第7話 書庫での生活パート1

        


 私はそっと目を開けた。ガブリエル様の言った通り、翌朝には普通に生活できる体力は戻っているみたいだ。


 私は、魔王城の地下室にある魔王書庫に連れて行かれたみたいだ。そういえば、3歳の頃から暇があれば、この書庫にこもってはいろんな本を読んでいた。


 この書庫には、何万という本がありしかも魔法の効果で、随時新しい情報に更新されていくというとても便利な書庫である。


 この世界は、全て魔法によって全て管理されている。あらゆることに魔法が使われてる。魔法があるから、電気、ガス、水道などインフラ整備が全く必要ないのである。


 暗ければ、魔法で明るくしたらいいし、料理も火の魔法を使えば問題ない。冷蔵庫も氷の魔法で代用される。移動手段も身体強化の魔法を馬などにかければ長距離の移動も問題ない。


 私は書庫の本を読むことでこの世界の仕組みを学んだのである。書庫ではそれ以外にも、たくさんの知識を手に入れた。それでも、まだ知識量は足りないと感じている。

 

 たぶん私は、この書庫に幽閉されたのであろう。私は少しホッとした。何もない部屋に閉じ込められたらどうなっていたのだろうか・・・。この書庫なら、10歳になるまでの5年間は、たくさんの勉強もできるはず、もしかしたらお母様はそこまで考えてこの書庫に幽閉したのかもしれない。そう信じよう。でないと私の生きる希望が見出せないのである。



 「このまま死んでくれたら1番いいのに…」



 この言葉が、私の頭から離れることはない。私が死んだほうが、魔界の平和のためになるのかな?いやそれはダメだ。せっかくもう一度手に入れた命を粗末に扱うわけにはいかない。


 あの言葉は、お母様が私の魔力がなくなったのを見て混乱した際に発した言葉に違いない。そうであって欲しい。


 私は今にも溢れそうな涙をこらえながら、この書庫で、お母様にまた愛されるように努力するように誓うのであった。

 

 よし、とりあえず何をしようかな?そういえば昨日から何も食べていない。ふと書庫の扉を見ると、食事が用意されていた。魔界の食事は、ほとんどが魔獣の肉と魔界で取れる野菜などでできている。


 今日の朝ご飯は、パンに魔獣の肉をはさんだサンドイッチみたいなものだ。魔界の世界にもパンはある。


 魔王書庫の本には料理の本もある。パンは人界に遊びに行った魔族がパンの作り方を学んだと記載されていたのを覚えている。

 

 私はサンドイッチを食べながら、書庫にある本に手を伸ばし最新の魔界情報を確認していた。そう何か私の事が書かれていないか、確かめる為である。


 私が手にした本は、日本で言う新聞みたいなものである。日々の出来事が、随時に更新されている。

そして、私は昨日の出来事が書いてるページをめくった。



 【王女様難病の為、魔王城地下施設にて療養に入る!】



 王女様は、悪魔との契約後に謎の難病に見舞われ、急遽、魔王城地下施設にて療養生活入ることになりました。今のところ、王妃様、王子様達からのメッセージはありませんが、そのうち何かしらのメッセージは出されるのであろうと書かれていた。


 私は、病気で療養中ってことになっているみたい。たしかにそうした方が、魔界の人々にはまだ納得がいくのであろう。

  

 私が書庫に閉じ込められられて、1週間が経過した。食事は毎日3食きちんと用意されている。毒が入っている感じもない。


 私は、お母様のあの言葉が頭から離れることはなかった。お母様が、私を殺すなんて思いたくもない。でも完全に信じることもできないのも確かである。


 あれから1週間経つが、お母様はまだ私に会いに来てはくれていない。やはり私は見放されてしまったのであろう。



 「トントン、トントン」



 扉を叩く音がした。扉を叩かれるのは、食事の用意がされて時のだけなのに。今は食事の時間ではない。もしかしたら、お母様が私に会いに来てくれたのかもしれない。これでなんとか、本当のことを伝えることできる。



 「お姉ちゃんいるの?リプロだよ」



 お母様ではなかった。でもリプロが会いに来てくれるなんてとても嬉しかった。もう誰も会いに来てくれないと思っていたからである。



 「リプロなの?ここに来ても大丈夫なの?」


 「お母様からは、ここに来るのは禁じられているけど、どうしてもお姉ちゃんと話しがしたくて、来てしまったよ」


 「来てくれてありがとう。リプロの声が聞けて嬉しいわ」


 「僕もお姉ちゃんの声が聞けて嬉しい。僕は、お姉ちゃんが魔力を失ってもお姉ちゃんが大好きなのは変わらないよ。お姉ちゃんが魔力を失ったのなら僕がお姉ちゃんを守ってあげるよ。その為に毎日悪魔様の能力を使いこなせるように、カァラァと一緒に訓練をしているよ。だからお姉ちゃんは、この部屋でゆっくりと休んでいてくれたらいいよ」


 「ありがとうリプロ。私もこの部屋で力を取り戻せるように努力しているのよ」



 私は5歳といっても、精神年齢的にはリプロよりかなり歳上である。リプロには本当のことを言っても理解するのは難しいと思って内緒にすることにした。



 「やっぱりお母様は、私に会いに来てくれないのかな?」


 「うん、お母様からはこの部屋には、誰も入らないように言われてるよ。カァラァ兄ちゃんも、すごくお姉ちゃんに会いたがっているよ。でもなかなかこの部屋に行くのは難しくて・・・」


 「リプロ様、なんでこんなところにいらっしゃるのですか?あれほど王妃様より、この部屋に立ち寄らないように、言われているのではありませんか」


 「だってお姉ちゃんに、どうしても会いたかったんだもん」


 「お気持ちはわかりますが、王妃様の言いつけは絶対であります。このことは王妃様には内緒しておいてあげますから、お部屋にお戻りください」



 そう言われると、リプロは残念そうに、部屋に帰っていった。


 やはりお母様の言いつけで、この書庫へは、立ち入り禁止になってるみたいだ。本があるから退屈はしないが、でも話し相手がいないのはかなり寂しいものである。


 今日は、リプロと久しぶりにお話しができて本当によかった。その安堵感からか、急に身体が重たくなり、わたしはその場に倒れ込んでしまった。


 そして、書庫に閉じ込めらて1か月が経過した時、私の書庫生活に大きな変化がおきることが発生したのである。


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