第27話

夕方、ポールの店の地下倉庫でミンは縛られたままポールと複数人の男に暴行を受けて倒れうずくまっていた。


「ミン!いい加減にダンが作った装備の有りかを言った方が身のためだぞ!」


なぜ?こんなことになったのか、それはダンが倒れてから以降お店にはミンが作った装備品しか陳列しておらず、ダンが作った装備品は別の場所に片付けていたのだ。


なぜ?片付けていたのか?それはダンが倒れる前に「ワシに何かあればおまえが作った装備品で商売しろ、いつまでも俺を頼るな」と言われていた、そのためダンが作った装備品を別の場所に片づけ、自分が作った装備品を店頭に並べていたのだ。


ミンは顔を上げてポールを睨み付け言い放つ。


「お前達みたいな奴におやじの作った装備品を渡せるわけがないだろ!!」


頑なに突っぱねるが、ミンの全身は殴られたり蹴られたりしたことで事によりアザだらけになり、口からも血がにじみ出ている、そして自慢の白髪は三つ編みを切られ、ショートボブほどの長さになり、土で汚れ見るも無残な姿になっていた。


「親子ともども頑固者が!【ドカ!】」


顔面を蹴られて鼻血が出るがミンはポールを睨み付ける。


「チィ!!反抗的な態度がいつまでもつかな!【ボッコ!】」ミンは腹を蹴られ「ゴホゴホ」と咳き込んだ。


「今日も飯抜きだ!行くぞ!」と言い地下倉庫を出ていくポールと手下達。


誰も居なくなった倉庫に「親父…」と微かにすすり泣く声、その光景を一匹の角が生えたネズミが一部始終を見ていた。



その報告をするベチャリリス。


「もういいだろ!助けに行こう!!」


俺はミンの状態を聞いて今にも駆け出したかったが。


「フフ、慌てないの、もう少し待ってくれないかしら?」


リューデ・ゼはベチャリリスを入り口のドアの前に立たせ部屋から出ていけないようにしていた、いや無理をすれば出ていけるがここはギルド総本部、しかも目の前には総本部長がいる・・・この手は使いたくないが仕方がない。


「ビューヘルン、ちょっといいか?」


「なんじゃ主殿?」


耳打ちでお願いをすると。


「なんじゃと!!・・モグモグ!」


いきなり大声を上げたのでビューヘルンの口を押え、さらに耳打ちをすると。


「むむむ!…報酬は1週間我のお願いを聞くことでどうじゃ?」


「な!1週間だと!」


「我もできればしたくはないのじゃ、これでも対価としては破格じゃと思うのじゃ。」


「・・・少し、まけてくれ。」


「駄目じゃ!」


「・・・はぁ~仕方がない、やってくれ。」


「そうと決まれば・・・はぁ~気が進まぬの~」


「フフ、悪巧みはダメよ、あと少し待って、裏工作が完了すればポールのお店をつぶしても良いから。」


満面な笑顔で一番物騒な事を考えて裏工作をしていたリューデ・ゼを恐ろしいと初めて思った。

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