第4話【番外】怜秋《れいしゅう》の憂鬱
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「はぁ…」
姉が盛大にため息をしている。どうやら送られてきた手紙の内容で
頭を抱えているようだ。
僕はゆっくりお茶を飲みながら姉が話してくれるのを待つ。
「はぁぁぁぁぁ……」
うわ~。思いっきり悩んでるな。
僕の姉、
そして姉は黙っていれば本当に美女だ。黙っていれば。
アメジスト色の大きな瞳。綺麗な黒髪。白く透き通るような肌。傾国の美女そのものだ。
今日はゆったりと髪を結いあげて簪をさし
白地に瞳と同じ色の刺繍が入った着物姿、傾国の美女そのものだ。
今日も、久しぶりに仕事の合間に時間を作って一緒にお茶をしているが
話すたびにコロコロと表情が変わり、見ているこっちが楽しくなる。
10歳も年が離れているけど、時々どっちが上かわからない時がある。
まぁ、そんなとこも可愛いなって思うんだけど。
「もう無理。ラカン今すぐ結婚して!!」
「
ブッ!!僕は思わずお茶を吹きそうになった。
なんだ?嫌な予感しかしない…・。
「じゃあ尼になるかっ!」
ポンっと閃いたとでもいうように姉は手を叩いた。
「姉さん何言ってるの?馬鹿なの?」
今度は僕が思わず突っ込んでしまった。また突拍子もないこと…。
僕の突っ込みに涙目になり落ち込んでいる?ちょっと嬉しそうにも見えるけど。
尼になるとか無理だろ!!!まだ若いし、姉さんは綺麗だからこれからなのに!!
姉の奇行は今に始まったことではないが、今回は特に様子がおかしい。
ちらりと姉の従者であるラカンに目線向け確認したが、首を横に振られた。
ラカンでも知らないことって何なんだ????
「よし!わかった!!死のう!!!」
そういうと姉はいきなり立ち上がり、窓辺に向かって走り出し窓を開けて
身を乗り出そうとした。
「わぁぁぁ!!姉さん何やってんの?!」
「
僕はギョッとしてラカンと一緒になって取り押さえる。
男二人に取り押さえられては無駄とわかったのか、おとなしくラカンに
抱えられて椅子に戻った。
「だって!だって!絶対無理!!!あり得ないし。結婚とかありえない!」
姉はぐわっと顔を上げて、涙目で訴えてきた。
うーん。とても22歳には見えない。少女のようだな…。
ってか?はっぁ??結婚?どういうことだ?手紙に何が書いてあったんだ??
「もう!!2週間後とかありえないでしょ!!それにぜったい結婚なんてしないから!!!」
2週間後?結婚?手紙の送り主はいったい誰だ??
僕のところに報告が来ていないということは、姉の個人的にやり取りしている相手だ。
てっきり友人からの手紙だとばかり思ってたけど…。
ようやく落ち着きを取り戻したのか、ゆっくりお茶を飲みだした姉。
「
「いやいや!言えないでしょ!っていうかどんな手紙貰ったのさ」
またお茶を吹き出しそうになる。
僕は姉から手渡された手紙に目を通した。内容は歯も浮きそうな内容だ。
「げっ……。」
思わず口をついて本音が出てしまった。
「なんか…。すごいね。熱烈だねこの
ひとまず、オブラートに包んで返す。もう頭の中お花畑じゃないか!!!
「それだけじゃないわよ!2週間後に来るって書いてあるの!!
いやいや。そこ?もっと色々突っ込むところあるだろ!
我が愛しの女神とか書いてたじゃん!うぇー。言ってて吐き気がする…。
「王族がよ?2周間って早すぎるでしょ??どんだけ暇なんだよ!!!」
「うん。問題はそこじゃないね」
僕は冷静に突っ込みを入れた。まぁ2週間後も問題だけど。
大事なのは相手が結婚を前提でこちらに来るってことだ。
しかも相手はただの男じゃない。
もう個人のやり取りのレベルじゃない。国同士の問題だよ!!!
あぁ。だめだ。僕まで頭が痛くなってきた。
「そもそも断れないでしょ?あの
「だーかーらー!!誰かと結婚するか、尼になるか、死ぬかしかないのよ!!」
「なんでそうなるんだよ。別に相手としては悪くない。むしろバツ3の姉さんをお嫁に貰ってくれるんだろ?最高じゃん」
僕はあくまで冷静を装って、答える。
「い・や・よ!!絶対お嫁になんて行きませんからね!!それから!バツ3なんて言わないで!!」
そう言うと姉は頬膨らませてぷいっとそっぽを向いてしまった。
怒るとこそこー?!いやいや。バツ3とか今どうでもいいよな??
むしろ、問題は二つ。
2週間後という準備が間に合わないかどうかの瀬戸際の期間で来ると言っていること。
相手が結婚を前提に姉を訪ねてくるということだ。わざわざ。しかも使者も立てずに。
どんだけ、横暴なんだよ!!礼儀ってもんがないのか??
まぁ今はとにかく、姉をなだめよう。
「はぁ…。こうなったら姉さんは頑固だからなー」
「
「なんでそんなややこしい人に好かれちゃうかな。姉さんは」
「そんなのわたしが聞きたいわよ!!」
「いつ知り合ったのさ?まさか今まで会ったことないとか無いでしょ?」
「うっ…」
ん…???なんだ。急に歯切れが悪くなったな。怪しい。絶対なにかあるな!!
「姉さん。なんか隠してるでしょ?」
僕はすかさず、姉を見つめて問い詰める。
「…っだったの」
「えっ?なに?聞こえないよ」
「1回目の嫁ぎ先で出会ったのよ!!!」
「えぇぇっ!!4年も前から知り合いだったの!!聞いてないよ。姉さん」
「ゔゔ。だって言ってないもの」
おいおい!4年前だって??なんだよそれ。聞いてないし。
ってか。4根前からずっと文通を続けていて、向こうは結婚を考えてるんだよね?
それじゃ、普通に姉さんが好きってことじゃないか!!!!
「嫁いですぐに、わたしが旦那様を亡くしたからってずっとお手紙くれてたの」
「ふーん…・そうなんだ…・」
一気に冷めた気がした。からだの体温がどんどん下がってくる。それと同時に怒りも覚える。
あの
しかも準備は整ったとも書いてある。
確実に結婚に持ち込めるから、こんな手紙を送ってきやがったんだ。完全に確信犯だ!!
ちくしょう!!
「
おそるおそる。小動物みたいな目で姉が問いかけてくる。くそっぅ!!可愛いかよ。
「怒ってない…」
ダメだ。抑えなきゃ。イライラを姉さんに当たるのはよくない。
頭の中では今後どうするかグルグル思考が回ってる。
「ごめんね?隠してたわけじゃないけど、内容も世間話だし…それになんか言い出しづらくて…」
「別に怒ってないよ」
ブチ。何かが切れた音がした。なんだよその顔。姉もまんざらじゃなかったのか…。
いきなり訪ねてこられることに驚いただけで、結婚には乗り気なんじゃないのか?
「姉さんは、好きなの?」
「えっ?何が?」
「だから
「好きじゃないよ!!そもそも4年前から会ってないし」
「でも
姉に怒っても仕方ない。分かってる。じりじりと胸が焦げるような感覚になる。
二人でどんなやり取りを手紙をしたのか。姉は
考え出すときりがない。これ以上はダメだ。
僕は話を切り上げることにした。
「まぁ…いいよ。それよりもう時間だ。仕事に戻らないと」
「えっ?」
びっくりしたようにこちらを見つめてくる姉。
まぁそりゃ、そうだろうな。でも…。ごめんもう無理。
色々話し合わなきゃいけないど、ちょっと一人になりたい。
「また明日にでも時間作って、どう対策するか一緒に考えよう。ねっ。わかった?
「わかった…」
僕は姉にひとまず、釘をさすような形を部屋を出た。
くそ!!
「はぁ…憂鬱だ」
僕はまだ知らなかった。これは始まりに過ぎないことを。
憂鬱な生活はこれかだということを。
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