第3話 あくまで食後の運動

 駆け出した真希が歩行する亀の左前足を槍で払う。

 払えなければ踏み潰されて無残な死体が出来上がるだけである。


 ガキィンッと槍と足のぶつかる音が周囲に響く。

 少女の膂力ではありえない結末として、現に亀の左前足は槍に弾かれ再び宙に浮いた。


 「よっしゃーいくぜー。」

 夏希は亀の右前足の至るところにある窪みを利用して、関節部分を大剣でする。



 「相変わらず出鱈目な使い方。」


 「亀の足をパリィする真希も出鱈目だけどなー。」


 「当たらなければどうということもないと誰かが言ってた。」


 関節を強打された事で亀の右前足は痺れている。


 「連打連打ー」


 同じ個所を何度も何度もすると亀は右前の方が段々と下がっていく。


 人間で言えばファニーボーンに打撃を加えられたらジーンと痺れてしまうようなものだ。

 そこに何度も強打されれば最終的な関節部の破壊へと至る。


 「じゃぁ私は左をねちねちといきますかね。」


 両手で槍を持ち素早く何度も突く。

 一見地味な攻撃であるが、狙った数点を的確に突く真希の正確さは喰らう方としてはたまったものではない。


 亀は前進しようにも進まない。

 進まないどころか動く事が出来ない。


 亀は全身が硬いはずなのに、2人にとってはそこら辺のオークに毛が生えた程度にしか感じられないのだろう。


 「いくぜー部位破壊ー」


 パキィィンと音がして亀の右前足の関節部分と左前足の土台部分が砕けた。

 当然亀は身体を支えきれず、前のめりに倒れ……


 「あ、ちょっとタンマ、こっちに倒れるなー」


 破壊部分が高いのだからそちらに向かってバランスを崩すのは自然の摂理。

 夏希側へ倒れるのは至極当然である。


 「ちょ、ちょー」

 その瞬間誰かに抱えられてその場から離れる感覚を夏希は味わう。


 「あ、わりぃ。助かった。」


 救出したのは真希である。


 「回避槍は素早さと器用さが大事。脳筋より早いのは当たり前。」


 

 亀から距離を置いて一旦離れる。

 「じゃ、可哀想だしシメるよ。」


 二人は走り出し再び分かれてもがく亀の窪みを利用し頭よりも上まで翔ける。


 「ちゃーしゅーめーん」


 夏希は重力を利用し大剣を首に向かって振り下ろし。

 真希は頭と首の間の僅かな隙間に向かって突きを放つ。


 首から突き刺さった槍はそのまま脳まで達し、首に放たれた大剣はそのまま首を切断する。


 結果……


 血と脳漿を浴びた美少女2人の出来上がりだった。



 「あ、薬草が……」

 真希が右手を下に下ろすと大きな壷が現れた。

 その壷に噴き出る血を収納していく。


 その数5つ。

 血の出が弱くなった所で氷の魔法で傷口を塞いだ。

 


 「やっべー、血生臭ぇ。真希、水も頼む。」


 2人の頭上から水が降り注ぎ身体に付着した血と脳漿を洗い流していく。


 「あぁぁ、ぱんつの中までびしょびしょだよぉ。」


 あれだけの血と脳漿を洗い流すだけの水だ、全身ずぶ濡れになってないとおかしい。

 それでも衣服に付着した血の赤色は、完全に拭いきれず染みになっている。

  

 「真希、あんたが自分でやったんでしょーが。」



 壷は再びどこかの空間へと消えていた。


 「さて、街からギルド関係者か騎士団関係者が来るのを待ちますか。流石に亀をしまって街で出すわけにはいかないし。」


 「ギルドは真希の空間収納知ってるんじゃなかったっけ。」


 「騒ぎになるでしょうよ。というか夏希だって持ってるでしょうに。」


 何もない空間から武器を取り出したのはこの空間収納によるものだ。

 構えた掌にいつの間にか武器が収まってるのは、浪漫らしい。



 空間収納から燃え易い木片を取り出し、夏希の火魔法で着火する。

 簡易物干し竿を組み立て、ずぶ濡れの防具を吊るし乾かす。


 「ねぇ夏希。」


 「ん?」


 何かを悟り夏希は後ろに下がるがすぐに亀の身体に阻まれてしまう。


 「さっき救出した分、ね。」


 じりっじりっと夏希に向かって近付いていく、手をわきわきとさせながら。


 やがて真希の左手の指が夏希の右胸の突起に伸び、到達するとそのまま円を描くようにこねくり始める。


 「ひゃっ、ちょ……こ、こんにゃところでぇ。」


 防具を乾かしているため、現在薄着である。

 はっきり表現するならば2人共上下下着姿である。

 ちなみに下着は空間収納から取り出した乾いたものを穿いている。


 真希の左手は胸を、右手は尻をそれぞれ愛撫していた。


 「ちょ……んっ……あぁっ」



 戦闘狂の夏希は真希に対してだけは受けなのであった。


  

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