第34話 退院


 「はい、退院おめでとお」


 「退院おめでとう!!」


 「どうも」


 退院と言っても、1日いただけだからな…おめでとうと、言われる事でもない。


 てか、何で昨日に続いて、金髪ギャルまでいんだよ。


 暇なのか?


 「はい、これ退院祝い」


 そう言って、オッサンが渡してきたのは、花束…お前の考えている事が分からない。


 「いや、いらないわ。邪魔でしょうがない」


 「ん? それなら、家まで配送してもらうかい?」


 「どっちにしても邪魔だわ」


 しつこいオッサンを引き離し、帰ろうと病室から出ようとするとーー


 「あの! 一昨日のお礼をさせてもらえませんか?」


 前に立ち塞がった、金髪ギャルがそんな事を言い出した。


 「いや、お礼とかいらんから。それだとまるで、お礼目的で助けたみたいじゃん」


 「そ、そんな!! それだと私の気が済みません!! お礼をさせてもらえるまで、ここを動きませんから!!」


 めんどくせぇ…。


 金髪ギャルに視線を向けると、大きく腕を広げて、「何が何でも動かない!!」と強い意志がヒシヒシと感じる。


 「別にいいじゃない、君がそんなつもりじゃなかったとしても…彼女がしたい! って言うんだからさ、減るものじゃないし行ってきなよ」


 「いや、関係ないオッサンは黙ってろし」


 しかし、本当に動く気配がないな…。


 仕方ない。


 俺はため息を吐くと、携帯をポケットに入れ…口を開いた。


 「分かったよ、でも先にトイレに行ってきていいか?」


 「あっ…それなら、私も一緒に行くよ」


 「キメェ」


 ついてこようとする、オッサンを切り捨て…少し離れたトイレに行き、携帯を開いた。


 「そういえば、昨日は携帯に触れてなかったからな…初音から連絡がきてるかもしれない」


 そう思い、◯INEを開いてみると…予想した通りに2通のメッセージが届いていた。


 "おはよう、今時間ある?


 "見たら連絡して。


 一昨日に色々あったし、何て返そうか…。


 …とりあえず、返すか。



 "おはよう。一昨日に病院に運ばれて今日まで入院してて、返事を返せなかった。すまん


 後は…金髪ギャルのお礼の件も伝えておくか。


 何も知らないで、見たら浮気と思われるかもしれないからな。


 俺は浮気だけは、絶対にやらない。


 好きな相手が、自分じゃない異性と体をくっつけて歩いている所を想像するだけで、死にたくなる。


 俺は…浮気をされる側の人間でありたい。


 決して、Mと言うわけではないが…傷つくのは慣れているからだ。


 慣れている人間の方が受けるダメージも、小さく済むしな。



 "それで、一昨日に助けた人と飯を行くことになったから、一応報告しとく



 これでいいだろう。


 金髪ギャルは、何をするとか言ってなかったけどきっと、飯を奢ってくれるだろう。


 仮に飯じゃなかったら、それは断るとするか。


 携帯をしまい、用を足し…手を洗い、病室に戻ると赤いコートを着た金髪ギャルが眼に入った。


 そんな目立つ格好な奴の隣は歩きたくないんだが?


 「あっ! 思ったより長かったですね! じゃあ、早速行きましょう!!」


 こちらに駆け寄り、自然に腕を取ろうとした金髪ギャルの腕を避け…ベットの側に置いてあったバックを手に取った。


 「どうかしたか?」


 「い、いいえ…行きましょうか」


 お前絶対に何か企んでいるだろ、





 初音視点



 「えっ!? 一昨日に入院して、今日退院した!? 何でもっと早く教えてくれなかったのよ!! 知ってたらお見舞いに行ったのに!! それに、助けた人って女じゃないわよね…? とりあえず、どっちか聞かないと!」


 "色々聞きたいことはあるけど、まず助けた人って女? 男? どっち!?


 モヤモヤする中…安曇から返信があったのは、3時間過ぎてからだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る