第39話 フラグを立ててしまった…。


 「キャアアアア!!」


 「……ウェッ!」


 初音が最初に選んだのは、この遊園地で1番人気のアトラクションのジェットコースター。


 そのジェットコースターは、急降下からの3回転が特徴で、苦手な人には耐え難い程の苦痛が襲う。


 このジェットコースターキツすぎない!?


 正直ジェットコースターは、苦手や得意と判断する程、乗ってないから自分自身が平気なのか分からない。


 …でも、確実に分かることがある。


 この、ジェットコースターは駄目だ。


 苦手とか得意とか、関係なく…本当に無理。


 ガタンガタン…キィ…。


 『到着〜到着〜』


 完全に止まったジェットコースターから、ふらふらになりがらも…何とか離れ近くにあったベンチに座り込んだ。


 初音はそんな俺の様子を呆れたように、見て馬鹿にしたように見下ろした。


 「情けないわね! まだ1回乗っただけじゃない!! 後2回は乗る予定だったのに!」


 「は…? 何処かで頭を打ったのか?」


 そんな馬鹿げた事を言ってくる、初音に正気を疑い…逆に、心配になってきた。


 「失礼ね! どこもぶつけてないわよ!! 安曇が弱すぎるのよ!」


 「いや、あれは常人には無理だろ…」


 「安曇は私が常人じゃないと言いたいのね?」


 「ちょっと待て、その手をどうするつもりだ? 話し合おう」


 今にもビンタを繰り出しそうな、初音を何とか落ち着かせようと…立ち上がるが、軽く目眩が襲い、ベンチに落ちた。


 「安曇…本当に大丈夫? 辛いようなら、最悪別の日にズラしてもいいけど…」


 横から心配そうに、覗いてくる初音に一瞬心が奪いかけたが…何とか持ち直す。


 「いや、大丈夫だ。少し休憩すれば、まだまだ遊べる」


 「本当に?」


 「ああ」


 …何故、そんなに見つめる? 恥ずかしいんだが?


 ここで、眼を離したら負けた気がして、羞恥心を抑え俺もジッ…と、初音を見つめていると、ふとした時に初音の顔が赤く染まった。


 「何見てるのよ!!」


 「危な!」


 コイツ…! 最初は純粋に心配していたんだろうが、恥ずかしくなって攻撃してきやがった!!


 避けた俺が気に食わないのか、少し不服そうにベンチに置いてあった、四角の小さなバックを手に取った。


 「ここで少し休んでなさい! 私はあそこで飲み物を買ってくるから、ついでに安曇の分も買ってくるけど何がいいの!?」


 少し離れた場所にある、◯ピオカや◯ターバックスを指差しながら…催促するように、小さく手を叩き出した。


 別に何でもいいが、それは1番困るからなぁ…オレンジでいいか。


 「じゃあ、オレンジジュースで、無かったらフルーツのジュースで」


 「分かったわ」


 そう言って、去っていく初音の背中を見守ると…ふと、脳裏によぎった。


 ナンパされたりしないよな? 初音は容姿だけはいいからな…。


 まぁ…大丈夫だろう。幸いここにいる殆どはカップルや家族連ればっかだし。




 はい…。そんな事を思っていた自分が馬鹿でした。



 なかなか帰ってこない初音の様子を見に行くと、いかにも女を何人も食い物にしてきたチャラ男2人が初音に話しかけていました。


 …何か、腹立つな。


 「ね? いいでしょ? 1人より俺達と遊んだ方が絶対楽しいって!」


 「そうそう! 一緒に遊ぼうぜ? な?」


 「あ…うぁ…」


 いや、飲み物を2人分持っている時点で、どう考えても1人じゃないだろ? 馬鹿なの?


 そう思っていると…口籠っていた初音に、イケると踏んだのか、肩に手を置こうするのが見えた。


 あ? 何しようとしてんの?


 「うお!?」


 「は? 誰お前?」


 「あ…」


 気を抜いていた事もあり、1人の男を掴み…後ろに転ばせ、初音とチャラ男の間に体を割り込み、初音を後ろに隠した。

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