【3話】キャンプといえば、夕飯はカレーと相場は決まっているもの。


 3.




 ここへ来るのも久しぶりだな。


「わざわざすいません。お忙しいのに」


 歩華ちゃんは本当に小学六年生なのだろうか。私なんか目上への言葉使いなどこの年でできたかなぁ。


「全然忙しくなんかないよ。妹の御守りも姉の務めだからね」


 陽見ちゃんと京華の妹の歩華ちゃんと私は今ショッピングモールに来ている。


 土曜で休日とはいえ今日はそんな二人の保護者役というわけだ。


 二階建ての広いモール内にはたくさんの専門店が立ち並ぶ。


 食品売場から映画館にこども英会話教室。眼科に歯医者に美容院と、ここに来れば大抵の用事は済ませられるのだ。


 田舎特有の大きなモール内だと同級生に会うこともしばしば。休日に会うと何だかちょっと恥ずかしくなる。


「陽見はここが大好きなのですー! 色んなお菓子が売ってるし、そして何よりも……ね! 歩華ちゃん!」


「うん、そうだね。私もここが好き」


 仲睦まじい二人。いつまでもこういう関係で居て欲しいとふと思う。


 あれからじっくり色々考えたけど、やっぱり私が京華を好きということは変わらなかった。


というか好きだという気持ちに更に確信を持ってしまった。


 京華への想いは一生心の中に留めておくしかない。それは判っている。


 この想いを口に出したら彼女との関係は壊れてしまう。それはすべての事柄と比べられないほど嫌なのだ。


 やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい。なんて言葉があるけど、それはすべての事柄にいえる言葉ではない。ただ、その人がそれで良かったと思うのならそれでいいだろう。


 京華に想いを伝えること。この場合これには当てはまらない。


 私は臆病な人間だ。だから同じ後悔なら、やらないで後悔をする道を選ぶ。


 京華を困らすような後悔などしたくないから。


 考えごとをしていると突然不意にシャツの裾をつままれる。こういうことをするのは、あの子しかいない。


「おねえちゃん。陽見はゲームがしたいのです」


「初っ端からゲームコーナー? うーん。歩華ちゃんもそれでいいかな?」


「はい。私はどこでも構いませんよ」


 まぁ、買い物した後だと荷物になっちゃうし、別にいいか。陽見ちゃんの為に来ているようなもんだし。


 私たちは二階にあるゲームコーナーに向かう。ゲームセンターのように種類が充実しているわけではないが、クレーンゲームや太鼓の音ゲーなどそれなりに楽しめる。


 私が陽見ちゃんより小さかった頃はボールプールが大好きだったっけ。ボールが少なく底が浅いところにダイブしちゃってケガをして、お母さんに心配されたこともあったな。


 自分自身、成長したなぁとしみじみ感慨深くなる。今では妹たちを連れてここまで買い物に来るなんて、今でもボールプールが目の前にあったら入りたいのに。


 先頭を意気揚々と歩く陽見ちゃんは歩華ちゃんとつないだ左手をブンブンと振ってはしゃいでいる。こんな風に私も彼女と手を繋げられるかな。


 もし私が京華に手を繋ごうと言ったら。たぶん少し考えるけど「うん」って言ってくれる。


 そういう風に思えちゃうから私はそんな彼女のことが好きなんだろうな。


「おー、あそこのソフトクリーム。たべたい」


 とっとこ走って陽見ちゃんの注意は目先の甘いものに逸れる。まだまだ子供だなぁ。


 走りだしても、歩華ちゃんと繋いだ手だけは頑なに離そうとしない。どんだけ好きなんだ。


「分かったから、勝手に走り出さないの。歩華ちゃんのこと引っ張っちゃダメ」


「陽見はね、イチゴ味がいいの」


「って、聞いてないし」


「ふふ、私は別に大丈夫ですよ月望さん。まったくあの頃から変わらず元気で可愛いですね陽見ちゃんは」


 陽見ちゃんのワガママでさえ優しそうな眼差しでクスクスと笑う歩華ちゃん。


 確かに、そういうところは変わってない。そろそろ姉としては変わって欲しいのだけども。


 あの日も、こうして陽見ちゃんのワガママに振り回されたんだっけ。だけど、陽見ちゃんのおかげで今の自分があるのかも知れない。


 普通の女子高生みたいに恋の悩みができるのも妹のおかげというか、妹のせいというか。


 ちょっと普通の女子高生の恋とは違っちゃったけど。




 ◆




 休日だというのに暇をもて遊び、部屋で惰眠を貪る私に母は言った。


「そんなに暇なら陽見のめんどうを見てやってよ」


 眠りを妨げられた私は眠い目を擦りなら気だるげに返事をした。


「えー、やだよー。お母さんがすればいいじゃん」


「お母さんは買い物に行くから。後はお願いね」


 それだけ言うと母は買い物に出かけてしまった。


 というわけでこの日、幼稚園の年少さんである陽見ちゃんの面倒を見ることに。


 とりあえず、お昼寝でもさせようかと陽見ちゃんの様子をうかがいに一階のリビングへと階段を降りる。


 ソファの上でお気に入りのぬいぐるみ達と何やら遊んでいるみたいだ。


「チッチくん。コマちゃんとなかよくしないとだめですよー」


 チッチと呼ばれた魚のぬいぐるみには白と黒の縞模様が入っていて、コマちゃんはちっちゃいアザラシのぬいぐるみ。


 ゴマフアザラシをモデルにしているらしいが、コマちゃんだという。濁点を付けないのは、名前の由来がこまいからだとか、全部命名は陽見ちゃん大先生。


 しょうがないから、お昼寝するまでぬいぐるみ遊びに付き合ってあげよう。


 チッチくんを右手で掴み、コマちゃんへと駆け寄るように動かす。


「コマちゃん一緒に遊ぼうよー」


「……………………」


 コマちゃんこと使い手である陽見ちゃんからの反応はない。ため息のように息を吐き出したかと思うと暗い声で一言。


「おねえちゃん。チッチくんはそんな子じゃないよ」


「……え?」


 私からチッチくんを取り上げると陽見ちゃんは声音を変えてチッチくんの思いを代弁する。


「ぼくのことなんか食べてもおいしくなんかないよ……」


 チッチくんの悲痛な叫びを聞いてしまった。なんなんだこの遊びは。


「二人は……というか二匹はそういう関係だったの?」


「だって、アザラシとイシダイですから。これが普通です」


 いや、まぁそうかもしれないけど。そういう遊び方はちょっと……。


 その後もぬいぐるみで遊んでいた陽見ちゃんも流石に飽きがきたようで。


「今日の二匹の関係はここまでにしときます」


「あ、うん……」


 カーペットの上で寝転がりファッション雑誌を読む私の横で陽見は退屈そうに横目で雑誌を覗いていた。


「おねえちゃん。ひまです」


「暇って言われてもなー。お昼寝でもすれば」


「お昼寝なんて時間のムダです。夜寝れなくなります」


「うーん…………」


 唸るだけしかできない。だって私も暇だしなあ。


 時計の針の進みが遅く感じる。時刻はまだ一時を回ったばかり、時間が一向に進まない。逆浦島現象とでもいうのだろうか。


 お母さんが帰ってくるのもまだ先だろうし、だからといってお母さんが帰って来ても別に退屈なことには変わりないんだけど。


「陽見、おもいつきました!」


 痺れを切らしたのか、陽見ちゃんは声を張り上げて唐突に起き上がる。


「な、なになに」


 眠気が襲ってきたと思った矢先。陽見ちゃんの声に反応してビクッと体が揺れてしまう。


「お母さんのところに行くです!」


 唐突な提案だったけど、行くと決めたら陽見ちゃんは行く子だ。私はお姉さんなんだから面倒も見てあげないといけないし、大事な妹の願いならできる範囲で叶えてあげよう。


 楽しい思い出を少しでも多く残して大人になってほしいから。




 陽見と私は最近できた大型ショッピングモールへと足を運ぶ。


 自転車の前カゴには陽見ちゃんの相棒チッチくんを乗せる。陽見ちゃんはどこへ行くにもチッチくんがいないとダメなのだ。ちなみにコマちゃんは家でお留守番。この格差はなんなのか。


 補助輪付き自転車から卒業したばかりの陽見ちゃんのペースに合わせながら自転車をこいで二〇分ほどでモールへと到着。


 途中で音を上げて、帰ろうと言い出すかと思ったが、思いのほか陽見ちゃんは元気そうだ。 もしかしてお母さんに会いたかったのかな。幼稚園児なんだしお母さんが恋しいのは別に不思議なことじゃない。それでも、わざわざ口に出してお母さんに会いたいと言わないあたり成長したのかも。恋しいのが恥ずかしいと思えちゃう当たりもう結構大人に近づいたのかも。


 子供二人でモールへ来てみるとなんだか広さに圧巻された。陽見ちゃんは目を輝かし、今にも走りだしそうだ。


「お母さんはたぶん食品売場かな。そっちの方行く?」


「陽見、おなかへった」


 確かにお腹は減った。一二時に昼食を食べたとはいえ、なんだか小腹が空いてきた。


 だからといって、私のお小遣いも大した額ではないし、あまり高い物は買えそうにない。


「わぁい、たこやきたこやき」


 歓喜の声がしたと思うと、陽見ちゃんは香ばしい匂いに惹かれてたこ焼き屋さんへと駈け出して行ってしまった。


 急いで後を追うと陽見ちゃんが早速注文しようと店員のお姉さんに話しかけている。


「たこやきくださいな! おかねはおねえちゃんがもってます!」


 陽見ちゃんの屈託のない笑顔に店員さんも笑顔で返すが、やはり困っているようす。


 困り顔をした店員さんが走り近づく私を見やる。そのおねえちゃんだと察したのだろう。


「あ、あのすいません。妹が突然走りだしちゃって……」


「いえいえ、大丈夫ですよ。元気な妹さんですね」


 店員さんはにこりと笑って陽見の頭を撫でてくれた。


「おねえちゃんたこやき買ってー」


 お姉さんの威厳を見せてあげようと財布の中を見ると一〇〇〇円しか入ってない。これでは姉の威厳どころの話ではない。


 そういえば、まだお母さんに今月のお小遣いまだ貰ってなかったんだ。


 とりあえず、この状況で買わないわけにもいかないので買わないと……。


 値段を見ると八個入り五五〇円と書いてある。やっぱりそこそこ値段は張るなぁ。


「すいません。たこ焼きください」




 アツアツのたこ焼きを頬張る陽見ちゃん。お口がぷっくり膨れていて見ていて微笑ましい。


 しっかり私がふーふーして冷ましてあげたから、口の中が火傷することもなかったみたいだ。


「お~~このたこ焼きすっごいおいしいですよ。おねえちゃん」


「よかったよかった」


 ほっと、胸を撫で下ろす。陽見ちゃんは満足してるみたい。またどっか勝手に逃げちゃわないでよね。財布に残ったお金、四五〇円。帰りにジュースでも買ってなくなっちゃうかな。


「チッチくんもたこ焼きたべる~?」


「いやいや、チッチくんはたこ焼き食べないでしょ」


「なにを言うのですかおねえちゃんは、タコはイシダイの好物なんですよ」


「いやいや、チッチくんはぬいぐるみだし食べないでしょ」


 そんなやりとりをしながらあっという間に完食。言葉の最初にいやいやとか素でつけちゃうあたりもしかして私って否定形女子?


「たこ焼きも食べたことだし、お母さん探そっか」


「うん!」


 食品売場へと足を向ける。だが、そこでご満悦だった陽見ちゃんの顔にも陰りが見えた。


 小一時間お母さんを探したがどこにも姿は見えなかったのだ。もしかして、入れ違いになったのかな……。


「お母さんいないね」


「うん……」


「他の場所で買い物してるかもしれないし、別の場所探そうか」


 それからもお母さんは見つからず、次第に陽見ちゃんは飽きてしまったようだ。


 お母さん探しをやめて、おもちゃやぬいぐるみを見始まっている。


「この子かわいい~」


 陽見ちゃんはカモのぬいぐるみを抱きかかえて頬ずりをしている。心なしかそのカモくんも嬉しそうだ。


「あんまり触り過ぎちゃダメだよ。それは陽見ちゃんの物じゃなくて、商品なんだから。他のお客さんが買えなくなっちゃうでしょ?」


「えー、ドンちゃんはそんなこと言ってないよー陽見といっしょにいたいって」


 こんな短時間でもう名前を付けたのか、ビビッくるものがあったみたい。


 ドンちゃんと陽見ちゃんはお互い見つめ合い。その場から動こうとしない。


 私は痺れを切らしその場を離れようと陽見ちゃんと距離を取り声をかける。


「置いてっちゃうよ」


 微動だにしない妹は、私の声を聞き流しその場に留まったままだ。あんまりワガママを言う子にはお仕置きが必要かな。


「もう、本当に置いてっちゃうから、陽見ちゃんなんてもう知らない」


 そう言い残してその場を後にした。とは言ってもちょっとトイレ言って戻ってくるだけなんだけどさ。少ししたら陽見ちゃんも反省するだろう。幼稚園児だからって甘やかすのは良くない。ちゃんと幼少のうちから躾けておかないと。


 五分ほどして、もといたぬいぐるみショップまで戻る。泣きわめいて周りのお客さんに迷惑かけてなければいいけど。


 カモのドンちゃんが置いてあった場所まで来たが、そこに陽見ちゃんの姿はなかった。


 あれ、あの子どこに行ったの? 店員さんに駆け寄り話を聞いてみたが、小さい女の子は泣きながら、どこかに歩いて行ってしまったらしい。


 私のミスだ。いくらなんでも一人にするべきではなかった。そう遠くには行っていないはず。近くを探して周ろう。


 手に汗が滲む。こういうとき悪い方向にばかり考えが行ってしまう。


 深呼吸をして、一旦心を落ち着かせる。私が帰ったのだと思ったなら駐輪場に向かうだろう。


 急いで駐輪場へと赴き探し走った。そこに人影はなく。私と陽見ちゃんの自転車も停められたままだった。


 どこに行ったんだろうあの子。焦燥感で胸が詰まる。喉が乾き走ることもままならない。声も出ない。


 迷子が来ていないか店員さんに詰め寄ったが来ていないとのこと。頼みの綱も切れ果て心臓がドクンと跳ねあがる。


 このままでは私がどうにかなってしまいそうだ。私は瞳に涙を滲ませながらも、もう一度ぬいぐるみショップのところまで戻ることにした。もしかしたら戻って来ているかもしれない。


 そう思い立ったのも束の間。走りだしゲームコーナーの横を通り過ぎようとしたときだった。


 小学生ぐらいの女の子が、困った顔でぽつんと佇んでいた。黒く美しいツインテールに綺麗なお洋服。どこかのお嬢様だろうか。


「どうしたの? あなたも迷子?」


「ううん、この子が……」


 ツインテの女の子は首を横に振り、視線の先を背後に向ける。すると、泣き腫らした目を擦りながら陽見ちゃんがいそいそと歩いてきた。


「え、陽見ちゃん!? もう心配したんだから……どこにも行かないでね」


「……ごめんなさい」


 もうどこにも行かないように抱き締める。そのまま抱っこに移行して完全に確保。


 おっと再開を喜ぶあまり女の子に礼を言うのを忘れていた。


「本当にありがとうね。陽見ちゃんの面倒見ててくれたんだ」


「うん。泣きながら当てもなく歩いてたみたいだから、受付の人に迷子として預けようとしたんだけど頑なに拒んでて……」


「陽見は迷子ではないのです! お姉ちゃんが迷子だったのです!」


 陽見ちゃんのプライドは高いみたい。さっきまで謝ってたと思ったらすぐこれだもん。


「それに歩華ちゃんがいたから陽見は全然さみしくなんかありません!」


 黒髪ツインテの女の子は歩華ちゃんって名前なんだ。いつの間にか結構仲良くなってるし。


 陽見が降りたそうにもぞもぞと動き出したので、降ろしてあげた。正直、私の腕もキツくなってきたところだ。


 降ろすとすぐに歩華ちゃんに抱きつき、頬ずりをしているやっぱり陽見ちゃんに気に入られたみたい。


「あれ、歩華。その子お友達?」


 私と同じくらいの背丈の子が近寄ってきた。彼女は流れるような黒い髪を纏い大人の雰囲気を醸し出している。


「うん、さっき出会ったの。陽見ちゃんて言うんだ」


 陽見ちゃんはペコリとおじぎをする。そんな陽見ちゃんに彼女はにこりと優しい笑顔で髪を撫でた。


「あたしは戸矢京華とや きょうか。歩華の姉です。よろしくね」


「わ、私は遠近月望とおちか つきのって言います! 妹がお世話になりました」


 これが彼女と初めての出会い。初めて交わした言葉。そのときばかりの間柄になると思っていたけど、まさかこんなことになるなんて。人生分からないものだ。


 それからというもの陽見ちゃんは歩華ちゃんを慕っている。お互い家に通い合うほどの仲良しさん。


 そしてあれから時は経ち中学三年生の春。私は再び京華に出逢う。


 まさか彼女が私と同じ中学校だったなんて、同じクラスになるまで全然気付かなかった。


 中学三年目も気心の知れた友達など私にはできないのだと悲観し決め付け、いつも孤独に本を読みふける日々を考えていた。だけど大丈夫、高校から頑張ればいいんだ、高校では友達ができる。そう自分に言い聞かせていた。


 そんな私を……こんな私なんかを京華は気にかけ、毎日のように話しかけてくれた。


「いつも妹がお世話になっちゃって悪いね」そう言って彼女は私と少しでも会話のきっかけをつくり、そばに居てくれた。


 彼女の優しさは全身に染み渡るほど暖かくて、冷たくなっていた私の心は次第に解けていって、もしかしたら、というかあの頃には誰も見過ごすことなく優しい京華に惹かれつつあったのかもしれない。


 友情と恋情の境界線はどこなんだろう。私が最初に抱いた感情は間違いなく恋情ではなく、友情だったはずなのに。それなのにいつから私は恋慕の情を抱くようになったのか。


 過程や途中式が判らなかったら数学ではバツだけど、感情の答えはすでに出ているのだからしょうがない。途中式を考えると余計に混乱することだってある。


 ただ判っているのは、この京華のことが好きなんだという気持ち。絶対に伝えてはならない気持ち。伝えたってこの想いが成就しないのは判っている。


 恋愛の教科書なんて存在しないんだから、公式だって存在しない。京華と恋人になれる方法なんてどこにも載ってない。


 もし本当に恋愛の教科書があったとしたら、そこに女の子同士での恋愛なんて載っているのかな。




 ◆




 陽見ちゃんと歩華ちゃんは一通りゲームを満喫し、今は休憩中。フードコートでアイスを食べている。


「やっぱりゲームした後のアイスはおいしいですね」


「うん! ゲームのあとのイチゴソフトは格別なのです」


 二人は無垢な笑顔でアイスを食べさせ合っている。何の恥じらいもなく。さも当たり前のように。


 陽見ちゃんのイチゴソフトを歩華ちゃんがペロっと舐める。その仕草がとてつもなく可愛らしい。流石は京華の妹。


「あ、歩華ちゃんのほっぺたにアイスがついた」


 そう言うと陽見ちゃんは歩華ちゃんの頬に付いたアイスをチロッと舌先で舐めとる。どこで学んだんだそんなこと。


「あはは、ほっぺたに付けちゃってたね。ありがとね陽見ちゃん」


「えへへ~~」


 純粋過ぎる二人を見てたら、ちょっとだけ羨ましくなった。人は時が経ち大人になるにつれてこういうことを素直にできなくなる。


「さぁてと買い物済ましたら帰ろうか、結構暗くなってきちゃったし」


「え~陽見はまだゲームし足りないのですー」


「なに言ってるの。今頃チッチくんたちが陽見ちゃんの帰りを待ってるよ~」


「はっ、そうでした。はやくかえってあそんであげないとスネちゃうのです」


 陽見ちゃんが迷子になったあの日。入れ違いになって、お母さんとは会えなかった。


 帰ってからも反省していた陽見ちゃんはお母さんにカモのドンちゃんが欲しいだなんて口にも出さず、表情にも出さず。ワガママを言うことはなくなった。


 そんな大人になった陽見ちゃんを見て、私はお母さんに頼んだ。貰ってなかったお小遣いで買いたいものがあるって。


 だって私はお姉さんなんだから面倒も見てあげないといけないし、大事な妹の願いならできる範囲で叶えてあげたい。楽しい思い出を少しでも多くつくってあげたいからさ。


 陽見ちゃんは帰宅すると、いつもの三匹と遊びだす。小学二年生にもなったわけだし、そろそろこういう遊びとは卒業になるのかな。


 それと同時に今度はワガママなところをしっかり治していただきたい。




 ◯




 部屋を暗くする。月明かりも届かぬようにカーテンも閉めた。


 真っ暗とはいえ、自分の部屋なのだから何がどこにあるかは大体把握できる。


 ベッドに腰を掛けると、ライターでアロマキャンドル、フィーリアに火を点けた。


 それをベッド脇のミニテーブルにそっと置き、私はベッドの中に潜り込む。


 部屋にレモンとラベンダーの心地よい香りが漂う。だけど充満した安らぐ香りは私の心を癒やすことはなく。息が詰まるような感覚と共に不満な熱を帯び、冷めないでいた。


 これを点けたら京華と一緒に寝た、あの日の感覚の中に入っていけるのではないだろうか。


 現実ではずっと一緒に居られるわけではない。だから、せめて夢の中だけでは京華。あなたは私だけのものでいて。


 睡魔ではなく京華がやって来ればいいのに。そんなことを考えたら本当に京華が隣に居るような気がした。


 あの日、忘れることもなく瞼にしっかり焼き付いてしまった。彼女の綺麗で健やかな寝顔。ベッドに広がる漆のように黒く、流れる黒い髪。耳に残る静かに聞こえる寝息。その何もかもが愛おしかった。


 触れてみたい。そう思い手を伸ばす。だが触れたが最後消えてしまった。


 シーツの手触りだけが感覚を伝う。寂しい思いが込み上げてぽつり言葉が出てしまう。


「京華……ずっと一緒に居たいよ京華…………」


 言葉に出しても京華は現れない。そんなのは判っていたはずなのに。


 目頭が熱くなり、目からこぼれ落ちる感触。私泣いてたんだ。


 頬を伝って落ちた涙は枕を濡らす。冷たい枕じゃ寝にくくなっちゃうな。


 暗く、物音一つしない空虚な部屋。この空間に一人孤独なんだと実感を沸かせる。


 あの部屋と匂いは一緒だけど、京華はいないんだ。


 部屋の中に残った匂いが、寂しさを際立たせた。


 悲しくて悲しくて泣きつかれて、いつの間にか意識は眠りへと落ちていき。


 その日私の夢に京華が現れた。夢の内容は憶えていない。ただ京華が出てきたということだけははっきりと憶えていた。




 いつものようにリビングで朝食を食べる。味がしない。お母さんが作った料理は美味しく感じていたはずなのに、心の問題なんだろうと思い。胃の中に押し込んだ。


「おねえちゃん……なんだか目が赤いですね。……どうしたんですか?」


 陽見ちゃんは心配そうに私の顔を覗きこんできた。妹に泣き腫らし、むくんだ目を見せるなんてお姉ちゃん失格だな。


「月望、何かあったの? 体調悪いなら休みな?」


「………………」


 ただ私は無言に徹し、時間が過ぎるのを待った。


 余計な詮索なんてしないでよ。私も何も言えないんだから。


 お母さんにまで心配なんかかけたくない。だけどこんなこと誰にも相談なんかできないよ。


家族にだって相談できないことぐらい私にはあるんだ。


 一度学校を休んだら行きづらくなるし、これ以上家族に迷惑をかけたくない。だから行かなくちゃいけない。そう判っているのに足取りは重く前に進めない。


 京華には逢いたい。けどこんな感情を持ってちゃ京華の側に居ちゃいけない気がした。


 本当は京華のすぐ側に居たい。離れたくない。だけど、その想いが募れば募るほど心は苦しくなる。


 家を出ようと身支度を整え、重い足を引き摺るようにして玄関へ向かう。するとお母さんがトコトコと洗濯物を畳みながら私の後を追うように玄関先まで歩いてきた。やっぱり親なんだな。娘を心配してくれてるんだ。


「月望が落ち込んでいる理由分かったわ」


「……え、え?」


 そ、そんなはずはない。だってそんな素振りを見せたこともないし、京華の話だってわざわざお母さんに言ってないのに。


「もうすぐ学校でキャンプがあるからでしょ。お風呂のこと心配してたのね。月望は可愛い下着なんか持ってないからねぇ。大丈夫よ可愛い下着買えるように今日お父さんとお小遣いの相談するから」


「そんなんで落ち込んでるんじゃないもん!」


 よく分かんないけど、元気づけるためにあんなこと言ってくれたのかな。まぁいいや、お小遣いアップだ。にっしっし。ってあれ?


「明影高校うちの学校ってキャンプなんかあるの?」


 え、キャンプ? そんなのあったっけかな。


「なに言ってるのよ。そのために何回か積立金も払ってたんじゃない」


 マジなのか。キャンプに行くってことは京華とは同じ班になるよね。一緒にごはん作って食べるよね。同じとこで一晩過ごすってことだよね。あう……完全に忘れてたから頭がついていけない。なんだかお腹の調子も悪くなってきた。


「胃、胃が痛い……」


「大丈夫、月望? 本当に学校休む?」




 自転車をこぎ学校へ向かう。足がさらに重くなったように感じる。


 胃のほうは、薬も飲んできたからなんとか大丈夫。


 京華に会うこともなく学校へ着く。ってことはもう京華は教室かな。私は遅い方だし……。


 教室に入ると久々に京華の素敵な顔が見れた。久々と言っても土日挟んだだけだけど。


「月望ちゃ~ん会いたかったよぉ。土曜日あたしの妹の面倒見てくれたんだってね、ありがと!」


「う、うん。面倒見たというか、歩華ちゃんが私の妹と遊んでくれてたんだけど……」


「けど歩華って小学六年生だしさ、月望ちゃんに迷惑とかかけなかった?」


「ぜ、全然大丈夫。それどころか助かっちゃったよ」


 緊張して喉に言葉が突っかかる。飲み物欲しい。思ったよりは話せてるけど。


「そかそか、ていうか月望ちゃんなんだか体調悪い? いつもと様子が違うけど」


「あはは、元気元気。ちょ、ちょっと胃の調子が悪くてさ……」


「からだ大事にしてね。可愛い月望ちゃんになにかあったらあたしまで具合悪くなっちゃうんだから」


 京華の優しさに触れて、またちょっと具合が悪くなったというか、良くなったというか。


 ちょっと自分でもよくわかんない。


 呼吸を整え、手汗もハンカチで拭き心を落ち着かせる。よし、キャンプのことについて話そう。京華は友達多いからもしかしたら、私と同じ班じゃなくなっちゃうかもしれないし。


「そ、そういえばさキャンプが……」


 ――キンコーンカンコーン


 肝心なところで予鈴が響く。なんてタイミングが悪いんだ……。


「あ、予鈴だ。月曜の一時間目だからロングホームルームかな」


「そ、そうだね、私席戻るね」


 聞けなかったけど、別にチャンスはまだまだあるはず。次の休み時間に聞こうっと。


 そう思ったが矢先、担任の先生がるんるんと口ずさみながら元気よく教室に入ってきた。手には表紙に絵が描かれた冊子。そして開口一番彼女は告げる。


「えー、来月六月に行く一泊二日の仲良しキャンプのことなんだけど」


 高校生にもなって仲良しキャンプというネーミングはどうなんだろう。


 それはさておき先生はキャンプについての説明を始めた。もしかしてこの時間で班決めとかしちゃう感じですか。


 明影高校では一年生は友情を深めるために六月にキャンプに行くことが恒例行事だという。


六月だと梅雨時で雨の心配がありそうだけど、なんでも玄人の間では実は一番オススメの時期らしい。なぜなら暑くもなく寒くもなく散策や釣りなんかもしやすいとか。運が良ければ蛍も見れたりするらしい。だから梅雨の中休みを狙って新緑が芽吹くこの季節に行くのだという。


 先生からの説明も終わり次はとうとう班決めらしい。ついにこの時間が来てしまった。


 教室内は先生の班決めという言葉に喧騒で満ち溢れた。誰もが皆親しい友人の元へと集まっている。


 班決めは男子と女子は別れて行う。クラスの女子は一六人。四人の班を四組つくるという。


 正直言って、こういう空間は嫌いだ。この楽しげな笑い声で溢れている教室内、それがすべて私へのプレッシャーに感じるからだ。


 誰にも話しかけることができないでいた。ただじっと俯いて机の木目を見つめていた。


 京華は美人で人当たり良く、彩葉ちゃんは快活で学級委員も務めている。ののかちゃんも違う班に入ってしまうかもしれない。


 自分の人生はなんだか危惧してばかりな気がする。損をする性格というのは私のことをいうのだろうか。


「ごめんね。今回はウチ班決めてあってさ」


 彩葉ちゃんの明るい声が耳に入ってくる。他の女子たちに囲まれ人気者だ。だが、それを断って違う班をつくるみたい。


「あたしはどうしようかな。特に決めてなかったんだけどさ」


 京華は悩んでいるみたい。話しているのは私がパフェを誘った日に、京華と一緒に買物に出かけていた子だ。京華とあの子はどれほど仲が良いのかな。二人で遊ぶ仲だしなあ……。


 私なんか誰からも相手にされないのかな。


「つっきー、もしかして眠たいの? 今日学校来るの遅かったもんね。寝不足?」


 下を向き机を向いていた私の視界の端に映る、女の子の繊細な手。


「別に眠くはないけど……」


 私はそう言い相手へと向き直る。声の主は彩葉ちゃんだ。


「そっか、ウチもう班決めちゃったんだけどいいかな」


 私にそれを言いに来たのかな。優しいんだか、優しくないんだか……。


「別にいいよ」


「それなら良かった。ウチとつっきーと京華にののかちゃん。お泊り会メンバーで決まりだね!」


「ふぇっ、もう決まってるって……」


「そのメンバーに決まってるってこと。ののかちゃんもウチの班だから、つっきーと京華もに決まってるじゃん!」


 コミュ力高いっていいなぁ。私、今猛烈に彩葉ちゃんに憧れている。


 それにしても京華はこの班に入ってくれるんだろうか。さっき他の娘こと喋ってたしなぁ……。


「京華さん……連れてきましたよー」


 ののかちゃんが京華を引っ張ってきた。指先で手を繋いでいる。


「おっ京華も一緒の班だよ~ん!」


「う、うん。あたしもみんなと一緒の班が良かったんだ。他の娘こには悪いけどさ」


「良かったですね彩葉さん。これで揃いましたね」


 やっぱりみんなこの四人が良かったんだ。私だけの想いじゃなかったんだ。


 安堵の吐息をもらし、自然と京華の方に視線が移ってしまう。それに気付いた京華は微笑みで私に返してきた。笑顔を見たら嬉しさで恥ずかしくて、また俯き机の木目を目でなぞる作業に戻ってしまう。


「月望ちゃんどうしたのー?」


 お腹をぷにっとつままれる。お肉をつまんだ指先だけでも誰だか判ったし、こういうことをするのは彼女しかしない。だからこそ反応できなかった。いつものようなリアクションが取れなかった。


「あれ、本当にどうしちゃったの? お腹つまんだの怒んないでー」


「うーー。別に怒ってない」


 私たち四人は笑いを混じえ、キャンプに思いを馳せた。


 来月なんてあっという間。きっと楽しい二日間になる。




 ◯




 と思っていたんだけど……。遠足の前の日とかでもそうだったんだけどなかなか寝付けなくて、目がさえちゃって。夜更かししちゃって。


 私は寝坊した。


 今回は興奮して寝れなかったから……ただそれだけの理由ではない。


 班決めをしてから今日まで京華に今まで通り接することができなくなっていた。


 どうしても意識しちゃってまともに話せなかった。目を見て話すことができなかった。その不安があったから寝坊なんてしたのかな。


 準備だけは一週間前からしてあるから大丈夫。昨日だって夜遅くまで忘れ物がないか確認したし……あはは。


 お母さんは町内の花壇の草刈りで、お父さんも今日は家に居る日じゃない。陽見ちゃんは朝早いからまだベッドですやすや寝ているだろう。


 やっぱり親から貰った自分の足で行くしかないか。


 荷物を積んだ大きなリュックを背負い階段を駆け下りる。寝ぼけて少しふらついたけど踏ん張ってまた駆け出す。靴も間違えずにいつものローファーではなく、運動靴を履いた。


 みんなに迷惑かけてるよね。急いで学校に行かないと。


 玄関を出て、颯爽と自転車に跨った。




 □




「あれ~つっきー来てないね。なにか聞いてない?」


 ウチは周りにいる京華とののかちゃんに問いかける。


「わ……わたしは聞いてないです」


 寝坊でもしちゃったのかな。まだバスの出発まで時間があるとはいえ、集合時刻はとうに過ぎた。体育館で待ってるから近くに来ていたとしても姿は見えないし。


「………………」


 京華はなにも喋らない。ウチの気のせいじゃないなら京華と月望ちゃんのようすが前と違う気がする。


 月望ちゃんが素っ気ないというか、京華の言葉に相槌だけを打つような。会話を必要最低限まで減らしてるように見て取れる。京華も京華でなにも話してくれないし、ここはいっちょウチがアシストしてあげますかねぇ。


「ねぇ、京華聞いてる? つっきー知らない?」


「あ、ごめん……何の話」


 なんか京華、上の空って感じだなぁ。よぉし良いこと思いついた。


「よし、じゃあ京華! あなたがつっきーに電話して」


「え、彩葉じゃなくて? あ、あたしがするの?」


 京華は目をぱちぱちさせながら、自分を指差した。そうですよ。あなたですよ。


「いやぁ~、音楽聴きながら寝たからケータイの充電なくてさ、キャンプ場で充電しようかなって」


 まぁ、充電フルなんだけどね。


「そっか、電話する……」


 ぼそっとそう言って京華はスマホを耳へとあてた。やっぱり心配してたんだよね。後押しして正解かな。


「…………もしもし? 月望ちゃんどこにいるの? うん……うん……分かった。大丈夫だよまだみんないるから……うん…………」


 よしよし、京華はぎこちないけどちゃんと話せてるみたいだね。


 まだ出発まで時間あるし、暇だぁ。ののかちゃんと話そ。


「ののかちゃんは休みの日とか何してるの? クラシックギター?」


 結構記憶力には自信がある。前にパフェに行ったときにギターが共通の趣味だって判ったんだよね。あれからも遊んだりはしたけど、ギターまだ聴いたことないんだよね。


「わたし……あの……」


「ん?」


 言い淀み顔を赤らげている。別にわざわざ恥ずかしいことは言わなくてもいいんだけど……。


「クラシックギターもやってるんですけど……わたしお昼寝が大好きなんです! 家ではコタツに入ってお昼寝してます!」


「ほぉー」


 なんという大胆に言う新事実。確かにののかちゃんはほんわかしていてお昼寝とか好きそうだ。それにしてもまだコタツ出してるんだ……もう六月なんだけど。


「わぁあ、恥ずかしいこと言っちゃった……」


 両手で赤面した顔を隠された。だけど耳も真っ赤だから恥ずかしいのはバレてるバレてる。


「じゃあさ、テントの設置とか終わったら一緒にお昼寝しようか」


「はい……」


 さっきまで恥ずかしがってたののかちゃんが今度はなんだか嬉しそうだ。目が輝かせて、女の子座りした足のつま先がそわそわと動いている。スカートの裾を持った手もなんだか小指が立っている。表情豊かというか仕草が一々可愛いなあ。


 ウチなんかと一緒にお昼寝するのがそんなに楽しみなのかな。




 □




 私は今家に居る。


 自転車に乗り勢い良く漕ぎだしたのはいいんだけど、パンクしてしまった。運が悪かったというかたぶん早く出発していればこんなことにはならなかったかも。


 自転車じゃなければ遠くて学校になんて着けない。だから京華からの電話が来た時はびっくりやら罪悪感やらでまたも普通に喋れなかった。


 だけど、京華の声が聞けて嬉しかった。遅刻してる私からなんてとてもじゃないけどかけられない。それにドジっ娘な彼女がいなければ今頃途方に暮れていた。


 玄関先で車のエンジン音がする。京華のお母さんが来たみたいだ。


 運転席の車窓が開き「月望ちゃんはやくー」と手招きされる。私は駆け足で乗り込んだ。


「すいません。迷惑かけてしまって……」


「いいのいいの。月望ちゃんが学校に遅刻するようになったら強制連行だーって京華がいつも言ってたから、それにあの子ったら忘れ物して……」


 彼女から電話が来たときにはすでにタイヤはへなへなのぺったんこで押して歩いてる状態。


 二人でどうしようか悩んでいると電話の向こうから「あっー!」と微かな叫び声が聞こえた。 どうやら忘れ物を思い出したらしい。そこで急遽、京華のお母さんが忘れ物と一緒に私を送ってくれることに……。




 学校へと着くとみんなは体育館を出てバスが停まる駐車場へと足を運んでいる。


 京華のお母さんから託された忘れ物を手に、みんなのところへ走りだす。


 担任の先生は私を見やると怒ることなく柔和な表情で注意してくれた。


「集団行動なんだから時間に余裕を持ってね。大人になったら五分前行動なんだから」


 日頃の行いが良いからこれで済んだのかな。とりあえず、わざわざみんなを待たすようなことはしなかったみたいだ。バスの出発時刻には間に合ったみたい。


 先生からの注意も終わり一年四組と合流。


 遅刻で浮いた存在の私に向けられる視線が痛い。それも仕方がない遅刻したのだから。


 そんな軽蔑や憐憫の眼差しの中で嬉々とした表情で私を待っていたのはいつものみんな。


「おっと、京華の忘れ物が二つ届きましたな~」


 おどけた表情で彩葉ちゃんが場を和ませた。それにしても二つってなんだろう。私は一つしか渡されてないけど? それより先に謝らなくちゃ。


「ごめんね、みんな遅れちゃって……」


「いいからいいから、月望ちゃんが来てくれなくちゃキャンプの楽しみ半減しちゃうしさ……てか、あたしが忘れたのってお財布だけだけど」


「今京華が言ってたじゃない。つっきーという大きな忘れ物のことだよ。京華のお母さんナイスだねー」


「ふふっ、なるほど。確かに月望ちゃんは忘れてはいけない大事な人だ」


 大事な人か……私は京華の一番の友だちになれてるのかな。


 駐車場には大きなバスが何台も並ぶ。これからこのバスで目的地に向かう間、京華と私は隣同士の席だ。ちょっと楽しみというか緊張しちゃうというか。


 京華が好きそうなお菓子を持ってきたんだけど喜んでくれるかな。これ移動中に全部食べきれないよね。帰りのバスも二人で食べれば大丈夫か。


 バスに乗り移動をして数十分もすると車窓から見える景色は緑で鮮やかに彩る。元々田舎だからこれから行く場所への自然にはさほど興味はないが、彼女と一緒ならどこに行っても最高の日々になるだろう。




 班ごとにテントを張り終えたら、各自夕飯までは自由行動となっている。


 スタンプラリーや火起こし体験なども出来たんだけど、テントを貼るのに予定より時間がかかってしまったし何より、テントを貼り終えたら彩葉ちゃんとののかちゃんはお昼寝を始めてしまった。先生に教わったとはいえ、ペグ打ちとか大変だったもんね。


 サイクリングもできるということで京華と二人で緑あふれる中を並んで走る。


 特別な会話などなく、するのは当たりさわりのない世間話。


 自転車に乗っている間は特に話すこともなくなり、虫の声や風をきる音などの環境音だけが耳に入る。


 今の私は無言を気まずい空気と感じてしまう。前ならそんなこともなかったのに。彼女は今気まずい空気だと感じているのかな。


 川のせせらぎが聞こえ私たちはなにもを言葉にすることもなく自然と自転車を停める。


「ちょっと行ってみようよ、涼しめそうだよ」


 彼女の言葉に私は頷き、音のする方へと歩き出す。そこにあったのは澄み切った清流が流れる小さな川。


「ねぇ、ちょっと入ってみない? 休憩にしよー」


「そうだね、足だけ入れてみよっか」


 私たちは靴と靴下を脱ぎ、小川の小石の感触を直に確かめた。足つぼマーサッジでも受けてるように痛みがびりびりと体を走り抜ける。靴ってものすごい発明なんじゃないかと再認識。


 足の指先をちょっとだけ水面に着けてみる。冷んやりしてて気持ちがいい。どことなく吹いている風も涼しくなったと感じる。


 とそこにスマホに着信が、画面を見ると彩葉ちゃんからだ。


「もしもーし、ようやく起きた?」


「ぬー、おはよう。今どこなのう?」


「サイクリングしてたら小川を見つけてさ、今京華と来てる」


「ウチとののかちゃんも行くー」


「おーけー、場所はね……」


 場所の説明をし、待つこと数十分。ビーチボールを引っ提げて彩葉ちゃんの登場だ。なんでそんなに用意がいいんだ……。


「貸し出ししてたから、ついねー」


 川の浅瀬で四人で円をつくりパス回ししたり、水のかけあいをして「ちべたっ」と嬌声を出しながら楽しく遊んだ。水着も着ていないし、六月ということもありまだ水は冷たいにも関わらずこんなにはしゃげるなんて、高校生ってまだまだ子供だな。


 本格的に夏が始まったら、この四人で海やプールにも行ってみたいな。




 キャンプといえば、夕飯はカレーと相場は決まっているもの。


 夕飯作りは四人では大変なため二班合同で行うらしい。


 同じ班には京華と一緒に買い物にも出かけていたあの背の高い女の子がいた。だから何だという話なんだけど。


 調理をする飯ごう場はキャンプ場によくある。そこまで広くなく屋根が付いた古めかしい雰囲気の建物。


 タイル貼りの開けた調理場には木製のガッシリとした備え付けのテーブルあり、机上には食材や食器が置かれている。シンクは前面アルミで鈍い光沢を持ち、たくさんの人がここで思い出を作ってきたんだなと感慨深くなるものがあった。


「じゃあ、京華とつっきー、それと青島さんは野菜カットしてもらえるかな。あと飯ごう場備え付けの食器もほこりかぶってるから洗わないとなー」


 彩葉ちゃんがテキパキと指示を出し、みんなはそれに意見を出すこともなく従った。流石、学級委員を務めているだけに信頼が厚い。あと、それとなく例の女の子が青島さんという名前で一緒の野菜担当にもなってしまった。


「よろしくね、遠近さん。自分、青島って言います」


「あ、はい。よろしくです青島さん」


 名字しか名乗らないあたり、そこまで私と親しくなろうなんて思ってないのかな。ただの考え過ぎか。


 それにしてもこの人身長が高い。京華よりも高いから一六八センチはあるかな? ボブカット風の黒い髪に赤ぶちのメガネで大人っぽい。けど顔は童顔というか、ややあどけない顔立ち。


「さてと、あたしはにんじん剥くねー」


 そう言うと京華は慣れた手つきでササッとピーラーで剥き始める。青島さんも無言で玉ねぎを手に取ると、上から流水を流しながら皮を剥いている。料理に自信がありそうだ。


 残った私はジャガイモを包丁で頑張って剥く。私だってしょっちゅう料理してるんだからこれぐらい朝飯前だよ!


 黙々と作業を続けること数分、最初に口を開いたのは青島さんだった。


「ふたりとも、好き嫌いとかないんですか?」


 話題を提供してきてくれたのはいいんだけど、別に好き嫌いなんて私にはないから話だって続かないだろうし……京華の反応をうかがおう。


「あたしは梅干しとかグレープフルーツかな、すっぱいのが苦手なんだよね。柑橘系の匂いは好きなんだけど」


 そういえば、昔中学のときに給食のデザートで出たグレープフルーツを京華は残してたっけ。すごく懐かしく感じるなあ。あれからまだ一年しか経ってないはずなのに。


「遠近さんは? 好き嫌いとかある?」


「わ、私は好き嫌いとか特にないかな…………」


 はい、会話が終わりました。すいません。


 ジーーーというキリギリスの鳴き声だけが辺りに響く。すると青島さんが考えごとを始めたのか手の動きが遅くなり一旦止まった。


「そうなんだ。だけど好きな食べものとかはあるでしょ?」


 と思ったらやっぱり続いてた。


 うーん。やっぱり杏仁豆腐かな。とってもやわらくて、あのとろとろとした口当たりに牛乳のコクのまろやかさ。ちゅるちゅるしたあの喉越しは誰しも好きになるはずだから、誰もが好きな一品として挙げてもおかしくないんだけどなあ。


「月望ちゃんの好きなもの知ってるよ。中学校の時の給食で杏仁豆腐が出た時さ、すっごい目キラキラ輝かせてたよね。それを見てあたしが『半分あげようか?』って言ったら、『この素晴らしさを共有したい』とか言っててあたしすっごい笑っちゃった」


 あれ、そんなことあったかな。確かに私が杏仁豆腐の為なら言いそうな感じはする。


「そうだっけ……」


「そうだよー『美味しいものは最後に食べるんだー』って言っておかずもご飯もすぐに食べちゃって、残った時間でゆっくり楽しんでたでしょ」


「あ、思い出した。そんなこともあったね……」


 昔話に花を咲かせながらも、作業に集中する。


 周りでは食器の準備も終わって、彩葉ちゃんが火の管理をしている。熱い火の番をしているから額に滲んだ汗をののかちゃんが拭ぬぐっていた。あの二人も距離が近くなったなあ。


 そんなことを考えていると、なにやら京華から視線を感じる。


「月望ちゃんの包丁さばき素敵だなぁ~……」


 感嘆の息を漏らし、私の手元を凝視している。は、恥ずかしいから。こんなの女子なら普通だし……。


 手元を見られているとどうにも落ち着かない。指先が震え、集中力が続かない。


 指の位置を間違え、手元が狂ったと察した瞬間。


「きゃっ」


 人差し指を切ってしまった。そこまで深くはないし大丈夫そうだ。それよりも変な声を上げちゃったほうが恥ずかしさで居た堪れない。


「月望ちゃん大丈夫!?」


「だ、大丈夫大丈夫、傷は浅……」


 私が容体を言い終わる前に彼女はあろうことか、ぱくっと人差し指を口に含んだ。


「え、あ」


 言葉が出ない。口の中が急速に渇き始める。思考がまとまらない。


 ただ彼女は無意識に行動に移しているだけなんだろうけど、私にとってその動作の一つ一つが鼓動の速さに繋がる。


 このままではどうにかなってしまいそう。


「わっ、いけない。遠近さん自分絆創膏もらってきますね」


 誰かの声がした。頭がぼーっとする。高熱にうなされたときだって、ここまで視界がぼやけることなんかなかった。


 本当に倒れそう。重力に逆らう体力も残ってない。これが好きな人の魔力なのかな。このままじゃ私壊れちゃうよ。京華と一緒に居たら身体が保たないよ。


 その後、手当をした。消毒をして絆創膏をして。怪我をした私には仕事がなくなった。


 少し指を怪我したくらいでみんな大袈裟だな。もしかしたら、それだけの理由じゃないのかな。私ひどく動揺してふらついてたもんね。


 あれから京華とは喋っていない。なんだか始めて彼女が嫌いになりそうだ。善意でやってくれているのに、私が変わったからいけないのに。


 人の気持ちも知らないで、惑わすのはやめてよ……。


 出来上がったカレーをみんなで食べたら、きっと美味しいんだろうなって思ってた。


 だけど、実際は別段そんなことはなくて。ただただカレーの味だな。と冷たい感想しか出なかった。




 広く開けた空間の中央に組まれた木々が赤々と炎を放っている。


 空気も乾燥しているし、風も弱くキャンプファイヤー日和だろう。


 マイム・マイムが流れているが、全員が踊っているわけではない。離れたところで談笑しているものや、持参した花火をしているもがいたりと割りと自由な時間だ。


 そんな中私は一人、木の下で体育座りをして星を見ていた。別に星が好きでも詳しいわけでもない。ただこの場所にいる理由が欲しかった。


 先生が『フォークダンスなんて踊る機会この先ないぞ』と半ば脅し文句のように生徒たちに自ら踊るよう促している。


 だからなんだというのだろう。この先踊ることがなくたって一つも困ることなんかないのに。


 彩葉ちゃんとののかちゃんは輪の中に混じり楽しそうに踊っていた。わざわざ誘いに来てくれたけどどうにも行く気がしない。


 私がこういう恥ずかしい行事でも率先して行くことがあるとすれば、それは京華のため。だけど今はそういう気分じゃない。


 京華は青島さんとその周りの友達と楽しく談笑していた。


 ここに居るのが私一人だけだったら気が楽なのにな。人いきれの中で一人きりだというのが無性に不安に駆られる。


 猛々しい炎が揺らめく、火を見るとなぜ心が落ち着くんだろう。


「怪我は大丈夫?」


 さっきまで青島さんと談笑していたはずの京華がすぐ側まできていた。落ち着きたくて火を凝視してたから気付かなかった。


「……うん、大丈夫」


「さっきはごめんね。別に驚かせようとしてしたんじゃないの……ただ月望ちゃんが心配で何かできないかなって思ったら体が勝手に動いて……」


「うん、分かってる。京華は心配してくれたんだよね」


 その優しさが今の私にとっては神経をすり減らすんだ。


「最近、月望ちゃん少し素っ気なくなったよね。あたしのこういう態度のせいかな……。ごめんね。嫌いにならないで……直すから、ね……」


 思いつめた表情で彼女は言葉を紡いだ。今にも泣きそうな顔をして。


 京華が悪いんじゃないんだよ。私が変わったの。私が変わったからいけないんだよ……。


「京華のこと嫌いになるわけなんかないよ」


 嫌われるのは私の方だ。京華は友達だと思ってくれているのに、私は彼女を愛してしまった。


 彼女と仲直り……というか一方的に私が距離を置いていただけなんだけど。


 お互いの気持ちを話して、どうにか前みたいに戻れそうだ。


 他愛のない話をしていたらいつの間にか終わりの時間に。キャンプファイヤーはただの炭となり、周りのみんなも解散しテントへと戻っていった。


 私たち同じ班の四人も合流してそれに習い設営したテントに戻る。


 澄んだ空気に虫の鳴き声、微かに聞こえる笑い声。インドア派の私もアウトドアの良さを少しは分かった気がする。


「ウチもう疲れた~~寝る……」


 ごろ~んと彩葉ちゃんが寝そべる。ののかちゃんも眠い目を擦り、口元を抑えながらもあくびをした。


「わたしももう寝ます~……」


 二人はだいぶ疲れていたらしい。あんなに踊ってれば無理もないか。


「まるでお泊り会の日みたいだね。四人でこうやって過ごして、同じところで寝て」


「そだね~。夏休みはどこにいこっか。あたしはやっぱり海かな?」


「海もいいけど、ちゃんと宿題やるんだよ?」


「分かってる分かってる~~」


 二人が寝ているので会話もそこそこに終わらせ、眠ろうと思い目を瞑る。だけど、ドキドキと鼓動が鳴り止まない。だがそれも隣で寝ているのが京華なのだから当たり前なのかと思えてしまった。


 弾む心臓の音が彼女に聞こえないか、そう思い隣を見やるが肩がゆっくり上下して呼吸が安定しているところを見ると、どうやら眠ったらしい。


 私も早く寝ないと明日がつらくなるな。いつも彼女のことを考えていると、つらくて苦しくなるからたまには忘れさせてね。


 ドキドキと緊張感を宿した心臓の音も落ち着いた。そのまままどろみの中へと落ちていった。




 不意に目が覚める。あの日と同じだ。夢も見ずに時は一瞬しか経っていないように感じる。


 とそこで、隣の空間に空気の流れが出来ていることに気付き、眠りに就いていた重い上半身を起こした。


 隣で寝ていたはずの京華の姿がなかった。テントから外を見ようとも暗く日がまだ登っていないことだけしか確認できない。


 私は京華を探しにスマホのライトで照らしながらテントの外へと出る。


 辺りを見回すと星空の下で草木の夜露よつゆも気にせず寝転ぶ京華の姿がそこにはあった。


 星を眺めているのだろう。京華の視点は上を向いたまま私の存在にも気付いていないようだ。


「眠れないの?」


 スマホのライトを消し、私も彼女の真似をするように寝転んだ。


 どうせこのままだと眠れないし、私も彼女の見る景色を、同じ世界を知りたい。


「ううん。眠りたくないの。月を眺めていたくて」


「月?」


 彼女は私が来たことに驚く様子もなく、月を眺めながら口を開く。


「うん。月ってさ他の小さい星々より大きく見えるけど、別に実際大きいわけじゃないんだ」


「あの微かに光る小さい星のが、たぶん大きいんだろうね」


 あの星と地球は何光年離れていて、この光は一体何年前のものなんだろう。


 目を逸らしたら、あの星がどこにあったか思い出せなさそうだ。


 月明かりに照らされた京華の瞳の奥で月が輝いていた。


「……見る場所によって違って見えて裏側は見えない。月は地球にもっとも近い星なのに……」


「けど、ただ一つだけ……人が降り立った場所なんだよね……」


「…………」


 私の言葉に京華は目を瞑り頷き返した。


「月の裏側見たい?」


「見たいけど……そこに何があるか分からないから……」


 彼女がその言葉を発してから会話は途切れ静寂に包まれた。


 真っ暗闇の中を二人きり月を眺めて。


「……そろそろ戻ろうか。このまま星を眺めてたら朝日を拝んじゃいそう」


「…………そうだね、戻ろっか」


 確かに足も痺れたし眠気もやってきた。そろそろ戻らないと二人が心配するかも。


 そう思い上半身を起こし立ち上がろうとした瞬間、京華は体のバランスを崩したのか倒れてしまった。それにつられて私も痺れた足を滑らした、


 私の運動神経の悪さを呪った。しっかり両手に地面を着いたから怪我はない。


 怖くて瞑ってしまっていた目を開ける。京華が大丈夫なのか様子を見ないと。


 どちらも声を出すことができなかった。今の状態にただ息をのむ。


 私が京華に覆い被さるような形になってしまった。顔が近い。ここまで近づいたことなんて今まであるはずもない。鼻先が当たる。


 顔が近いことに驚く京華。透き通った目を潤ませる。新雪のように溶けそうな白い肌が目を引いた。


 彼女の全てが美しく愛おしく、心が身体が惹かれる。金縛りにあったように身体は動かず。意識も身体も下へ下へと吸い込まれ、落ちていく。


 世界が止まる。聴覚が機能しない、耳には一切の音が届かない。


 唇に甘い吐息が掛かり、思考が定まらない。私の茶色い髪が京華に触れる。


 このままじゃいけないと思った。それなのに思考は逆に回転し動く。


 京華に体重を預けるようにして、ぴたりと身体は密着した。


 唇にふわりと触れる、知らない感触。心地良く唇が離れなれない。


 京華が震えながら身じろぎをした。それに気付きハッと体を起こすと、彼女の瞳には涙が溜まっていた。


 世界が動く。音が聞こえる。鋭い悲鳴が耳を劈つんざく、何と言ったか聞き取れない。


 起き上がった京華に突き飛ばされて、地面にぶつかる。痛みなど感じない。それよりも激しい痛みが心にあった。


 テントへと走り戻る京華を私はただ呆然と見送った。


 異質な寒気と共に思考が戻る。ことの重大さに気付いたときには遅かった。


 自分がしたことを理解したと同時にぼろぼろと涙がこぼれて嗚咽した。


 私は京華に想いを伝えないと心に誓ったはずなのに。


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