好きになってもいいですか。

一色 サラ

001

 仕事から帰ってきて、ソファでくつろいでいた岸直人きしなおと。スマホが鳴って、画面を確認して、出ると、

「ねぇ、合コンにいた桐谷美樹って子、覚えてる?」

間髪いれず、佐紀が不機嫌そうな声が聞こえてきた。

「いや、覚えてないけど」

「なんで覚えてないの!」なんでこうも怒っているのだろう。

「とにかく、島崎にお金を騙し取られたらしいから、どうにかして。」電話越しに佐紀は語尾を強まった。

「はぁ、俺にどうしろっていうだよ!」

「知らないわよ!!とにかく島崎にいう人に連絡して。」

「あぁ!!」

「そういうことだから」と言って電話が切れた。


なんなんだよ。ほんと、人の気持ちなんて知らないくせに自分勝手なこと言いやがって、さっきまで佐紀と話してスマホをソファに投げつける。

この前の合コンのことか。佐紀と俺は幹事を務めていたので、恋愛モードではなかったこともあって、気を使って、話を盛り上げたりしていて、あまり、あの合コン事態に積極性はなかった。

 それにしても島崎って人を騙すタイプだっけ?!たまたま連絡がついた大学の後輩だった島崎智樹を合コンに誘っただけだ。アイツが実際どんな人間性かなんてどうでもよかった。ただ人数合わせて、誘っただけだ。

 ソファに投げつけたスマホを取りに行き、島崎に電話するそ。そこから「現在、使われておりません」と機械音が流れてきた。これほど、頭が真っ白になってことはあるかってほど、額から大量の汗が流れてきた。佐紀にどう説明をしようとスマホと睨めっこ状態になる。そんな時にかぎって、スマホが鳴り始める。スマホに記載された名前は佐紀だった。出たくないが、後に何を言われるか分からないので、電話に出てしまうのが悪い癖だ。

「連絡してくれた?」

「ああ、島崎に連絡したけど、繋がらない。」

「何言っているの!!」

「電話番号が変わっているみたい。」

「もういい。直人の連絡先を美樹に教えるから、どうにかして」

こっち丸投げしてきた。島崎を連れて行ったことは悪いと思うが、なんで俺がそこまでしないといけない。

「なんで!?」

「美樹から、直人の教えてほしいって言われていたから」

「だからって、教えなくてもよくない。」

「後は、よろしく」

こっちの言い分も聞かずに、一方的に切られてしまう。


それから何日も美樹と言う人物から連絡を待ったが彼女からの連絡は来なかった。気になって、佐紀に連絡をすると、警察に被害届を出して、弁護士に頼んで法律で裁かれたようだ。お金は一部しか取り戻せなかったらしい。それで、彼女は俺には関係ないから連絡して来なかったらしい。

最後に「へぇ、美樹のこと、気にしてたんだ。」佐紀は不機嫌そうな声が出して、こちらの返答もなしに電話を切った。


悪いのかよ。気にしていたら。身体をソファに寄り抱える。お前は俺のことなんて、全く気にしてくないくせに、何も気にしていないことに苛立ちを覚える。


 また、スマホが鳴り、佐紀からだと思ったが、知らない電話番号だった。出ると「桐谷美樹です」と言われて、最初は誰か分からなかった。

「すみません。佐紀に頼んで、連絡先を教えてもらったものです」

「ああ、島崎の…」とまで言ってしまって、まずいと思ったが、「そうです。その節は、どうも」と言ってくれて助かった。

「いえいえ、すみません。なんも出来なくて」

「突然で、すみません。」

「いえいえ」

「ちょっと、どこかでお会いできたりしませんか?」

島崎のことで、何か聞きたいことでも、まだあったのだろうか。

「はい、別に構いませんよ」

何となく、了承してしまった。今週の金曜日に、仕事終わりに会うことになった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る