第58話 リークの町パート2



 「実は、ある冒険者が守護聖竜様を怒らせてしまって、この町ごと石化されたのです」


 「その冒険者は何をしたのですか?」



 「この先にある、アトラス山脈一帯は、ドワーフの国なっています。アトラス山脈は、様々な鉱石が採取できる鉱石の楽園です。しかし、特に貴重な鉱石のミスリル・アダマントは取れる量が少ないうえに、アトラス山脈の守護聖竜に献上しなければなりません。なので、この町は、鉱石の楽園に近い町なのですが、その恩恵を受けることはありません。貴重な鉱石を手に入れるには、ドワーフから高額な値段で買うしかないのです。それで、この広大なアトラス山脈を全てを監視する事は、ドワーフには、不可能なので、不正に侵入して、鉱石を採掘するものが多いのです」


 「どこにでも、悪い奴はいるのだな。それで、無断でレア鉱石を勝手に採掘して町ごと石化されたのか」


 「ちがいます」


 「ちがうのかよ。じゃあ、何をしたのだ」


 「鉱石泥棒は、採掘場から鉱石を盗み出しますが、その冒険者は守護聖竜様への貢物を直接、守護聖竜様の住処から盗んでしまったんです」


 「それは大胆な事をするな。そいつはどこの冒険者なのだ」


 「どこの冒険者かはわかりません。その冒険者は白い髪のツインテールの可愛らしい女の子でだったのですが、この町に訪れた理由はミスリル・アダマントを食べるためだと言っていました」


 「食べられるのか」


 「それは、わかりません。しかし、守護聖竜様は食べると聞いています。ミスリル・アダマントは、甘い成分を含んでいる鉱石と言われています。そのため、ドワーフは守護聖竜様にミスリル・アダマントを献上しているそうです」


 「そうなのか。そいつのせいで、この町は石化されたのだな」


 「はいそうです」


 


 私は、嫌な記憶を思い出したのである。そういえば、私が子供の頃に読んだ、『世界の絶品珍味大事典』で、ミスリルとアダマントは、天然の甘味成分を含んでいて、舐めると、果物以上の甘味を味わうことができる話しを、クラちゃんに話した記憶が・・・・



 「とばっちりだな」


 「そうだな。この町の人は何も悪くないみたいね」


 「そうですね」



 クラちゃん、なんてことしてくれたのーーーーー。これは、私が町のみんなの石化を解かなければいけないと思った。



 「あのーーすいません」


 「どうした。ルシス」


 「私なら、町のみなさんの石化を解くことができると思います」


 「本当ですか」


 

 ギルドの受付嬢が、期待の眼差しで私をみている。しかし、その眼差しが心に突き刺さる。



 「はい。大丈夫です。かなり強力な石化の魔法なので、少し時間はかかりますが問題はないです」


 「見ず知らずの私たちのために、本当にありがとうございます」



 いえ!こちらこそ、食いしん坊のクラちゃんのとばっちりを受けてごめんさい・・とは、絶対に言えない。



 「気にしないでくだい」



 私は、逃げるようにその場から離れて、町の上空に飛び上がった。そして、町全体が石化されているので、上空から効果無効の魔法を町全体に放った。町全体が、光のドームに包まれる。ドームから浴びせられる光の光線が、町全体に降り注ぐ。



 町は徐々に石化が解け、3時間後には町全体の石化が無効化された。


 町の人は、石化が解けたけど、ドラゴンに怯え家の中からは、誰も出ようとしないのである。



 「ありがとうございます。私は、このリークの町の冒険者ギルドマスターのフレディと申します。受付嬢から、お話しは聞きました。町の石化を解除しくれてありがとう」


 「そんなことより、この町に美味い飯屋はあるのか?」


 新しい町に来たなら、まず最初に行くのはもちろん美味しい飯屋である。それが、『暴食』として当然の責務である。・・・とトールさんが言っている。


 私は、できるだけ、石化の話しをしたくないので、トールさんを応援する。



 「この町1番のおすすめのお店はあるのですが、いつドラゴンが来るのかわからないので、お店は休業しているでしょう」


 「それは非常に困るぜ。どうしたら、お店を開店してくれるのだ」


 「それは、ドラゴンがもう襲ってこないという約束を取り付けることです。それなら、町のみんなも安心して、以前のような活気のある町に戻るはずです」


 「石化の原因を作った、ツインテールの冒険者はどこへ行ったのだ」


 「私も初めて見る冒険者だったので、どこへ行ったのかわかりません。詳しいことは、この先のドワーフの町に行けばわかるかもしれませんが、ドワーフもドラゴン同様に、かなり怒っていると聞いています」


 「トール、飯屋の話しは後にしましょう。私たちの本来の目的は、ミスリル鉱石を手に入れることです。今までの話しからすると、ミスリル鉱石は、ドワーフの国から買うしか方法はありません。勝手にミスリル鉱石を採掘すると捕まってしまいます。しかし、ドワーフの国へ行きたくても、ミスリル盗難事件で、ドワーフたちは、かなり怒っているということです」


 「飯屋もミスリルも、ドラゴンを説得すれば解決すのではないか?」


 「そうですが、簡単に説得が出来るとは思えないわ」


 「この町のギルマスとして依頼を出したい。この町の石化を解除するほどの冒険者なら、あのドラゴンを説得することができるのかもしれない。お願いです!この町を助けてくれ」


 「ロキどうするよ」


 「そうだね・・・ルシスちゃんはどう思う」



 やっぱりこうなると思った。町の石化を解除しても、またいつドラゴンが襲ってくるかもしれないので、町の住人は怖くて外に出ることはできない。クラちゃんが犯した罪の責任は、私が背負うしかないのである。



 「説得しに行きましょう」


 「ルシスちゃんが賛成なら、その依頼を受けることにするわ」


 「ドラゴン退治かぁ。腕がなるぜ!」


 「守護聖竜様なので、討伐依頼ではありません。あくまで、怒りを鎮めていただくことをお願いします」


 「わかったぜ」


 「ありがとうございます。まずは、国境にあるドワーフの町に行ってください。ドワーフを説得して、ドラゴンの住処を教えてもらうのがよいと思います」


 「わかりました。明日にでも、ドワーフの町へ向かいます」


 「ありがとうございます」




 私たちは、当初の予定通り、ドワーフの町へ行くことになった。目的は少し変わってしまったが・・

 


 






 

 

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