第二章

第13話 依 頼

「はあ、はあ。はあ、はあ」激しい息使いが聞こえる。


「なぎさ殿は凄いでござるな!」服部は、両手を前にして構える。


「いやいや、服部さんこそ!俺とここまで競える奴は男でも少ねえよ」俺も左手を前にして、右手を腰の辺りに引いて構える。


 服部は忍者の末裔で、格闘技術も習得していそうで、軽い気持ちでスパーリングをしてみようという話になった。ただ、彼女の力量は俺の想像をはるかに上回るものであった。正直言うと彼女の事をなめていたというのが本音である。


「やー!」俺は服部の足元を的にして下段蹴り、それをジャンプでかわして宙を舞い体を捻る。それは常人の技ではなかった。着地と同時に、俺の腹めがけて突き。俺は半身に体を逸らしてその攻撃を流した。


「二人とも、そこまでだ!」日暮先輩の声。「これ以上やっては部室が壊れるわ」


「申し訳ありません」服部は膝を着いて陳謝する。なぜか、彼女は日暮先輩に対して極端に従順であった。


 コンコン!ドアをノックする音が聞こえる。


「はい!」返答をするが、ドアが開く気配がない。日暮先輩の顔を見ると、いかにもお前が行けというように顎を前に突き出した。


「へいへい・・・・・・・」部室の出入り口に移動して、扉を開ける。「な、なんだ」目の前の視線が塞がれている。まるで大きな壁がそこにあるようであった。その壁が俺の方に近づいてくる。「わあああ」俺は突き飛ばされるように後ろへはじき飛ばされる。


「あの・・・・・・・、すいません。ここに来れば何でも解決してくれるって聞いたのですけど・・・・・・・」篭ったような声がする。その声の主は、丸まると太った女子生徒であった。いや、それは太っているというレベルではなかった。


「な、なんだ!?」転がった拍子に頭を強打して摩る。


「君は、確か2年生の・・・・・・」日暮先輩はその生徒に見覚えがあるようであった。確かに彼女の事を一度見ると忘れないであろう。


「はい、2年25組の細川小百合です」


「私達のクラブに何か用かい?」日暮先輩はお決まりのように小さな箱からスティック型のお菓子を出して、唇に押し込んだ。


「私、みんなに馬鹿にされて・・・・・・、痩せたいんです」小百合は目尻に少し涙を溜めている。そりゃあ、それだけ太っていれば虐められもするであろう。食べる量も半端ない事は容易に想像がついた。


「ふーん、それは気の毒な話だな。協力させてもらおう。なぎさ君と服部・・・・・・、2人で協力してあげたまえ」先輩は俺と服部を順番に指さした。


「えっ!?なんで俺が」「承知しました」俺達の反応は全く真逆であった。



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