「いや……」


 その疑問の答えをうまく返せなかった。


「……帰るね」

「待ってよ!」


 彼女の涙が頬を渡りゆっくり落ちていく。もっと傷つけずに言えたのかもしれないと思った。


 そんな時——


「ただいま〜」


 東阪のお母さんの声が玄関の方から聞こえた。俺たちは途中でリビングにきてゆったりとしていたため、いいタイミングで俺は帰ろうと思った。


 お母さんにはお邪魔しましたと挨拶をし、東阪を後に外に出ていく。


 その時、後ろからは大きな泣き声とお母さんの『みな……』と言う声が深く耳の中に入っていった。

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