第13話 同郷の先輩

港に着き下船をした4人は

クレーンで車を降ろされているのを眺めていた。


ゆっくりとクレーンを見て感動していたのはフィオのようで、やっぱり物珍しさがあるようだった。


その間、キリュウが見惚れていたのは...

聳え立つ摩天楼の街だった。

どこかここが異世界転生でやってくるような世界なのかどうなのかわからないぐらい。ファンタジーがないような雰囲気を感じていた。

車がたくさん走っているのとともに路面電車や二階建てバスとなども街にあることに驚いた。


車が降ろされると、4人は乗り込んだ。

キリュウが運転手でミレーヌが助手席、後ろにフィオとアンが座る形になった。


エンジンをかけて港を出発しようとした瞬間、甲高いサイレンの音でキリュウはドッキリとしたが、

目の前にいる紺色の車体で赤いパトライトがついた車のドライバーがジェスチャーで端に寄せて止めるように指示をしていた。


周りを見渡しても、該当するのはキリュウ達が乗っている車のようでキリュウは自分を指差して自分か?と確認を取ると、

ドライバーは眉をひそめてどこかメンチを切るかのような表情をした。


「キリュウ君。端に寄せて、ここは帝国領だけど安全だから従って」


そう助手席に座っていたミレーヌが判断に困っていたキリュウをアシストするように声をかけた。

キリュウは頷いて答えて指示に従って、倉庫の横に車を横付けした。


一人のスーツを着てハットを被った少し小柄だが体格ががっしりとした男性がパトカーから降りてきた。


首には映画やドラマでよく見るような警察バッジをぶら下げていた。バッジにはニューアムステルという文字と共に階級を示す部分にはルーテナントと書かれていた。


彼はスーツの下に隠れていた腰を見せるように右手を腰に置いた。

思った通りそこには、ホルスターに挿してある拳銃がチラッと見えた。


「どうもこんにちは。身分証見せてくれるかい?」


黒い髪に黒い瞳で顔つきはどう見ても、日本人のように感じられた。

キリュウはそれを聞いてポケットに手を突っ込んだ。すると....


「バカ、ここではそれをすると撃たれるぞ。異世界人」


キリュウはその言葉を聞いて、彼がきっとあの人だろうと思った瞬間だった。

後部座席から、フィオの叫び声に近いような声量でこう聞こえてきた。


「アキラ!何カッコつけてるのよ!!」


あまりに声量のデカさかで驚いた隣に座るアンは目を見開いていた。


「なんだよ、いたのかよフィオ」


驚いたのはスーツの男性も同じ感じだった。

彼はフィオを見るなりそう言って、キリュウに笑みを見せた。


キリュウはとりあえず、身分証明書を彼に手渡すと彼はそれを受け取りマジマジと見てこう言った。


「帝国籍のキリュウ・タチバナ君か....」


男性はそういうと、

身分証明書をキリュウに返してこう言った。


「俺はアキラ。ジンボウ・アキラだ...よろしくな」


アキラはそう言って右手を差し出してきたのでキリュウはそれに応えて右手を差し出して握手をした。


それを終えた後、アキラはミレーヌの方を見てこう言った。


「ミレーヌさん。

入境手続きは俺の方でやっておきましたのでそのまま行って大丈夫ですよ」


「あら、そうなの。いつも助かるわ。ありがとう」


それを聞いた、アキラは右手を差し出してきて握手を求めてきた。


「同郷の仲間だよろしくな〜でっかい事件がなければ、シフト明けで飯でも行こう」


ニコッと笑みを見せたアキラに少し困惑はしたものの同郷の人ということでほっと安心してキリュウはてを差し伸ばして握手を交わした。


「じゃあ、俺は後で....

フィオ!子供達には来ること言えないままで仕事だったから、子供達は驚くと思うよ」


フィオはそれを聞いて、窓を開けて車かは身を乗り出して驚いた顔をしてこう言った。


「何よそれ!ちょっと、私がいない間に酷いことなってないわよね!」


「わーかってるって、ちゃんとしてるから大丈夫だって!」


キリュウはその怒鳴り合いつつも仲の良さげなアキラとフィオを見てホッと和みを感じられた。


アキラはちょっとフィオの勢いに押され気味になりながら後ろ去りしてこう言った。


「じゃあ!俺、戻るから!」


「あ、逃げるな!」


フィオがそう逃げるようにパトカーに戻っていたアキラに叫んでいた。

アキラはさっきとは違いどこか真剣な表情を変えて無線に耳を傾け、何かを通信しているようだった。


アキラはニコッと手を振って、そのまま車を急発進させて街にサイレンを鳴らしながら走り去って行った。


「さ、手続きは済んでるようだし。行きましょ....

道案内はまた私がするわ」


アキラの乗ったパトカーを眺めていると助手席に座るミレーヌがふと注意を引くように言葉を発したので、キリュウはギアを入れ替えて車を発進させた。


「先にフィオの家によりましょ。

本当だとキリュウ君はそこで住んでもらう予定だったから

用意した荷物がそっちに届いちゃってると思うのよ。それを取りに行きましょ」


「へー良いじゃん。用意してもらえるなんて〜私なんか、なかったわよ」


そうフィオがどこか不満そうだが、さっきアキラに会った影響からかどこか上機嫌にそう言ってきた。


それを聞いたミレーヌはため息をついてこう言った。


「キリュウ君は一文なしなのよ。あと、上からそうしなさいって命令もあったのよ〜

だから、勘弁してほしいわ」


フィオはそれを聞いて、ブーブーと言っと言っていた。


キリュウはそれをバックミラー越しに見てそれがどこか子供のように少しばかり拗ねているようには感じられたが、フィオ自身がどこかテイションが上がっていて抑えきれずと言った面もあるのかなと感じた。


「アキラはああ馬鹿そう見えて、クソエリートらしいのよ。前の世界で大学出てるだけあるわね。


毎日毎日、忙しそうだけど大家族養ってるからまーすごいのよ」


どこか誇らしげにフィオがそう言って、キリュウの肩をぽんぽんと叩いた。


それを見たミレーヌは微笑ましそうに笑みを見せた。


「また始まったわね。いらないわよ、ノロケ話は。

さ、行きましょう...2ブロック先の信号を左に曲がってちょうだい。そのあとはまた案内するわ」


「わかりました」


キリュウはそう言って、

サイドミラーで後方を確認してからウィンカーを出してギアを切り替えて発進させた。


「毎回なんですけど...なんで俺、車の運転が無意識で出来てるのか不思議何ですよね。


特に練習したことがないはずなのにすんなりとできるなんて」


キリュウはそうふと思ったことをミレーヌに向かってそういうと彼女はこう答えた。


「何かの才能が開花したのではないかしら?人間見て覚えたものを以外とできる時ってあるじゃない」


「うーん...」


納得がいく答えではなかったのでキリュウはそう声を出しながら、信号が変わったことに気がついてブレーキをかけた。


ミレーヌの言葉を聞いてそうとは感じられないような気がしたが...

そのことを考えるよりは周りの新鮮な景色に興味が行ってしまってしまった。


街には車が沢山走っていて、両側の歩道には多くの道ゆく人がいた。

新聞を読みながら歩く会社員らしき男性にドレスのよな服を着た貴婦人に何か大きなカバンを持って走り回るハンチング帽をかぶる少年に数多くの人が目に入った。


街は聳え立つビル群があって、

建物のデザイン自体はどこか古い感じこそはあったがどれもそこまでは時間が経っている感じでもなかった。


この街で新しい人生が始まるんだなと思うとどこか不安感こそあったが、どいこか期待が感情の中で急に躍り出てきたような感覚になっていった。


信号が変わったので、キリュウ車を走らせ始めた。ミレーヌの道案内で目的地である高層住宅街と言った感じの場所の前に到着した。


街にはビルとビルの間に洗濯物が干されていたりいかにも生活感があるさっきの港付近の街とは違って雑多とした場所に到着した。


とあるビル前に車を止めると、

オレンジ色の髪の毛の少年少女達が車に駆け寄ってきた。


「ママ!」


それを見たフィオはすごい嬉しそうな笑みを見せて車を飛び出していった。

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