第3話 オークとの戦い2

 次のオークのグループは8匹ほどで、カイとグレコは、これも危なげなく倒しました。


 しかし、最後のグループは7匹の中にひときわ体の大きな、ボス・オークが混ざっていました。


「くっ、こいつは手強い。しかも、良い剣を持っているぞ。街道を渡っていた人間から奪ったのか?」


 グレコが苦戦している間に、カイは雷撃の杖で、他のオークたちをやっつけましたが、ボス・オークはまだ倒れません。相当な強さのようです。


「グレコ、もう少し頑張れ。牽制してすきを作る」


 そういうと、カイは、雷撃の杖を魔道具箱にしまい、代わりに別の杖を取り出しました。


「炎の杖 5連射」


 人の頭程度の大きさの火炎の球が、カイの杖から放たれて、ボス・オークに次々と命中します。自分の周囲を囲む炎に視界を塞がれ、また高熱の痛みに耐えかねて、ボス・オークが地面に膝をつきました。


「止めだ!」


 そこにすかさず、グレコが剣を振り下ろし、ボス・オークを倒すことができました。


「ふう~、なんとかなったな。というか、最初の雷撃の杖も5連射ぐらいしてれば、それで終わったんじゃないの?」


「無駄に威力増大や連射はしないのだ。原理が不明なのだから、魔道具の破損や予想外の暴走などが怖い。必要最小限がよいのだ」


「やれやれ、心配性なことで・・・ぐっ、いてぇ」


 見ると、グレコの右腕の前腕が切られ、血が滲んでいます。


「+5の守りの杖の障壁を裂かれたか・・・相当な業物だな、こいつの剣は。それに、毒も塗ってあったみたいだ。体がくらくらして力が入らない・・・」


「治療しよう」


 そう言うと、カイは魔導具箱から別の杖を取り出しました。


「浄化の杖 +1」


 この浄化の杖は、魔導具箱に入っている杖の中でも高級品で、毒、麻痺、石化など、あらゆる状態異常を一度に治療する、高度な治療魔法が封入されているものです。


 高度な魔法ほど、封入するのに上質な魔法石が必要になるために、価格は高くなるのです。魔法石には、その質によって魔力の吐出量が決まっています。

 封入する魔法を発動するのには、それに応じた吐出量を備えた魔法石を使う必要があります。そして、高度な魔法ほど大量の魔力を使うため、吐出量の大きい、上質な魔法石でなければならないのです。


 普通の冒険者であれば、毒の治療ぐらいは、毒消しの薬を飲んでしばらく待つのですが、カイの浄化の杖であれば、一瞬で治すことができるのでした。


「傷も塞ぐ。 癒しの杖 +2」


 今度は、裂傷が見る間にふさがり、血も止まりました。傷跡も残っていません。


「助かったぜ、カイ」


 グレコは傷のあった部分をさすりながら、立ち上がりました。


「この剣は戦利品としてもらっておくかな。俺が使えるかもしれない。ちょっと長すぎるかもしれないが。売っても金になるだろうし」


 カイがオークの遺体を転送して、これでオーク20匹の退治は完了です。最後のボス・オークは大物なので、報酬には少し色がつくかもしれません。


「しかし、魔道具をずらりとそろえて、魔法での攻撃から、治療回復までこなすってのは、実質、賢者とか大魔道士とかに近い働きぶりだよ。正直言うと、俺のいつものパーティ4人より、俺とカイの2人のほうが強いぐらいだもの」


「小物狙いだから、囮役と攻撃役の分担がうまくできているだけだろう。もっと敵の数が増えたり、敵が大物になれば、4人パーティの方が有利だろうさ」


「そうかねぇ・・・カイもいっそ冒険者家業をメインにしてみるってのはどうだい」


「私はあくまで魔道具屋だ。さあ、さっさと帰って報酬を受け取ろう。私は早く店に帰りたい」


「そしてまた、研究開発で赤字を作るんだな・・・」


 グレコの言葉には耳をかさないカイなのでした。

 

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