第37話 ???視点②


 電車に乗り…私を引き止めもせずに、去って行くゴミを見て、つい舌打ちをしてしまう。


 何アイツ? 帰ろうとする私を引き止めて、遠回しに誘うのが常識でしょ!?


 勿論、私があんなブ男と一夜を共にするわけじゃないけど、誘われなかったら誘われなかったで腹が立つ!!


 本当にありえない!!


 …でも、収穫はあった。


 あのブ男は一見、女に興味がないように見えて…たまに、胸などに視線がいくことがあった。


 まぁ、胸を強調するような服装にしたし、視線がいくのは当たり前だけど…それでも、あんなブ男に見られるのは気色悪い。


 …とにかく。当たり前だけどブ男にも、性欲はあると分かった。


 それなら、話は早い。


 あのブ男の理性を破壊するように、誘惑すればいい。


 まぁ…最悪、あのブ男に抱かれてもいい。


 そして…その現場に、ワザと遅れてくるように仕組んだ初音がやってくれば完璧。


 利用価値が無くなった、ブ男はさっさと豚小屋に入ってもらう…と。


 私が襲われたと言えば、世間は美人な私を信じてくれる。


 相手が、いかにも童貞な男なら…まず、確実だろう。


 うん、完璧。


 今も、山の頂上で調子に乗っている、あの女を引きずり下ろし…ついでに、あの女の男も私の物にして、捨てる。


 想像するだけでたまらない。


 フフフ…早く当日にならないかな?


 『チリリリリリリリ』


 突然鳴り出した、携帯を手に取ると…事前に配信10分前にアラームをセットしていた事を思い出す。


 「もうそんな時間…」


 楽しい事を思い浮かべるのは、時間があっ…という間に過ぎる。


 本当に残念。


 PCを起動させ、自分の3Dモデルを画面に表示させ、マイクのチェックをする。


 コメント欄を見れば…今日もモテない男達がずらりと、書き込んでおり、私に反応してもらうと、スーパーチャットを送ってくる男に笑みが溢れる。


 フフフ…そう。もっと…もっと! スーパーチャットを私に送りなさい? どうせ、稼いだお金だって、くだらない事に使うんでしょ? それなら私に読み上げる方が、お得でしょ?


 スーパーチャットは、配信の最後に読み上げるんだから、損はしないはず。


 普段モテない、男達がお金を払うだけで…私に反応してもらえるんだから感謝してほしい。


 スーパーチャットの殆どは、事務所に持っていかれるんだから、ドンドン! 私に送りなさい? そうじゃないと、私には余り入ってこないんだから。


 スーパーチャットを送れば、反応するんだからお互いに、Win-Winの関係よね?


 そんな事を思っている内に、マイクのテストも終わり…配信予定3分前になった。


 念のために、もう1度…それぞれの配信道具のチェックを行い、問題ない事を確認した。


 「よし、問題なし」


 配信の時間になり、いつも通りオープニングを流し…画面に、白髪の優しそうなお姉さんが表示された。



 『皆〜! おはこんばんは〜!!』


:おはこん!

:おはこん!

:♪───O(≧∇≦)O────♪

:待ってた


 フフフ…私が声をかけるだけで、下僕 何百、何千の返事が返ってくる。


 これだから、配信はやめられない。

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